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定年退職後に肝心なのは「資産取り崩し」に失敗しないこと

LIMO / 2020年12月9日 20時0分

定年退職後に肝心なのは「資産取り崩し」に失敗しないこと

定年退職後に肝心なのは「資産取り崩し」に失敗しないこと

筆者が提唱する資産形成方法は、「若い頃からコツコツつみたてて、60歳くらいには2,000万円から3,000万円程度蓄財できているようにしましょう」というものです。2,000万円というとある程度まとまった資産ですが、たとえばこれを30歳から30年間で貯めるとすれば、金利を考慮しない場合、毎月5.5万円ほどをつみたてていけばいいことになります。

時間をかけて貯めた資産も、いずれ使わざるをえなくなる

もちろん、若いときは給料が低いのでそんなに多額の貯蓄をするのは難しいですが、可処分所得の割合が高いうちにある程度始めておかないと、まず資産形成の習慣は身に着きません。つまり、インベストメント(投資)を始める時期として重要なタイミングなのです。

30年間という時間軸の中で徐々に所得が増えていく可能性や、株価の上昇等が期待できるわけですから、この時期に少額からつみたて投資を始めずしていつ行うのか、と指摘したいくらいです。

ところが皮肉なことに、若年層はまとまった資金は持っていません。持っていないので、金融機関のターゲット顧客は資産を保有している中高年層になってしまいます。実はここにパラドックスがあります。

現在の中高年層は昔の若年層であり、当時まとまった資産を持っていなかった方々です。その“昔の若年層”が時間をかけて資産を形成してきたからこそ、今、資産保有層となっているわけです。その中高年層はいずれ引退を迎えますから、これから資産を増やすというよりは、どのように使っていくか(使わざるをえないか)という状況になってきます。

インベストメント(投資)からディベストメント(取り崩し)にシフト

年金収入等が潤沢にあればいいですが、貯蓄した資産は年金の不足分を補うもの、あるいは将来養護施設に入所するための資金かもしれません。とにかく、増やすというよりは使うという方向にシフトチェンジしていかないといけないのです。

すなわち退職後はインベストメント(investment)ではなくディベストメント(divestment)、つまり資産を取り崩していく時期ですから、本来保有資産を増やしていける時期ではありませんし、時間も限定されています。

退職後、通常は住宅ローンなどの住居費や教育費の負担が大きく減り、日常生活のコストも減少していきます。一見余裕があるように見えますが、一方で定期収入源は限られてきます。こうした状況で、それまである程度の資産形成ができているのであれば、将来に備えつつうまく取り崩していくことが肝要です。

また、多額の退職金を得た方々が、それをどうにか増やそうと努力されるのはいいのですが、資産運用には広汎な知識や経験が必要なことを考えれば、無理して投資する必要はないと思います。生半可な知識で投資に手を出すと、火傷するのは自明です。

図表1は引退後に3000万円の現金(純資産)があったとして、年率5%、10%、15%で取り崩すと、それぞれどのように減っていくかをシミュレーションしたものです。たとえば年率5%の場合、1年目は3000万円 × 5%の150万円、2年目は2850万円 × 5%の142万円を・・・と定率で取り崩すとすれば、何歳までお金が残るか計算しています。

当然ながら、取り崩し率が大きければ大きいほど引退後に現金が減ります。ただし実際、70代や80代になるとお金を使うにもかなり体力が必要で、毎日レストランで外食なんて無理なのです。これは筆者の両親を見ていれば分かりますので、思いのほかお金は使えません。

図表1:引退後老後資産3,000万円を65歳から定率(年5%/年10%/年15%)で取り崩した場合の資産推移

(/mwimgs/c/c/-/img_cc9afcb0c1ec6904000b13762ee558a956935.jpg)

拡大する(/mwimgs/c/c/-/img_cc9afcb0c1ec6904000b13762ee558a956935.jpg)

注:筆者作成(単位:横軸は年齢、縦軸は万円)

引き際を決めるのは難しいが…

こうなってくると、引退後は増やすというよりも使い切る、すなわち個人資産をプラマイゼロにする知恵が要ります。

米国ではディベストメントの定義を、「自身の投資戦略に合わない投資資産を取り崩すこと」としています。つまり、投資を継続する必要がなくなったら、いったん現金化しましょうということなのです。

投資(インベストメント)を始めるのは簡単ですが、引き際(ディベストメント)を決めるのは難しいことです。こうした観点から、資産形成をされている方は資産を増やすことを優先させると共に、引退後どのようにディベストメントするかも考えないといけません。

そう、投資はインベストメントとディベストメントのせめぎ合いなのです。いずれにせよ、いくら儲けてもあの世にお金は持っていけませんからね。

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