14日間で約23万円。コロナ隔離施設滞在費が有料化された理由
LIMO / 2021年1月26日 19時5分
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14日間で約23万円。コロナ隔離施設滞在費が有料化された理由
ニュージーランドの隔離政策
「日本に一時帰国したいなぁ」
これはニュージーランドで暮らす日本人が集まると、必ず誰かがため息と共にこぼす言葉です。年末年始は日本独特の雰囲気が味わえるので、海外で暮らす日本人にとって、ことに日本が恋しくなる時期なのです。
コロナ対策で国境が依然として封鎖中とはいえ、ニュージーランド人や在住者であれば、出入国は可能。日本人でも同条件に合えば、ニュージーランドを出て日本を訪れ、また入国できます。それなのに、愚痴をこぼしつつ一時帰国を我慢する在住の日本人たち。これには理由があるのです。
高額な隔離施設滞在費、一体いくら?
ニュージーランドでは、入国者は誰でも政府管理の施設で14日間の隔離をしなくてはなりません。施設の多くは通常であれば観光客やビジネス客が滞在するホテルです。
基本的にこの隔離のための施設滞在費は1人何と3100NZドル(約23万円)。2人で部屋をシェアする場合、2人目が大人であれば950NZドル(約7万円)、3~17歳の子どもであれば475NZドル(約3万5000円)が追加になります。
同じ海外に出てニュージーランドに戻ってくるのでも、隔離施設滞在費を個人が負担しなくてはいけないケースと、負担しなくていいケースがあります。その決定の際には、当事者の出国のタイミング、入国後の滞在期間などが関わってきます。また出国目的も判断材料になります。
訪問国で重病・危篤の家族や親族を見舞うなどの場合には、温情措置を受けることができ、費用は免除になります。免除の申請には、所定の書類を企業・技術革新・雇用省(MBIE)に提出し、審査を受けます。
一方で、「母国に一時帰国したい」「海外旅行がしたい」というのは個人の希望に過ぎないので、費用は自己負担しなくてはなりません。筆者や周囲の在住日本人の出国目的はまさにこれ。高額な費用を払わなくてはならないので、二の足を踏んでいるというわけなのです。
遊んで帰国する人が費用を払わないのは不当
各帰国者の隔離施設滞在費は3月19日の国境封鎖開始日から政府が支払っていました。ニュージーランド人・在住者にとって、自国や普段自分が住む国に戻るというのは当然の権利だからです。
しかし政府のこの配慮に反対する人が出始めました。帰国する人の中には、海外に遊びに行った人も含まれています。なぜ個人の希望で出国した人の費用も血税でカバーするのかというのが、反対者の言い分です。
そこで費用を当事者が支払うシステムが8月11日から始まったのです。政府が3月19日からシステム導入の少し前、6月末までに負担した額は、8000万NZドル(約60億円)に上ります。さらに2020年末までの分として約4億2000万NZドル(約314億円)を用意していました。
10月頭にMBIEが発表したところでは、個人が費用を負担しなくてはならないのは559件でした。そのうち実際支払ったのはわずか23件分に留まったそうです。
航空券があっても、バウチャーなくしては入国不可
政府は10月5日にはこのシステムをさらにバージョンアップ。政府管理の隔離施設に入るためのバウチャーを発行するというのです。
ニュージーランドに帰国する予定がある場合、まずは管理隔離全般の情報を包括するマネージド・アイソレーション・アンド・クァランタイン(MIQ)のウェブサイトに行き、オンラインで「管理隔離施設のバウチャー」(入所許可)を購入し、予約をせよというわけです。
これであれば、支払うべき人全員から費用を回収できます。重病・危篤の家族や親族を見舞ったり、亡くなった際の葬儀に出席したりというケースには、やはり費用免除が適用されます。
バウチャー制度導入後は、たとえ航空券があっても、バウチャーがなければ搭乗を拒否される仕組みになっています。やや厳しいようですが、コロナをニュージーランド国境で食い止めようという意図があるため、仕方がなさそうです。
それでも、ロックダウンを乗り切り、やっと自国ニュージーランドに戻れる段になった人にとって、この制度の導入は酷でした。クリスマスや新年を控えていたからです。特にクリスマスは、毎年海外在住のニュージーランド人たちが家族に会いに、こぞって帰国する時期です。ですが政府管理の隔離施設にはたった4500室が用意されているだけです。
そこでネット上で販売が行われるバウチャーをめぐり、争奪戦が繰り広げられました。何時間もコンピュータとにらめっこし、何回も更新ボタンを押して空きが出ないかを確認する人が続出し、コロナのストレスに拍車をかけたといいます。そこまでしても入手できず、泣く泣く帰国を諦めた人が何人も出ました。
バウチャー争奪戦は愛国心の現れ?
一国の国籍保持者や在住者がその国に戻れるのは当然の権利と考えられています。だからこそ最初は政府が全帰国者の隔離費用を負担していたのです。しかし結局のところ、8月に始まったシステムも、バウチャー制度も、人々の「自分の国・住む国に戻る」権利を妨げているではないかと、政府は突き上げられました。
2021年1月も半ばを過ぎた今、帰国しようという人の数は少し落ち着いてきました。1月11日のテレビニュース、「ワンニュース」が報じたところでは、隔離施設の部屋数4500のうち予約が入っているのは約4300と、確保されている部屋数を下回っていることがわかっています。
しかし2月のある1日のバウチャー購入希望者数は部屋数を上回っているそうです。バウチャーの争奪戦は今後も時折勃発することになるようです。
並々ならぬ苦労をしてバウチャーを手に入れ、3100NZドル(約23万円)という高額な費用を支払い、入国直後に14日間も隔離施設で缶詰になるーー理由は何であれ、そこまでしてニュージーランドに戻ってこようという人たち。「3100NZドル(約23万円)が高い」と、指をくわえて日本に一時帰国しない私たちは、愛国心に欠けているのかもしれません。
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