デジタルツインで”パラレルワールド”が実現!? NTTやトヨタが目指すものとは
LIMO / 2021年1月3日 20時5分
デジタルツインで”パラレルワールド”が実現!? NTTやトヨタが目指すものとは
「テジタルツイン(Digital Twin)」というワードをご存じでしょうか。現在、IT分野のキーワードとして注目され、世界的に著名な米IT調査会社ガートナー社の「戦略的テクノロジーのトレンドトップ10」に2018年、2019年と2年連続ランクインしています。
テジタルツインは、世界を席巻し、進化し続けているIoT(Internet of Things)の先端技術として注目を集めました。ご存じのように、IoTは世の中に存在するさまざまなモノがインターネットを介してつながることを実現します。
IoTとデジタルツインの深い関係
デジタルツインは、このIoTに集積されたデータをもとに、サイバー(仮想)空間でリアル空間を再現する技術です。「デジタルの双子」の意味を込めてデジタルツインと呼ばれています。ここでポイントとなるのは、対象となるモノの情報がリアルタイムでデジタルツイン上のモデルに常に反映されることです。
デジタルツインが再現する世界は、たとえば「製造工程」そのものであったりします。ドイツ企業のシーメンスでは、製品のライフサイクルの初めから終わりまでをデジタルツイン上で再現し、生産性を抜本的に高める「デジタルエンタープライズ」に取り組んでいます。
デジタルツインの活用は製造業だけにはとどまりません。たとえば台湾では「スマートダム」のプロジェクトが注目を集めています。
「スマートダム」とは、ダムをデジタルツインで再現することで、地形やダムの形状、ダムの放出量の推移などを、リアルタイムで確認できる仕組みを開発するプロジェクトです。
デジタルツインコンピューティングとは
このようにデジタルツインは製造業を起点として、幅広い分野で活用されようとしています。その目的も、工程管理や保守・保全といった領域から、デジタルツインに集積されたデータをもとに、AIを活用した未来予測にシフトしています。
このデジタルツインをさらに、発展させたコンセプトをご紹介しましょう。それがNTTの提唱する「デジタルツインコンピューティング(以下DTC)」です。DTCは2019年5月に「IOWN(アイオン)構想」の一環として発表されました。
IOWN構想はICT(情報通信技術)を駆使した、未来におけるスマートワールドのコミュニケーション基盤として、2030年頃の実現を目指しています。主に3つの技術領域から構成され、DTCがその内のひとつです。
DTCの特徴は、未来に向けて増え続けるデジタルツインを、シームレスに連携させた世界を創造することです。たとえば、都市をまるごとデジタル上に再現すること。それは現実世界の都市とリアルタイムに同期した都市の再現を意味しています。
2020年3月にNTTとトヨタ自動車の“スマートシティ構想"における業務資本提供が発表され注目を集めましたが、その背景のひとつが、このDTCです。
ヒトのデジタルツインが可能になる!?
ひとつの都市をまるごとデジタル上に再構築する・・・これだけでも、ちょっとビックリですが、まだ驚くのは早いかもしれません。DTCでは、ヒトのデジタルツインも視野にいれています。
「いや、ヒトのメディカル情報とかをデジタル上で再現することは可能でしょ・・・」と、思う方もいるかもしれません。違うのです。DTCにおけるヒトのデジタルツインとは、ヒトの物理的なデジタル化だけでなく、意識や思考といったヒトの内面のデジタル化も含めて構想されています。
実際に2019年のNTT研究開発のフォーラムでは、自分のデジタルツインと会話する“未来"もプレゼンされていました。現在は、ヒトの内面や個性をどう定義し、どんな個性をどうモデル化していくか、個々の価値観まで再現し、どう更新していくかなど、あらゆる角度から研究が進められています
自分自身を含めて、現実世界がデジタル上に再構築される。SF小説にでてくる“パラレルワールド"みたいですよね。どう理解すればよいのか。ちょっと、頭を整理するために、参照すべき概念として「アフターデジタル」を紹介します。
「アフターデジタル」は2019年に藤井保文氏他による同名書籍が出版され、日本のIT業界を中心に大きな反響を呼びました。
アフターデジタルの世界観
アフターデジタルとは「リアル世界がデジタル世界に包含される」世界です。その背景にあるのが、モバイルやセンサー、IoTなどの普及。つまり、現実世界で純粋なオフラインが希少になる世界では、「リアルがデジタルに包含される」と考えるわけです。
日本政府が提唱する「ソサエティ5.0」の、“サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステム"もアフターデジタルを参照すると分かりやすいと思います。
ここで訂正とお詫びです。つまりタイトルでも使用している“パラレルワールド"風に別個の世界として捉えるのが誤り。というのは、それこそ「ビフォアデジタル」の考え方ということになるからです。
アフターデジテルの世界では、デジタルにモラルが問われることになります。収集した顧客データから、どのような価値をユーザーや社会に還元するのか。DTC構想でも倫理的な事柄がきわめて重要としています。
デジタルの最先端が非常に「文系っぽく」なっている印象を受けるのですが、いかがでしょうか。アフターデジテルの世界では、デジタルがどのような社会を目指すのかがポイントになる気がします。「デジタルがリアルを包含する」というのは、そのような意味をも持っているのかもしれません。
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