あなたの飲んでいるビールは「グリーン電力でつくられている」って知ってますか?
LIMO / 2020年12月20日 11時0分
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あなたの飲んでいるビールは「グリーン電力でつくられている」って知ってますか?
菅首相は今年(2020年)10月26日の臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガス排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明しました。
これは菅政権の目玉政策のひとつで、従来、日本は「2050年に80%削減」を掲げていたことから、海外の評判も高いようです。ちなみに「実質ゼロ」というのは、いわゆるカーボンニュートラルのことで、CO2やメタンなどの温暖化ガス排出量から、森林吸収や排出量取引などで吸収される量を差し引いて、全体としてゼロにするという意味です。
今回は、日本の久々の積極的な環境政策を記念して、身近な環境問題、特に電力について取り上げます。
グリーン電力活用量が日本で一番多い製品
「グリーン電力」という言葉をご存じでしょうか。これは、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱など、自然を利用した再生可能エネルギーでつくられた電気を指します。
再生可能エネルギーの定義は、「有限な資源である化石エネルギーとは違い、資源が枯渇せず、比較的短い期間に再生が可能で繰り返し使えるエネルギー」。特長としては、もちろん「CO2を排出しない(増加させない)」があげられます。
この「グリーン電力」で製造されている、非常に身近な製品があるのです。ヒントは、「お好きな方は、毎日飲用しているもの」です。
「グリーン電力」で製造されている、非常に身近な製品。それは、アサヒスーパードライです(記事タイトルがヒントになっていました)。
少し詳しく紹介すると、アサヒビールでは全工場で製造する全てのアサヒスーパードライ缶350mlおよびギフトセットの全てのビール類などの製造に、グリーン電力を使う取り組みを行っています。主に利用されているのは、風力発電とバイオマス発電による電力です。
さらに、2020年5月下旬製造分からの「アサヒスーパードライ」(缶500ml)と、2020年1月下旬製造分からの「アサヒドライゼロ」(缶350ml)にも、グリーン電力活用を拡大しました。ノンアルコールビール・ファンの方も、グリーン電力のビールが飲めるようになったのです。
ここで、「するとアサヒビールの工場に行くと、風力発電とかがたくさん並んでいるのか」と思う方もいるかもしれませんが、それは早トチリです。スーパードライを製造するグリーン電力は主に「グリーン電力証書」の活用によるものです。スーパードライの缶をよく見ると、「g」というマークが印字されています。これが「グリーンエネルギー(GE)マーク」です。
ちなみにグリーンエネルギーマーク商品の中で、グリーン電力活用量が日本一(2009年5月〜2019年12月)なのがスーパードライです。
では、「グリーンエネルギー(GE)マーク」「グリーン電力証書」とは一体、何なのでしょうか。
グリーン電力証書とは
「グリーンエネルギー(GE)マーク」とは、2008年「グリーンエネルギー認証センター」が 制定したマークで、使用する電力をグリーン電力で賄ったことを示すものです。ちなみにアサヒビールでは2009年から、この取り組みを開始しており、そのグリーン電力は日本自然エネルギー株式会社の「グリーン電力証書システム」 を通じて実現されています。
「グリーン電力証書」とは、一言でいうと再生可能エネルギーにより発電された電気を「電気そのものの価値」と「環境付加価値(化石燃料の節減やCO2排出抑制等の付加価値)」のふたつに概念的に分離し、「環境付加価値」を第三者認証機関の認証を得て、「グリーン電力証書」という形で証券化して取引する仕組みです。いわゆる「カーボン・オフセット」と呼ばれる手法のひとつです。
当たり前のことですが、電線を流れている電気は、再生可能エネルギー由来のものも、石炭火力発電や原子力発電由来のものも全て混ざっています。
スーパードライもそのような電気を使用して製造されていますが、スーパードライ製造に要した全電力量を算出したうえで、その分のグリーン電力証書を購入し、グリーン電力で製造したと「見なす」わけです。つまり「環境付加価値」を元の場所から違う場所へ転移させるということです。
さまざまな分野で使われているグリーン電力証書
グリーン電力証書はさまざまな分野で活用されています。
スーパードライのような製造分野の他に、建物全体の使用電力をグリーン電力とするもの。ひとつのイベントの運営をまるごとグリーン電力とするもの。少し変わった事例としてはCSR報告書といった印刷物に使用する例もあります。これは大手印刷会社がグリーン電力証書をまとめて購入し、印刷に使用する電力にグリーン電力証書を割り当てるスキームが主流です。
日本ではカーボン・オフセットに関して「自分が削減しないで、他人の削減分を金で買うのか」という否定的な意見もあります。しかし、グリーン電力証書でいえば、その購入費用は、証書発行事業者を通じて発電設備の維持・拡大などに利用されているのも事実です。
もう少し大きな視点では、これからの環境政策には市場メカニズムを、どう活用するかが課題となります。たとえば海外では、CO2排出量削減の取り組みや成果を公開し、優良企業への投資を促進する「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト) 」などが以前から注目を集めています。
日本が環境先進国へと舵を切るならば、そういう視点も重要になってくると思われます。世界的な価値観からすると、環境分野こそが21世紀最大のビッグビジネスのひとつなのですから。
【参考資料】
「グリーン電力(https://www.asahibeer.co.jp/csr/eco/ge/)」(アサヒビール株式会社)
「グリーン電力証書(http://www.natural-e.co.jp/green/about.html)」(日本自然エネルギー株式会社)
「グリーン電力ソリューション(http://www.dnp.co.jp/dnp_trading/product/pdf/green_Electric.pdf)」(大日本商事株式会社)
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