後期高齢者の医療費、自己負担を増やすべき? 本当に貧しい人には補助金を
LIMO / 2020年12月7日 20時0分
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後期高齢者の医療費、自己負担を増やすべき? 本当に貧しい人には補助金を
後期高齢者の医療費について、自己負担割合を1割から2割に引き上げる方向で検討されているようですが 、それはやむを得ないことだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
医療費が増えるから自己負担を
高齢者が増え、医療費が増え、財政を圧迫しています。今後、医療の進歩で高額な治療が増え、高齢者が長生きするようになり、団塊の世代が後期高齢者になり、医療費の負担はいっそう重くなって行くでしょう。
それならば後期高齢者にも少し負担してもらい、財政の負担を軽減しよう、ということで、自己負担割合を引き上げることが検討されているようです。
高齢者がかわいそうだ、という意見もあるでしょうが、財政を健全化するために誰かが我慢をしなければならないのであれば、後期高齢者に我慢してもらう、というのも一つの選択肢でしょう。消費増税とどちらが良いのか、といったことを国民的なレベルで大いに議論すれば良いでしょう。
あとは、シルバー民主主義の下で高齢者の負担を増やす政策が可能か、という論点もありますね。シルバー民主主義というのは、高齢者の数が多く、投票率も高いことを知っている政治家は、高齢者に都合の悪い政策を採りたがらない、ということです。どうなるか見ものですね。
しかし本稿は、これとは異なる観点から医療費の自己負担増を支持します。それは、医療サービスを減らす、という観点からです。
医療サービスが供給されすぎ
高齢者が医者に治療してもらうことで、レストランで1500円の食事をしたのと同じ満足が得られるとしましょう。
医療費が1万円で、後期高齢者は1割負担なので、自己負担は1000円だとします。その場合には、高齢者は外食より治療を選ぶでしょうから、財政負担が9000円生じます。
自己負担割合が2割になると、高齢者は「2000円出して治療を受けるより、1500円で外食しよう」と考えて外食を選ぶでしょうから、治療行為は行われず、財政負担はゼロになります。
高齢者の懐は500円だけ痛みますが、財政の負担は9000円減ります。それならば、9000円のうち3000円を使って高齢者に払う年金を増額しましょう。
そうすれば、財政負担が差し引き6000円減り、高齢者に冷たいという批判も受けず、むしろ高齢者に感謝されるでしょう。シルバー民主主義に即した政策と言えそうですね(笑)。
問題の本質は、1500円分しか喜ばない治療サービスが、1万円もするのに提供されている、ということなのですね。本来提供されるべきでない余剰な医療サービスが提供されている、というわけです。
それが提供されなくなるということが、日本経済にとって大きなメリットとなるわけですね。
医師がかわいそうだ、という意見もあるでしょうが、上記のように誰かが我慢をしなければならないわけですから、医師に我慢してもらうのか、他の誰かに我慢してもらうのか、国民的な議論が必要でしょうね。筆者としては、医師不足が解消するので一石二鳥の政策だ、と考えていますが。
貧しい人には補助金を
「貧しい人は高齢者であろうとなかろうと、1割負担にすべきだ」という意見もあるでしょう。1000円しか持っていない人は、外食も治療も受けられなくなってしまいかねないからです。
しかし、筆者は反対です。そうすると貧しい人が治療を受けるので、9000円の財政負担が生じるからです。
1000円しか持っていない人には、1000円の補助金を渡せば良いのです。そうすれば、その人は1500円で外食を楽しみ、500円の貯金ができるので満足するでしょう。
財政負担は、9000円から1000円に減ります。貧しい人に感謝されて財政負担も減るならば、そちらを選ぶべきなのは当然ですね。
余談ですが、日本では「金持ちには自己負担を」という場合、高額所得者を指す場合が多いですが、高齢者の中には所得は低いけれども巨額の資産を持っている人が大勢います。
そうした人に1割負担で済ませたり1000円の補助金を渡したりするのは望ましいことではありません。せっかくマイナンバーを導入したのですから、誰が資産家であるかを把握して、文字通り「金のない人」だけを優遇するようにすべきでしょうね。
感染症の予防と治療は無料に
以上、普通の病気の治療に関して記してきましたが、感染症については別の考慮が必要です。感染症については、本来行われるべきことが行われていない場合もあり得るからです。
感染症に罹患すると本人は1万円分の苦痛を味わい、他人に感染させて他人に6万円分の苦痛を味わわせるとします。合計7万円分の苦痛ですね。治療費が6万円で自己負担が2割であれば、本人は治療を受けないでしょうから、社会全体として7万円の損失を被ることになります。
そうした場合には、税金で治療を受けさせることが望ましいでしょう。7万円分の苦痛が6万円で消えるのですから。
あるいは、予防接種を受けると罹患する確率が2割から1割に減るとします。予防接種が6千円の2割負担であれば、人々は接種を受けないでしょうが、税金で負担すれば接種を受けるでしょう。税金で6千円を負担することによって、社会全体が期待値として7千円の被害が防げるのであれば、補助すべきでしょう。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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