大学消滅時代に突入か。私大の3割が定員割れ、4割が”営業赤字”
LIMO / 2021年1月15日 7時50分
大学消滅時代に突入か。私大の3割が定員割れ、4割が”営業赤字”
いよいよ大学受験シーズンの到来です。その皮切りとなる2021年の大学入学共通テストはもう間もなく、1月16日(土)と17日(日)に実施されます。大学入学共通テストは、昨年までは「大学入試センター試験」と称されていました。
右往左往の末に導入された大学入学共通テスト
本来なら、英語での民間試験の活用や、国語・数学での記述問題が導入される予定でしたが、それらは全て延期になっています。とりわけ、英語の民間試験導入先送りの決定には文科省の右往左往が如実に表れており、多くの受験生に混乱をもたらしたのではないでしょうか。
しかし、コロナ禍での受験となる今回は、民間試験先送りどころの騒ぎでないのはご承知の通りです。ここに来て首都圏に緊急事態宣言が再発出され、来週早々には京阪圏でも発出が見込まれており、“本当に試験は無事に行われるのだろうか?”という不安を抱えている受験生も少なくないでしょう。
それでも、受験生は目前に迫った大学入学共通テストに向けて粛々と準備をするしかありません。年明け以降、スタバやドトールなどの喫茶店でラストスパートに集中する受験生を多く目にする機会が増えましたが、必死の形相となっている人も散見されます。
こうした店舗では「密」を回避する様々な施策が取られていますが、それでも、長時間の滞在はリスクが高いと言わざるを得ません。残り1週間ですから、コロナ感染予防を含めた体調管理には細心の注意を払ってほしいと思います。
ところで、受験生が入学を目指す大学のほとんどが少子化の影響を受けています。そんな中、大学の経営状況がどうなっているのか見てみましょう。
私立大学の3分の1が定員割れ
文部科学省が発表する「私立学校の経営状況について(概要)」によれば、入学者数の減少が顕著であることが見て取れます。
入学定員に対する入学者数の割合(以下「入学定員充足率」)を見てみましょう。これが100%超となった(つまり、定員割れしていない)大学の割合は、平成8年度の96.2%に対して、昨年(令和元年度)は67.0%へと大幅に低下しています。私立大学の3分の1は定員割れしているのが現状です。
今度は、入学定員充足率のハードルを80%に下げてみます。これは、文科省が入学定員の8割入学を1つの判断基準にしているからです。“定員の8割確保できればよし”ということでしょうか。すると、平成8年度は99.3%とほぼ全校が満たしたのに対して、令和元年度は91.3%に低下しました。
これは、全体の約9%の私立大学で、入学定員に▲20%以上の欠員が生じたことを意味します。
”見た目”の入学定員充足率改善のカラクリ
一方で、前述した入学定員充足率(100%、80%超)は、年々徐々に改善しています。昨年度(平成30年度)との比較で見ても、100%超が+3.1ポイント改善(63.9%→67.0%)、80%超が+2.5ポイント改善(88.8%→91.3%)となりました。
ちなみに、入学試験時にリーマンショックの直撃を受けた平成20年度は、100%超が52.9%、80%超が72.7%でしたから、ボトムから見れば直近10年間で大幅な改善を遂げたと言えましょう。
確かに、改善したことは喜ぶべきことです。しかし、その背景には、各校が年を追うごとに定員数を減らしており、また、合格基準のハードルを下げた可能性があることは見逃せません。
私立大学の約4割が“営業赤字”という厳しい収益状況
次に、私立大学の収支状況を見てみましょう。ここでは、帰属収入(納入学費、寄付金、補助金等)から支出(人件費、教育研究費、減価償却費などほぼ全ての費用)を差し引いた「帰属収支差額」が重要です。これは、一般企業(金融を除く)の“営業利益”に近いものと考えていいでしょう。
この帰属収支差額がマイナスの大学、つまり、運営費用を学費収入等で賄えない大学は、平成4年度の52校(全体に占める割合13.8%)に対して、その25年後の平成29年度は235校(同39.5%)へと増加しています。全体の約4割超が“営業赤字”という状況です。
また、帰属収支額に対する割合(=帰属収支差額比率、全学合計)は、同じく19.5%から3.6%へ大幅に悪化しました。一般事業会社に例えれば、営業利益率が25年間で19.5%から3.6%へと大幅悪化したということです。まだ公表されていない平成30年度以降も悪化傾向が続いている可能性もあります。
ピーク時の3分の1が消滅した短期大学
ここまで論じてきた私立大学の対象は4年制大学です。実は、短期大学になると、さらに厳しい現状を見ることができます。
平成30年度(以下同)に80%超の入学定員充足率を確保している短大は60.6%となっており、短大全体の約4割が▲20%超の定員割れです。また、「帰属収支差額」がマイナスの比率は60.3%に上っており、約6割の短大が“営業赤字”なのです。
短期大学の存在価値が問われていると言ってもいいでしょう。実際、短期大学(私立)の校数は、平成7年度の500校から、平成27年度には既に320校へと激減しています。実に、20年間でピーク時の3分の1が消滅しました。同じような動きが今後、4年制大学にも波及するのは必至なのかもしれません。
大学の質を低下させないためには統合化の促進が効果的か
実際、今週末の大学入学共通テストの志願者数は、初の3年連続減少となりました(注:大学入試センター試験導入以降のデータに基づく)。この傾向が来年以降も続くなら、仮に、大学側が入試合格ラインをもう一段引き下げても、入学者数がいっそう減少することは不可避と言われています。
そもそも、大学は専門性の高い学問の学び舎であるはずです。大学の経営維持を重視するあまり、大学の質を低下させては本末転倒と言えましょう。文部科学省は、大学の統合促進など、早急な施策を講じる必要があります。いや、実は、もう手遅れの段階にあるのかもしれないのです。
こんな暗い話をしてから言うのも不謹慎かもしれませんが、何はともあれ、受験生の健闘を祈ります。くれぐれもコロナ感染にはご注意ください。
参考資料
「私立学校の経営状況について(概要)(https://www.mext.go.jp/content/20200124-mxt_sigsanji-1411620_00002_09.pdf)」(文部科学省)
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