倒産件数は過去最多。福祉・介護業界とコロナ禍
LIMO / 2021年1月13日 9時0分
![倒産件数は過去最多。福祉・介護業界とコロナ禍](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_21365_0-small.jpg)
倒産件数は過去最多。福祉・介護業界とコロナ禍
東京商工リサーチの調査結果によると、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は、118件となり、過去最多を更新する結果となりました。(※1(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200108_00.html))
休廃業・解散も2019年より増加し、「老人福祉・介護事業」は、大きな局面を迎えているといえるでしょう。
このような状況は、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行も大いに関係していると考えられ、2021年も続く可能性があります。
そこで本記事では、同調査結果などをもとに、介護事業所の倒産・休廃業件数や、事業所の種別、そして現状(背景)などを紐解いていきます。
※1 東京商工リサーチ「2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200108_00.html)」
「倒産」の多くが、訪問・通所系、零細事業者
介護事業者のなかで、とくに倒産が増えているのは、訪問介護事業や通所・短期入所介護事業です。
「老人福祉・介護事業」の倒産のうち、訪問介護事業が47.4%を占める56件、通所・短期入所介護事業が32.2%を占める38件となっています。
また、従業員5人未満が66.9%にも及ぶ79件、負債1億円未満が79.6%にも及ぶ94件となり、小・零細事業者に打撃が及んでいることが判明しました。
「休廃業・解散」も前年より増加
2020年の1月から10月の間で、「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散件数は、前年を2.7%上回る結果となりました。
細かく数字をみていくと、2019年の年間を通した休廃業・解散件数は、395件となっています。これに対して、2020年は10月時点で、406件とすでに前年を上回る件数となったのです。
過去最多件数となった2018年は、445件でしたが、2020年は11月・12月を統計に含めると、過去最多を更新し、年間600件ほどまでになることも推測されます。
福祉・介護業界の悲鳴と、その背景
ここからは、なぜ「老人福祉・介護事業」の倒産や休廃業・解散件数が増加しているのかを、見ていきましょう。
①他事業所との競争や人手不足など
現在、介護事業所は他社との競争を強いられる形となっています。
さまざまな介護事業所が存在し、利用者や家族が好きな事業所を選べるため、他社との違いを明確化したり、初期費用などの金額面で差をつけたりと、工夫をしなければなりません。
そのうえ、人手不足などの問題もあり、経営者は頭を悩ますことも多いはずです。
他社との競争や人材確保がうまくいかなければ、経営が困難となり、倒産や休廃業に追い込まれる事業所も少なくないでしょう。
②コロナ禍における、収支状況の悪化
ここからは、厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689854.pdf)」(※2(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689854.pdf))をもとに、COVID-19流行前と後の収支状況などにフォーカスしていきます。
<流行前と比較して収支の状況が悪くなった事業所>
5月…47.5%
10月…32.7%
<流行前と比較して支出が増えているとした事業所>
5月…54.7%
10月…53.3%
調査結果をみてみると、新型コロナウイルスの流行によって、収支の状況が悪化したり、支出が増えていたりする事業所が、5割前後いることがわかりました。
収支の状況悪化や支出の増加は、経営者にとって大きな問題です。金銭的な課題が生じれば、経営難に陥り、倒産や休廃業をせざるを得ないでしょう。
③衛生用品等の費用増加
では、先述の厚生労働省の調査で、「増加している」と答えた事業所が最も多かった項目について見ていきます。
<衛生用品に係る費用が増加した事業所>
5月…79.2%
10月…74.5%
5月・10月ともに、衛生用品等に係る費用が増加した事業所は7割を超え、多くの事業所に影響が出ていることがわかります。
普段の介護業務でも使用するゴム手袋などに加え、マスクや消毒液・防護服など、感染対策をするうえで、欠かせないものが増えたためと考えられます。
とくに介護は、複数の人と接触するにあたり、こまめにゴム手袋などを交換する必要があります。必然的に、衛生用品等に係る費用は増加するでしょう。
④介護サービスの利用を控える傾向
COVID-19の流行によって、介護サービスの利用を控える人も増えました。倒産件数などをみても、とくに訪問・通所系で利用控えが顕著だといえるでしょう。
入所している利用者と違い、訪問・通所系は、在宅で家族やヘルパーの手を借りながら過ごせる人がほとんどです。要介護度が低い人も多く、家にヘルパーを入れる回数や、人と接する機会を減らしたいと考えた家庭が多かったと考えられます。
また、事業所側が、接触頻度を減らすために訪問回数を減らす、「密」を避けるため利用者の受け入れ人数を制限する、などの対応に追われたことも要因として考えられます。
長期化するコロナ禍
COVID-19の感染拡大が長期化していることも、倒産や休廃業の大きな要因だといえるでしょう。
コロナ禍で、サービス継続支援のための助成金交付などは実施されています。
しかし、感染拡大の長期化により経営の維持や持ち直しが困難になったり、経営意欲の減退につながったりと、倒産や休廃業に追い込まれる事業所も少なからずありました。
小・零細事業者はとくに、長期化の影響を受けたといえるでしょう。
さいごに
COVID-19の猛威は、いまだとどまるところを知りません。
収束までの時間が長引けば長引くほど、「老人福祉・介護事業」の業界には、大きな負担がかかるでしょう。
しかし、介護サービスは、我々の生活には欠かせないライフラインです。超高齢社会である現在、その需要は年々高まっています。
「老人福祉・介護事業」が安定を保ちながら継続していくためにも、事業所(者)への支援金や助成金の追加(公費による支援)などが必要です。
今後、政府がどのような対策を実施していくのか、注目していきたいところです。
参考資料
※1 東京商工リサーチ「「老人福祉・介護事業」の倒産状況(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200108_00.html)」
※2 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689854.pdf)」
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
人材不足なのに報酬減額 訪問介護現場で悲鳴「実態見ていない」「もう限界」
産経ニュース / 2024年7月17日 11時0分
-
介護・障害福祉事業者向け経営支援サービス「カイポケ」が事業拡大により京都事業所を開設。充実したオンラインサポートやスキマ時間を活用した電話相談に加え、担当者訪問による導入支援・操作説明を強化
PR TIMES / 2024年7月10日 17時45分
-
【オリックス】基礎くい打ち工事会社「サンシャ」の株式を取得
Digital PR Platform / 2024年7月4日 11時12分
-
障害者施設、倒産・廃業が急増 過去最多22年度は4割が「赤字」 事業者増で競争激化
PR TIMES / 2024年6月29日 14時40分
-
「放漫経営」による倒産が急増、過去10年で最悪に 「好況期に増える」の定説がコロナ禍で一変
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月26日 5時10分
ランキング
-
1イタリア人が営む「老舗ラーメン店」の人生ドラマ 西武柳沢「一八亭」ジャンニさんと愛妻のこれまで
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 11時30分
-
2なぜユニクロは「着なくなった服」を集めるのか…「服屋として何ができるのか」柳井正氏がたどり着いた答え
プレジデントオンライン / 2024年7月22日 9時15分
-
3円安は終わり?円高反転4つの理由。どうなる日経平均?
トウシル / 2024年7月22日 8時0分
-
4ウィンドウズ障害、影響続き世界全体で2600便欠航…損害は1600億円を超えるとの見方も
読売新聞 / 2024年7月22日 11時16分
-
5「土用の丑の日」物価高でも…あの手この手の“うなぎ商戦” 大手スーパーの目玉は「超特大」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 19時59分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)