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宝くじを買う人と、保険に入る人に共通する「錯覚」とは?

LIMO / 2020年12月14日 20時0分

宝くじを買う人と、保険に入る人に共通する「錯覚」とは?

宝くじを買う人と、保険に入る人に共通する「錯覚」とは?

宝くじの期待値はマイナスだが、夢を買う費用と考えれば購入も意外と合理的だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

宝くじの期待値はマイナス

年末ジャンボの季節ですね。宝くじは相変わらず人気があるようです。宝くじは期待値がマイナスなのに、なぜ人気なのでしょうか。

宝くじの期待値は大幅なマイナスです。期待値というのは当たる確率と賞金額の掛け算した値から購入費用を差し引いたものなのですが、「確率から考えると損な取引」だと考えても良いでしょう。

宝くじの顧客が払った購入代金から宝くじ発行の費用等々を差し引いて賞金が支払われるわけですから、「発行される宝くじを全部買えば、必ず損する」わけですね。つまり、各1枚ずつも確率的には損なわけです。

それでも買う人がいる理由は「錯覚」と「夢を買う」なのでしょう。「当たる」と思って買う行為は合理的とは言えませんが、「当たれ」と念じるために買うのなら合理的だ、というわけですね(笑)。

人間は非常に小さな確率は実際より大きく感じる

行動経済学という新しい学問分野があります。経済学と心理学のコラボだと考えて下さい。その中に「人間は、非常に小さな確率は実際よりも大きく感じる」というものがあります。

「当たる確率は非常に小さいのだけれども、当たりそうな気がするから買う」というわけですね。

飛行機が落ちる確率は非常に小さいにもかかわらず、飛行機に乗るのを怖がる人が多いのは、この錯覚によるものなのですね。

「貴方に仕事を依頼したいのですが、失明する確率が100万分の1の危険な仕事です。何円で引き受けていただけますか?」と聞かれた場合と、「貴方は50%の確率で失明する病にかかっています。そんな貴方に危険な仕事を頼みたいのですが、それを遂行すると失明する確率が50.0001%に高まってしまいます。何円で引き受けていただけますか?」と聞かれた場合の回答は、同じですか?

前者には高い金額を回答したのに、後者には「誤差の範囲だから安くて良い」と回答したのではありませんか? そうだとすれば、それは錯覚です。

もっとも、読者が錯覚したとしても、悲観することはありません。「人類の進化の長い歴史の中で、そうした錯覚を身につけた方が便利だった」と考えれば、錯覚しなかった人より読者の方が進化しているわけですから(笑)。

余談ですが、今ひとつ。「読者は100万分の1の確率で失明する病にかかっている。これを治す薬があるが、何円なら買うか?」という問いはいかがでしょう? これは宝くじとは関係ないのですが、「人間は事態が改善する喜びより悪化する悲しみの方が大きい」という錯覚に関するものです。

それ以外にも錯覚の要因は多数ありそうです。当たった人の話は印象的だから頭の中に残りやすい、ということもあると思います。当たった人の話はニュースになるが、外れた人の話はニュースにならないから、ということもあるでしょう。「自分で売り場を選んだのだから、当たりそうな気がする」ということもあるかもしれませんね(笑)。

夢を買うなら合理的

上記のように、期待値を考えて経済合理的に行動するならば、宝くじは買うべきではありませんが、人生は期待値だけが重要なのではないでしょう。

たとえばオリンピックで日本選手を応援する行為は、全く経済合理的ではありませんね。テレビを見ながら応援しても勝敗には全く影響しませんし、仮に勝敗に影響したとしても自分の収入には全く影響しないわけですから。

しかし、だからと言って日本選手を応援する行為が愚かだということは全くありません。応援したいのであれば応援すれば良いでしょう。

それと比べれば、宝くじを買った後で「当たれ」と応援する行為の方が合理的でしょう。当たる確率に影響することはないでしょうが、当たれば自分の財産が増えるのですから(笑)。

「当たれ」と応援する対象が手に入り、しかも当たる確率が実際より高く感じられるので当選発表まで夢を持ち続けることができるわけですから、数百円の出費など安いものです。

宝くじは保険と似ている

保険と宝くじは、実は結構似ているのです。経済的にも似ていますし、錯覚の影響も、夢を持つという点も似ています。

経済的にはどちらも、皆で金を出し合って、特定の人にそれを渡す、という行為です。保険は運の悪い人に、宝くじは運の良い人に。

別の考え方も可能です。「自宅が燃えたら火災保険がもらえる」なら保険ですが、「隣村の村長宅が焼けたら火災保険がもらえる」という契約ならば宝くじです。

契約者が隣村の村長宅を放火するといけないので、そうした契約は存在しませんが、株の世界には、「株価暴落保険」が実際にあります。村長宅は放火できますが、契約者が株価を暴落させることはできませんから(笑)。

これは、株価が一定以上暴落すると損失を補填してくれる契約で、実際には「プットオプション」という複雑な契約なのですが、本質は株価暴落保険です。

錯覚という点では、「非常に小さな確率は実際より大きく感じるので、保険に加入したくなる」ということがあり得るでしょう。

夢を買うのが宝くじだとすれば、安心を買うのが保険ですね。どちらも「実際の確率よりも大きな確率で起きそうな気がするので、夢は大きく、心配も大きい。だから宝くじと保険を買いたくなる」というわけですね。

保険の場合は、錯覚等々のみならず、「誰かが非常に困った目に遭うのを防ぐ」という機能がありますから、期待値に関係なく加入するべきだ、という面があり、場合によっては宝くじよりさらに合理的なのかもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織、過去に属した組織、その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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