幸せな「さいご」にどう寄り添うか~終末期を支える介護のすがた~
LIMO / 2020年11月28日 15時5分
幸せな「さいご」にどう寄り添うか~終末期を支える介護のすがた~
みなさんは、「終末期の介護」と聞くとどんなイメージを持ちますか?
「死が近づいている人に関わるのは怖い…」こんな思いを抱いてしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、実際に医療や介護の現場、在宅介護をおこなう家族は、「どうしたら素敵な最期を迎えてもらえるのか」「どう対応したら苦痛が和らぐか」こんな風に相手のことを大切に思いながら、最期の時をともに過ごしているのです。
そこで本記事では、誰にでも関わる可能性がある「終末期の介護」に着目し、症状の特徴や介護方法、大切にしたいことなどを紹介していきます。
いま、「終末期の介護」に悩んでいる人、マイナスなイメージを持っている人はぜひ目を通してみてくださいね。
「終末期」とは
終末期(ターミナル期)とは、「医療の手段を用いても治療効果が期待できず、積極的治療がむしろ不適切と考えられる状態で、生命の予後が6か月以内と考えられる段階」のことを指します。
予後が限定されたとはいえ、終末期は「死」の準備をすることではありません。
今の状態(ステージ)の変化に合わせて、その人に残された日々をどのように過ごしてもらうのか、むしろ「生」を創造することなのです。
終末期ケア(ターミナルケア・看取りケア)とは
その人の思いに寄り添って、できるだけ心地よく生きられるように支える関わりを「終末期ケア(ターミナルケア・看取りケア)」と表現します。
残存能力、その人の望む生活、関心、価値観などを尊重しながら、やり残したことへの援助や苦痛を最小限にする工夫をしていきます。
終末期ケアは、マイナスなイメージを持たれがちですが、「生きる」を支えるケアといえるでしょう。
さいごを「どこで」過ごすか
病院や施設
病院には、24時間医師や看護師がいるため、急変したときなどすぐに対応してもらえる安心感があります。
施設の場合は、医師が常駐していないことが多いため、看護師が医療的ケアのリーダーとなります。
介護職は、利用者の一番近くで生活を支援する中心となり、本人を支えていきます。
自宅
家族の介護だけでなく、訪問看護などのサービスを組み合わせ、本人の状態に合わせたサポートをしていきます。在宅の場合、病院や施設では得られない安らぎをもたらすことができるのも、大きな特徴です。
家そのものの雰囲気やにおい・生活音などが、懐かしさや癒しとなり、あわせて家族の介護を受けられることが、つらい気持ちを緩和するでしょう。
「終末期」に起こる、さまざまな変化
身体的な変化
症状の進み方は、疾病や認知症の度合いによってさまざまです。
動かすことが少ない身体の各所は、機能が低下したり、維持していた能力を奪ったりします。発熱や疼痛、倦怠感、呼吸苦、浮腫などが伴い、さらなる全身状態の悪化や生活の質の低下を招く場合も多いです。
認知症の場合、苦痛に気持ちが集中するためか、BPSD(※)が目立たなくなることがあります。
理解力や意思表示力は低下しているので、関わる介護者は、理解できる言葉やジェスチャーを交えるなどの工夫が必要です。
(※)BPSD:認知症の人の、心理や行動に表れる症状のこと。(例:暴言、暴力や幻覚、徘徊)
心理的な変化
元気だった頃のように、五感から入る刺激に対して、自分らしく反応することが困難になります。
長い間寝たきりだった場合は、意識や意欲の低下、思考力が退行していくこともあります。また、死の予感を抱いていることも多いです。
認知症の場合、「何もわからないから怖くない、幸せだろう」と考える人もいるかもしれません。しかし実際、本人は「何かが起こっている」「今までと違う」など、本能的に変化に気づいているといわれています。
行動の変化
生活への参加が減り、不活発な日が増えます。
行動は、その人の意思がかたちとして表現されるものです。何十年も自分の好みに従って行動してきた「自分流」をおこなえないことは、「自分らしさ」を失うということなのです。
変化に寄り添う介護とは
身体的な変化に対して
介護の量が圧倒的に増え、2人介護や3人介護の必要性が生じます。本人の変化に並行したケアを行うことで、少しでも苦痛を和らげることが大切です(緩和ケア)。
食欲が低下し摂取量が減っているときは、本人の食べたいものや、嗜好に合う飲み物を優先し、食材や味付け、形態などを工夫します。
また、食べたいときに自由に食事ができるようにする柔軟さも必要です。
発熱時には、こまめなクーリングや体位の工夫、室温調整、冷たい飲み物などを早めに準備します。
会話が少なくなると唾液の分泌が減り、口腔の乾燥などのもとになるため、口腔ケアは食事に関係なくおこなわなくてはなりません。
心理的な変化に対して
その人と出会って、身近に暮らし互いが認め合い、受け入れ合って過ごした関係は、終末期にこそ強く活かされます。その人の性格や願い、思いを改めて再確認し、いままで分かち合えたことなどを今のケアに活かしていきましょう。
行動の変化に対して
その人が元気だった頃に習慣としていた髪型や服装、お気に入りだったこと、手元から離さず大事にしていた物、聴いていた音楽などを、生活のなかに再現し、五感を刺激します。
それまでの生活と切り離さない配慮が大切です。
介護する側にとって「たいせつな」こととは
身体的な変化に対して
身体に触れることが多くなる終末期は、その人にとって最も少ない時間、方法、量を考慮し、無理のない介護をします。
身体介護は一つ一つの場面を通して、身体と心に慰めや励ましを伝えるチャンスです。丁寧な言葉と笑顔、ゆっくりとした動作、優しいまなざしで接しましょう。
介護量が多くなると、介護者が中心となって世話に追われている錯覚に陥りがちですが、あくまで、「その人」が中心であることを忘れてはいけません。
心理的な変化に対して
短い時間でも部屋を訪ねて声をかける、ケアが終わった後もすぐに居室から去らず、2、3分でも会話をする、手や足のマッサージをする、丁寧に髪をとかすなど、気持ちを伝える機会を意図的に設けていきます。
「暮らしを共にする人」として、寄り添うことが、今を分かち合うことになるからです。
残りの時間は減っていきますが、嘆くのではなく、人が生きる真理(きまり)として受け止めましょう。
行動の変化に対して
終末期は、医療ではなく「人」が付き添って、「人」の支えで、その人を幸せにする時期です。そばに気を払ってくれる人がいると、人の脳は十分に反応することがわかっています。
かぼちゃの煮物、花の香り、歌、子どものときに遊んだ紙風船、家族と旅行した時の写真など、その人の好みや喜び、心地よさになるものを居室に持ち込んで、一緒に楽しみ合いましょう。
さいごに
「終末期」の介護は、プロであっても戸惑いや不安があるものです。
最期のときをともに過ごすというのは、とても重要な意味を持つため、身体や心理・行動などのさまざまな変化を知っておくことが大切になります。
いま、「終末期の介護」に携わっている人だけでなく、今後携わる可能性がある人にも、介護の仕方や関わり方を知って頂く機会になればと思います。
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