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難関中学受験の記述問題からみる、合格最低点を「超える子」「超えない子」の違い

LIMO / 2020年12月30日 10時0分

難関中学受験の記述問題からみる、合格最低点を「超える子」「超えない子」の違い

難関中学受験の記述問題からみる、合格最低点を「超える子」「超えない子」の違い

年々加熱する中学受験。しかし、どうやって対策したらいいのかわからない。特に国語は、親としても教え方がわからないし、過去問の解答を読んでもそれ以上のことはなにもいえない。何か、学力を伸ばすための方針はないのでしょうか? そんな悩みを解決するためのメソッドを解説します。

難関中学入試の国語記述で合格最低点を「超える子」と「超えない子」の違い

難関校、とりわけ御三家(開成・麻布・武蔵、桜蔭・雙葉・女子学院)と呼ばれるような私立中学の入試においては、高い記述力が不可欠です。何しろ、そういった学校では、算数・理科・社会においても記述で答える設問が多々あるわけですから。

そうはいっても、やはり記述の王道は国語です。まず国語において記述力を向上させておくことが、他教科の得点アップにもつながります。ただ、記述は絶対得意、誰にも負けない――などと断言できる小学生は、ほとんど存在しません。進学塾の模試において、算数では満点が出ますが、記述を含む国語で満点が出ることはほとんどないのです。

ですから、まずは安心してください。満点を目指す必要はないということです。

保護者の方は、たとえば10点満点の設問でわが子が3点を取ってくると、「あと7点取らなきゃ!」と思いがち。しかし、それは不可能な話です。たいていの記述では、7割も取れれば十分。「あと7点」ではなく、「あと4点」なのです。

要するに、「目指すべきは満点ではなく合格最低点である」ということです。そういうと、こんな声が聞こえてきそうです。

「でもうちの子は、その4点のうち2点くらいが限界なんですけど」

なるほど、10点中5点で止まってしまうと。では、どうすればあと2点取り、7割のラインに到達できるのでしょうか。その答えは、大きく分けて2つあります。第1に技術。第2に知識です。

国語に知識が必要な理由とは?

え? 知識? 国語なのに? と思うかもしれません。ならばまず、知識の話をしておきましょう。

実は、国語ほど幅広い知識が求められる教科もないのです。国語の場合、「常識」といいかえてもよいかもしれません。何しろ、言葉によって描写・解説される対象というのは、森羅万象、あらゆるものごとです。幅広い常識を備えていないと、その文章が何をいっているのかちんぷんかんぷんになってしまう。そうなると、どんなに「地頭」のよい子でも、理解は遅くなります。

常識というのは、第1に、よく知られた対象を区別できることを意味します。「これは赤色、これはピンク色、これは紫色」というように、多くの「名前」を知っていることです。第2に、真偽、あるいは価値を区別できることを意味します。

「富士山は日本で一番高い山だ」「日本人は以心伝心を美徳としており、何でもかんでも言葉で表現しようとは思っていない」「困っている人には手を差し伸べるべきだ」などということを「知っている」かどうかです。

これには、体験的知識も含まれます。「優勝は準優勝とは全然違うね」「彼女のような人を、親友と呼ぶんだと思う」などというように。そういった常識を持っている人を、「大人」といいます。

そう、中学入試というのは、ひとことでいえば「大人な子」を求めているんです。さらにいうと、中学入試国語では、そういった常識を踏まえた上で、「逆説」も問われます。「これは本当にピンクと呼べるか?」「富士山は高さでは日本一だが美しさではどうか?」「日本人は本当に言葉で表現するのが苦手なのか?」「困っている人には、無条件で手を差し伸べるべきなのか?」「準優勝は劣るのか?」「それが本当に親友か?」などというように常識に疑問を呈する文章が、子どもたちに提示されます。あるいは、自ら逆説化して考え、文章化するように求められることもあります。

常識を持たないと、逆説にはたどり着けません。常識をいかに持っているか。と同時に、どれだけ常識を疑い、逆説を受発信できるか。

それが、「大人力」であり、「合格力」なのですね。しかし、それだけではやはり記述で合格最低点にたどり着くのは難しい。そこで、肝心な「技術」の話も書いておきましょう。

国語の入試で合格するための「技術」とは

2019年、神奈川県の私立・栄光学園中学校で出題された物語文読解の問2(人物の変化を問う設問)について、答案例だけを列挙してみます。この中に、「ふくしま式」の正解例が1つだけあるのですが、それがどれなのか、当ててみてください。

1)一人で強がることで孤独感に耐え、友達のいない自分が苦しかった時に歌会に出会い、それが全てではないと気づき強くなれた。

2)友達のいない自分が苦しく、一人でいると周りの目が気になっていたが、魔法によって、教室だけが全てじゃないと思えるようになり、救われた。

3)学校から与えられた狭い交友関係ではなく、自分から広げる交友関係を歌会という場で得られたことで、いつも堂々としていられる強さを持てるようになった。

4)短歌のもたらした次の魔法である歌会に出会えたことにより、自分の世界は教室だけではないことに気づくことができ、自分の居場所を手に入れられたことにより、自分に自信を持ち堂々とできるようになった。

さあ、どうでしょう。本文・設問がなくても、きっと当てられます。一読して、「あ、分かりやすい」と思ったものが、答えです。

――そう、3番ですね。

学校という「他者」から強制された「狭い」交友関係

「自分」で手に入れた「広い」交友関係

ここには、明確な「対比関係」があります。他の答案例は、対比関係がないか、あってもぼんやりしています。3番の答案には「他者」とは書いていませんが、「学校から」「自分から」という言葉が「ではなく」という対比の文中接続語によってつなげられていることにより、それが「他者」の意味であることが読み手に明確に伝わります。

読み手とは、採点者です。対比関係を見つけたとき、採点者は「あ、この受験生は分かってるな」と思うのです。「分かっている」とは、すなわち「分けられている」ということ。それは、対比の骨組みが整っているということです。これが実は、合格最低点にたどり着くために最も大切な原理原則です。

字数指定のない箱型の解答欄に、とにかく文字を詰め込んで長く書けばいい――そう思っている受験生は多いようです。特に、難関校受験生に多い。とりあえず手はすらすら動くのです。しかし、中身が伴わない。長く書いてから削るのではない。短く書いてから肉づけせよ。

大切なのは短い骨組み。特に、対比的な骨組み。このことさえ意識すれば、合格最低点も近づいてくることでしょう。

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〈書籍情報〉

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著者:福嶋 隆史
発行者:張 士洛
発行所:日本能率協会マネジメントセンター

〈著者プロフィール〉

福嶋 隆史(ふくしま・たかし)
(株)横浜国語研究所・代表取締役
1972年、横浜市生まれ。早稲田大学第二文学部を経て、創価大学教育学部(通信教育部)児童教育学科卒業。日本リメディアル教育学会会員。日本言語技術教育学会会員。日本テスト学会会員。公立小学校教師を経て、2006年、ふくしま国語塾※を創設(※JR横須賀線 東戸塚駅・徒歩2分)。
著書として、『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版〕』『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版ベーシック〕』『ふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集〔小学生版〕』『国語読解[完全攻略]22の鉄則(高校受験[必携]ハンドブック)』(以上、大和出版)、『論理的思考力を鍛える超シンプルトレーニング』(明治図書)などがある。

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