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「介護と育児の板挟み」もはや他人事ではない、ダブルケアという問題。

LIMO / 2020年11月29日 14時0分

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「介護と育児の板挟み」もはや他人事ではない、ダブルケアという問題。

皆さんは「ダブルケア」という言葉を知っていますか?

育児と親の介護をおこなう時期が重なり、二重でお世話することを指します。「ダブルケア」は単純に考えても、育児のみや介護のみをおこなっている人に比べ、2倍もしくはそれ以上の負担がかかっている状況と考えられます。

現在、子育て中の人、親を介護している人、誰にでも起こりうる問題なのです。

そこで本記事では、「ダブルケア」が起こる原因や問題点、今後の課題などを解説していきます。

「ダブルケア」はなぜ起こる?

では、厚生労働省の「令和元年(2019年)人口動態統計月報年計(概数)の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/gaikyouR1.pdf)」のデータを参考に、「ダブルケア」が起こる要因についてみていきましょう。

晩婚化

2019年の平均初婚年齢は夫31.2歳、妻29.6歳となっています。1995年の平均初婚年齢、夫28.5歳、妻26.3歳と比較すると、男女ともに約3歳、初婚年齢が上がっていることがわかります。

さらに近年では、女性もバリバリ働く時代となり、「キャリアウーマン」などという言葉も、名実ともに定着した感があります。

労働環境の変化や、結婚への意識の変化などから晩婚化が進み、「ダブルケア」が起こる一因となっているといえるでしょう。

出産年齢の高齢化

晩婚化に伴い、出産年齢の上昇もみられています。

2019年の、第1子出生時の母の平均年齢は、30.7歳となっています。1995年の、27.5歳と比較すると、前述の初婚年齢同様、約3歳平均年齢が上がっていることがわかります。

結婚後すぐに子どもができる家庭ばかりではありません。「とりあえず夫婦2人の時間を楽しみたい」「子どもが欲しいけど、なかなか子宝に恵まれない」などの事情を抱える家庭もあるでしょう。晩婚化やさまざまな事情が重なり、出産年齢が上昇していると考えられます。

また、40歳以上の出生では、出生数が5万840人で、うち第1子が1万8378人と、36.1%にも及ぶことが判明しました。

40歳以上での出産となると、親の年齢は60歳~70歳くらいと考えるのが自然です。すでに介護が必要となっている、数年後には介護が必要となる可能性も高く、初めての育児と時期が重なってしまうことは避けられないといえるでしょう。

「ダブルケア」によって起こる問題

では、ここからは、ソニー生命が実施した「ダブルケアに関する調査2018」の結果より、ダブルケアの実状について深掘りしていきましょう。

離職せざるを得ない現実

有職者(765名)に、負担に感じていることを聞くと、「仕事との両立」と回答した人は、男性15.4%、女性28.7%でした。育児や介護は女性が担うことが多いため、男性と比較して約2倍という結果になりました。

仕事をしながらの育児や介護は、とても大変なものです。ましてや、仕事に加え、育児と介護の両方を同時期に担うとなれば、かなりの負担となるでしょう。

どれか1つでも負担を減らすと考えたとき、仕事を辞めるという決断に至るのは、誰にでも起こりうることかもしれません。

孤立してしまう

自身が中心となって世話・見守り・介護をしている人(205名)に、中心となって関わっている理由を聞くと、女性では「自分以外に主に介護できる人がいない」と回答した人が、62.4%にも及ぶ結果となりました。

家庭の中に協力者がおらず、1人で育児と介護を担うことになれば、孤独感を感じてしまうこともあるでしょう。

さらに、「ダブルケア」をおこなうことで、会社を退職したり、友人などとの付き合いが減ったりすれば、社会とのつながりがなくなり、孤立してしまうこともあります。

心も体もしんどい!

全回答者(1,000名)に、ダブルケアで負担に感じていることを聞くと、「精神的にしんどい」が最も多く46.8%、次いで「体力的にしんどい」が43.2%という結果になりました。

近年、「介護うつ」や「育児ノイローゼ」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、「ダブルケア」による精神的負担の増加などから、うつ病を発症することもあります。

また、育児と介護の両方をおこなえば、身体的にはかなりの負担がかかります。「ダブルケアラー」自身が体調を崩してしまうこともあり、大きな問題といえるでしょう。

子どもや親など双方への影響

全回答者(1,000名)が、ダブルケアで負担に感じていることのなかに、「子どもの世話を十分にできない」「親/義理の親の世話を十分にできない」と回答した人が、それぞれ30%前後いることがわかりました。

育児のみ、介護のみをおこなうだけでも大変ですが、同時期に2人の世話をするとなれば、満足にできない部分も増えます。小さな子どもと高齢の親、双方へ影響がでることは避けられないといえるでしょう。

「ダブルケア」を支援する制度やサービス

勤務先の「育児休業」「介護休業」制度を利用する、地域の相談窓口(地域包括支援センターなど)に相談するなどのサポートは受けられますが、「ダブルケア」そのものへの支援体制や制度はあまり整っていないのが現状です。

「ダブルケアへのサポート」と考えるよりも、「育児へのサポート」「介護へのサポート」と分けて考えた方が、良いかもしれません。

横浜など一部の地域では、「ダブルケアラー」をサポートする民意団体が存在し、「ダブルケアラーサポーター養成講座」などを実施していますが、地域を挙げてサポート体制を整えているところは非常に少ない状況です。

今後の課題

支援体制の整備

「ダブルケアラー」への支援体制は、整っているとは言い難い状況にあり、今後早急に体制を整えていくことが求められます。地域を挙げて支援しているところも少ないため、地域一丸となって「育児」「介護」の両方をサポートできるような環境も必要です。

「ダブルケア」を知ってもらう

先述のソニー生命による調査では、全国の大学生以下の子どもを持つ30歳~55歳の男女(17,049名)に、「ダブルケア」という言葉を聞いたことがあるか尋ねると、「ある」が17.5%、「ない」が82.5%という結果になりました。

「ダブルケア」という言葉すら聞いたことがない人が圧倒的に多く、認知度の低さがうかがえます。

今後、「ダブルケア」という言葉を世間に広く認知してもらうことも、支援体制を整える大きな一歩といえるでしょう。

さいごに

ケアする側に身体的・精神的に大きな負担がかかる「ダブルケア」。

1人で抱え込んでしまうと、ケアされる側にも悪影響を及ぼすことがあります。できれば周りの家族や親族、地域の人々などに協力してもらうことが望ましいです。

しかし、現状では、すべてを1人で担わざるを得ない「ダブルケアラー」も多く、国や地域を挙げての早急な対策や支援体制の整備が求められます。

皆さんも、「ダブルケア」という言葉とともに、「ダブルケアラー」の存在を知り、周りにそのような人がいた時、サポートできるよう心掛けてみてはいかかでしょうか。

【参考】
「令和元年(2019年)人口動態統計月報年計(概数)の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/gaikyouR1.pdf)」厚生労働省
「ダブルケアに関する調査2018(https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/nr_180718.html)」ソニー生命

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