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国内の自殺者数が11年ぶり増加の可能性。コロナ第3波でさらに増える懸念も

LIMO / 2020年11月28日 8時0分

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国内の自殺者数が11年ぶり増加の可能性。コロナ第3波でさらに増える懸念も

コロナ禍の影響により、今年2020年は様々な経済指標が悪化しています。業種により差異はあるものの、未曾有の業績悪化に陥る企業は少なくなく、アベノミクス始動以降に過去最高レベルまで改善した雇用指標(有効求人倍率など)も一気に悪化してしまいました。

今年の自殺者は11年ぶりの増加に転じる可能性

そして、あまり大々的に報道されていませんが、11年ぶりに悪化する可能性が高まっているのが自殺者数です。自殺者数は経済指標とは異なりますが、失業率など雇用関連と連動するものとして目安の1つにされています。さらに、今年は自殺者数の内容にも、過去にない大きな変化が見られ始めています。

まずは、日本における自殺者数の推移を振り返ってみましょう。

なお、自殺者数の統計に関しては、警察庁発表と厚生労働省発表の2つがあります。外国人を含むか否か、死亡診断書の扱い等で数字に差異が生じているようですが、極端な差異ではないと考えられます。当記事は、外国人を含まない厚労省のデータに基づきます。

自殺者数は10年連続で減少、それでも年間2万人超

日本の自殺者数は、1997年まで概ね年間20,000~25,000人で推移していました。ところが、“平成の金融危機”と称される金融機関の経営破綻が相次いだ1998年に一気に32,863人へ跳ね上がった後、2011年まで30,000~35,000人で推移しました。ちなみに、過去最多は2003年の34,427人です。

その後、国や地方自治体が自殺防止に注力したことや、アベノミクス始動後の景気回復等により、2010年から昨年2019年まで10年連続で減少しています。2019年実績は20,169人でしたが、これは1978年以降では過去最少レベルです。

なお、自殺者に占める男女比ですが、その年で若干バラツキはありますが、ザックリ言うと、男性7割、女性3割となっています。

自殺の理由は「健康問題」がトップ、10代を中心とした若年層の増加が顕著

自殺の理由ですが、厚労省の調査結果によれば、2019年実績ベースでは「健康問題」が約49%で断トツの1位、「経済・生活問題」が約17%、「家庭問題」が約15%、「勤務問題」が約10%、「男女問題」が約4%、「学校問題」が約2%となっています。

「経済・生活問題」が低下傾向にある一方、「学校問題」と「家庭問題」の比率は上昇傾向にあるのが特徴です。

なお、自殺者数が減少を続けたこの10年間における大きな特徴として、相対的に若年層が増加したこと、とりわけ、10代(10~19歳)が絶対数でも増加し続けていることが挙げられます。決して年齢で判断するつもりはありませんが、未来ある若年層が自ら命を絶つというのは非常に残念なことです。

直近10年間で自殺者数は年間約1万3千人も減少してきたが…

過去最少レベルとはいえ、いまだに年間約2万人もの自殺者が出ていることは厳粛に受け止める必要がありましょう。これは先進国でもかなり高い水準にあります。

しかし、自殺防止への様々な取り組みや、景況感改善等により、直近10年間で▲13,000人弱減少したことが良いニュースであることは間違いありません(2009年:32,845人→2019年:20,169人へ)。特に、有効求人倍率の大幅好転が示すように雇用環境が改善した2013年以降の減少ペースは目を見張るものがあります。

本来なら、今年2020年は、この減少ペースが続いて、初の20,000人割れが達成できるはずだったと考えられます。

7月から4カ月連続の増加、ついに1~10月累計でも増加に転じる

しかしながら、今年は11年ぶりの増加に転じる可能性が高まってきたと言わざるを得ません。毎月の自殺者数で見ると、7月に対前年同月比で増加に転じて以降、10月まで4カ月連続の増加となり、ついに1~10月累計ベースでも増加に転じてしまいました。

また、今回は増加率の大きさが特徴です。7月はまだ+3%増でしたが、8月が+18%増、9月が+10%増、そして10月は+40%増の大幅増加でした(対前年同月比、小数点以下四捨五入。以下同)。単月だけならば、特殊要因(前年が異常値など)で片付けることもできますが、これは明らかに増加トレンドに入ったと考えるのが妥当です。

そして、今回の自殺者増加の最大要因が、一連のコロナ禍による影響(直接・間接含む)であることは容易に推察ができましょう。

女性が大幅増加、10月は前年比8割超の増加に

そして、今回の自殺者増加における最大の特徴は、女性の自殺者増加です。

女性の増加率だけを見ると、既に6月から増加(+3%増)に転じており、7月が+17%増、8月が+42%増、9月が+28%増、10月は何と+83%増でした。男性に比べて絶対数が少ないため、増減率が大きくなりやすい点を考慮する必要はありますが、それを割り引いても、女性の自殺者の増加が顕著です。

事実、全体の3割程度だった女性の割合は、10月は約4割に達しており、変化率がブレやすいという理由では説明できなくなりました。

なぜ女性の自殺者が急増したのでしょうか?

コロナ禍の影響が一因になっていることは明白

詳細な内容(年代別など)は厚労省による分析結果を待たなければなりませんが、増加に転じた時期を勘案しても、コロナ禍の影響が最大要因である可能性は非常に高いと考えられます。

ここから先は筆者の推測になりますが、コロナ禍で職を失い収入の見込みが無くなった非正規社員の女性(男性も)が、給付金を使い果たして前途に絶望した可能性もあります。特に、扶養家族を抱えた世帯主の場合、その心のうちは察するに余りあります。

仮に、筆者の推測が正しいとすれば、いわゆるコロナ第3波襲来の影響が本格化した今後は、さらに自殺者数が増加する懸念が拭えません。

例年は少ない年末年始は要注意、命のセーフティーネット強化を

もちろん、自殺者増加の原因はコロナ禍だけではないでしょう。今年目立ったのは、コロナ禍による経済的困窮とは直接関係のなさそうな著名人や芸能人の自殺が相次いだことです。今でも自殺した理由が不明なままの方も多いようですが、自ら命を絶つには何らかの理由はあったはずです。

ただ、そうした潜在的な自殺要因が何らかの形で炙り出されたとすれば、コロナ禍による不安感や閉塞感がその一因だった可能性もあるでしょう。

統計的に見れば、年末年始は自殺者が少ない傾向にありますが(3月と5月に多い)、今年は例年とは違います。年末年始に自殺者増加のニュースが出ないよう祈るとともに、政府や自治体にはセーフティーネットの一層の強化を望みます。

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