借入金が膨らんだ「鳥貴族」はコロナ第3波を乗りきれるか。復調の兆しはあるが…
LIMO / 2020年12月20日 8時0分
借入金が膨らんだ「鳥貴族」はコロナ第3波を乗りきれるか。復調の兆しはあるが…
“298円均一”の低価格で人気の焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」。10月に開始された「Go To イート」キャンペーンでは、制度の穴を悪用したポイント稼ぎに利用され、「トリキ(鳥貴族)の錬金術」として不本意ながら知名度が上がりましたが、新型コロナの影響を免れているわけではありません。
2020年7月期末には長期借入金が増加した結果、自己資本比率が40%台から28.4%へ大きく低下。果たしてトリキは、コロナ禍を乗り切れるでしょうか。
コロナ禍対応の資金調達で「自己資本比率」が低下
帝国データバンクの「景気動向調査(11月)」によれば、新型コロナが流行し始めた今年2月以降、「飲食店」の景気動向指数(DI)は全産業の水準を大きく下回っています。10月に「Go To イート」などが始まっても飲食店DIの回復は遅く、特に居酒屋は繁華街立地の苦戦や宴会自粛によって厳しい状況が続いています。
鳥貴族(3193)は、2020年7月期の第3〜4四半期に、事業の継続性を担保するため手元資金として長期借入金を大幅に増やしました。自己資本比率の推移を見ると、2020年7月期第2四半期に42.5%だった自己資本比率は期末では28.4%にまで低下しています。負債が45億円近く増えてしまったことに加え、純損失の発生で自己資本が減ったことが原因です。
企業の資金調達は「自己資本」と「他人資本(=負債)」で構成されます。自己資本比率が高いほど借金が少ないことを意味しており、経営の安定性を示す指標となっています。
鳥貴族は「中期計画」で自己資本比率40%を目安とする方針を掲げていますが、コロナ禍で計画は早々にくつがえされてしまったことになります。今後、鳥貴族はどう対処していくのでしょう。
その前に、まずは近年の経営状況を確認しましょう。
集中出店でカニバリ発生、不採算店が利益を圧迫
鳥貴族のビジネスは、焼鳥屋「鳥貴族」の営業およびフランチャイズ(FC)事業です。11月末時点で622店舗を、関東・関西・東海の3つのエリアで展開。うち387店舗が直営で235店舗がFCです。なお、鳥貴族ではFCの事を“同志”という意味を込めて「鳥貴族カムレードチェーン(TCC)」と呼んでいます。
続いて、近年の業績を見てみましょう。コロナ禍の影響が発生する以前の2017年7月期から2019年7月期までの3年間をたどってみると、売上高は293億円⇒340億円⇒358億円と右肩上がりです。一方、営業利益は14.6億円⇒16.8億円⇒11.9億円、当期純利益は9.7億円⇒6.6億円⇒▲2.9億円と減益傾向です。
2017年秋に行った価格改定(税抜「280円均一」を「298円均一」へ)で既存店売上高が伸びなやむ中、翌2018年7月期には104店もの新規出店を行ったことで増収となり、2019年7月期は新店効果で売上高は増加。
しかし、拡大によって人件費がかさみ、また、集中出店のエリア内で自社競合が起きたことなどから営業利益はマイナスに転落。不採算店にかかる減損損失によって当期純利益の減益も続きました。
コロナ禍で大幅な減収減益、しかし回復の兆しも…
不採算店の整理により新陳代謝を図ることにした鳥貴族は、2020年7月期の通期予想を、当初、売上高346億円、営業利益13.1億円、当期純利益4.5億円の減収増益と見込んでいました。第1・第2四半期は順調に推移していたものの、第3四半期(2〜4月)からは新型コロナの直撃を受け減収減益が続きました。
その結果、通期では売上高275億円(前期比23%減)、営業利益は9.8億円(17%減)、当期純利益は▲7.6億円(マイナス幅は前年の2.7倍)となってしまいました。
しかし、2021年7月期の第1四半期(今年8〜10月)では回復の兆しが見えます。売上高62.3億円、営業利益▲1.7億円、四半期純利益▲0.2億円と減収減益ではありますが、前年度第4四半期(5〜7月)の売上高45億円を上回りました。
同時に長期借入金の返済も進め、負債合計が138.7億円と2020年7月期末より4.2億円減少しました。これによって自己資本比率は28.9%となり、低下に歯止めがかかりました。
こうした業績に対し、株価はどう動いたのでしょうか。
コロナ収束と同様、鳥貴族の見通しも霧の中?
株価は2017年12月にピークの3900円台を記録して以降、減益によって下落が続き、19年3月には1600円台となりました。
その後は不採算店の撤退が評価され、今年2月には2600円台まで回復しました。しかしコロナの影響で4月から11月はおおむね1400円前後を上下しています。
2021年7月期第1四半期の決算発表で回復の兆しがあったことから、12月上旬はやや上昇しましたが、それでも1500円程度であり、通期の業績予想が未定となっていることが重荷となっているようです。
鳥貴族「月次動向」の既存店売上高を見ると、緊急事態宣言による臨時休業で、4月は前年同月比3.9%、5月は同12.1%という厳しい結果に陥りました(2020年7月期)。その後、今期9月には77.2%、10月が93.1%、11月は81.3%と徐々に客足は戻っているようで、テイクアウトの導入や感染対策のPRによって集客を図っています。
しかし12月には全国でコロナ感染者数が過去最多を日々更新するような状況となり、自治体の要請で営業の時短対象となる店舗が急速に増えています。業績は再び悪化に向かうかもしれません。
まとめ
鳥貴族は不採算店の撤退によって2020年7月期は増益を見込んでいました。しかし第3四半期からは新型コロナの影響で負債が膨張し、自己資本比率が低下しました。業績の回復とともに債務返済も進むと思われますが、業態の特性上、新型コロナに業績が左右されることは避けられません。今しばらく、気の抜けない舵取りが続くことになるでしょう。
【参考資料】
「TDB景気動向調査(全国):2020年11月調査(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/202012_jp.pdf)」帝国データバンク
株式会社鳥貴族 2021年7月期第1四半期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/tdnet/1911055/00.pdf)
株式会社鳥貴族 2020年7月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/tdnet/1882279/00.pdf)
株式会社鳥貴族 2019年7月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/tdnet/1751287/00.pdf)
株式会社鳥貴族 2019年7月期 決算説明会プレゼンテーション(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/ir_material_for_fiscal_ym/70509/00.pdf)
株式会社鳥貴族 2018年7月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/tdnet/1629233/00.pdf)
株式会社鳥貴族 中期経営計画(2020年7月期〜2024年7月期)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3193/ir_material/127303/00.pdf)
株式会社鳥貴族 コーポレートサイト(https://www.torikizoku.co.jp/company/ir/)
「新型コロナウイルス 経済対策・生活情報(https://www.jiji.com/jc/v7?id=202002cvlife)」時事ドットコム
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