コロナで転職加速!? 会社の将来が不安な時代の転職事情
LIMO / 2021年1月9日 18時0分
コロナで転職加速!? 会社の将来が不安な時代の転職事情
新年を迎えても、感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス。ついに7日、1都3県には緊急事態宣言が再発出されました。今回はウィズコロナ時代の転職事情を昨年(2020年)に発表された各種データから考察してみます。
コロナによる失業や休業の実態は?
まず、“コロナ失業"の概況から。昨年12月発表された厚生労働省の調査では、1月末から12月21日までに解雇や「雇い止め」で仕事を失った人は見込みも含めて7万8153人と、8万人近くに上ることがわかりました。
新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人は、5月21日に1万人を超えた後、8月31日に5万人、11月6日に7万人を超えました。この数字は、ハローワークなどで把握した人数だけのため、仕事を失った人は実際には、さらに多いと考えられます。
失業者数とあわせて注目すべきデータとして休業者数があげられます。総務省の雇用統計では、一昨年の冬は190万人前後を推移していましたが、新型コロナの影響で昨年3月に200万人を超え、4月には過去最多の597万人に急増。
総務省の分析では、急増した休業者のうち、失業したのは2~4%程度としています。5月以降は、経済活動の再開に伴い休業者は減少し、9月の雇用統計では197万人と、ほぼコロナ前の水準に戻りました。
さらに非正規労働者なども勘案すれば、きわめて厳しい雇用情勢が続いた2020年。そのなかでの、転職意識の変化をみていきましょう。
転職希望「新型コロナがキッカケ」は12%
大手・人材紹介会社のエンワールド・ジャパンが、同社のサービス登録者への「新型コロナ禍における転職のきっかけ調査」を昨年11月に発表しました。
調査対象は、外資系企業や日系グローバル企業の正社員かつ、年収800万円以上の1004人。ちなみに国税庁「民間給与実態統計調査」(2018年)によると、年収800万円以上の人は487万人で全体の9.8% 。いわゆるハイクラス層といえると思います。
調査結果から抜粋すると、「1カ月~1年以内に転職したい」または「良い条件の仕事があればいつでも転職を検討したい」と回答した人のうち、新型コロナの流行をきっかけに転職を検討し始めたのは全体の12%。
また、新型コロナをきっかけに転職を検討した人の転職希望時期は「1~3カ月以内」が45%となり、新型コロナ流行前から転職を検討していた人(21%)を大きく上回るという傾向を示しました。
他に特徴としてあげられるのは、新型コロナをきっかけとした転職検討者の動機で「会社の将来への不安」が46%と半数近くを占めたこと。
これに対し、新型コロナの流行前からの転職検討者の理由第1位は「キャリアアップ」が54%。また、「転職で不安に感じること」第1位は「現在の年齢」で、これは新型コロナの影響は関係なく最多で、特に40代以上では年齢を不安視している人が多数を占めていました。
さらに、回答で大きな差が表れたのが「転職で実現したいこと」。新型コロナ流行以降の転職検討者のうち、「業績の伸びている企業で働きたい」と回答したのは34%で、コロナ流行前から転職を検討している人より13ポイント高い数値を示しました。
ハイクラス人材層においても、所属企業への評価はシビアとなり、より将来性に確信を持てる成長企業を積極的に探していることが分かります。
将来への不安が増す中、柔軟な働き方が人気に
もう少し幅広い層への調査結果をみてみましょう。以下は、日経HRが昨年7・8月期に実施した「ウィズコロナ時代の転職意識調査」からの抜粋です(有効回答数735人)。
コロナ禍を経験して転職への関心について変化があったかについては「非常に高まった」が35%、「少し高まった」が22%であわせて約6割。
年代別で見ると、20代(61%)と40代(62%)が、30代と50代(ともに54%)を上回っています。また、「非常に低くなった」(1%)、「少し低くなった」(5%)は合計しても1割に満たない結果となりました。
転職意向の理由としては、現在の会社・業界の将来への不安のほか、在宅勤務ができない、働き方改革の速度が遅かったりなどの会社への不満が多数。「リモートワークできる会社に転職したい」や「多様な働き方ができる職場に魅力を感じる」など、柔軟な働き方を希望する意見が目立ちました。
週休3日制と副業・兼業の促進
最後に「週休3日制」と「副業・兼業促進」を取り上げます。経団連の「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」でも、さまざまな勤務形態の一環として週休3日制を取り上げています(2020年5月)。
10月には、みずほフィナンシャルグループが希望社員を対象に、週休3~4日制導入のニュースが報じられました。実際には週休3日制を実施する企業も、コロナ禍の緊急対応や今後の労働市場を見据えての導入など、その背景はさまざまです。
また、この週休3日制の議論とあわせて、副業・兼業を促進する動向の加速も重要なポイントだと考えられます。2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しています。
「終身雇用はもう守れない」と経団連の中西会長が発言したのが2019年。日本でも本格的な労働市場の流動化が目前に迫り、その流れをコロナ禍がさらに加速させるのではないかとも考えられます。
最新の調査では、転職希望者のうち、8割強が副業に前向きというデータもでています。たとえば将来的には、副業や兼業をステップにして転職する、そんなキャリアパスも生れてくるかもしれません。厳しい雇用情勢のなかで加速する転職志向。2021年、あなたはどうしますか。
参考資料
「年収800万円以上 正社員の新型コロナ禍における転職のきっかけ調査(https://www.enworld.com/blog/2020/11/survey-20201104)」(エンワールド・ジャパン株式会社)
「ウィズコロナ時代の転職意識調査(https://www.nikkeihr.co.jp/news/2020/0904361.html)」(株式会社 日経HR)
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