気遣いは得意なのにコミュニケーション力が低い「惜しい人」の特徴
LIMO / 2021年1月23日 19時35分
気遣いは得意なのにコミュニケーション力が低い「惜しい人」の特徴
オンライン時代のコミュニケーション術
Zoomなどを使ったオンラインコミュニケーションが格段に増えた一方、「対面の時のように会議が進まない」「うまくプレゼンできない」「営業成績が落ちてしまった……」など、課題を感じる声もあります。
書籍『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』の著者でコミュニケーション・人材育成講師の桑野麻衣氏は、「オンラインコミュニケーションの難しさには、日本特有の文化が影響しているかもしれません」と指摘しています。オンラインでもスムーズにコミュニケーションをとるために必要な心構えとは?
コミュニケーションとは「ココロ」を「カタチ」にすること
「コミュニケーション」という言葉の定義をはじめにしておきましょう。定義は人それぞれですが、私はコミュニケーションとは「ココロ」を「カタチ」にすることだと定義しています。コミュニケーション力というのは、「ココロをカタチにする力」であり、「表現力」とも言えます。決して生まれつきコミュニケーション力の高低が決まっているのではなく、誰もがいつからでも磨くことのできるスキルなのです。
「表現すること」はオンラインかオフラインかにかかわらず大切ですが、オンラインでは特に強く「表現すること」が求められます。対面でのコミュニケーションでは五感を使って表現できますが、オンライン上では基本的に視覚と聴覚の二感(以下)に限られた表現になります。そのため、対面であれば相手にスムーズに伝わるものも、オンラインになるとどうしても伝わりにくくなってしまうのです。
私たち日本人が得意とする、「察すること」や「空気を読むこと」がオンラインでは困難になるため、普段は持ってしまいがちな「多くを語らずとも、相手に察してほしい」という気持ちをいったん捨てる必要があるでしょう。ぜひ、これを機に「ココロ」を「カタチ」にでき、「表現できる」ビジネスパーソンが増えると良いなと個人的には思っています。
行動、表情、言葉遣い…「カタチ」にしないと伝わらない
ここでは、「ココロ」を「カタチ」にするということがどんなことか、もう少し掘り下げてみましょう。
人は誰もが感情を持ち、目の前の相手に対して感謝や申し訳ないという「ココロ」があります。しかし、私たち日本人の中にはそれを「カタチ」として表現することが苦手な人が多いのです。感謝しているのに笑顔ではなく無表情であったり、申し訳ないと思っているのにぶっきらぼうに「あ、すいません」と軽く頭を下げるだけであったり。あなたもそのような態度を他人に取られた経験はないでしょうか。
多くの場合、表情や話し方、言葉遣いといった「カタチ」が表現されていなければ、そもそも「ココロ」がないとみなされてしまいます。これは、普段の職場で考えるとよくわかるでしょう。やる気があるという「ココロ」をアピールすべきなのに、いつも遅刻をして、1日中ぼーっとしていて、誰よりも早く帰る社員がいたとしましょう。やる気がありそうな「カタチ」がどこにも表現されていなければ、「ココロ」そのものもないものとされてしまいますよね。コミュニケーションも同じなのです。
なぜ? ホスピタリティ豊かでもコミュニケーションに悩む日本人
数年前、フィリピンのセブ島にてコミュニケーションに関する講演をする機会をいただきました。その際、改めて日本人のコミュニケーション力を見つめ直すきっかけがあったのです。
日本は「おもてなしの国」「ホスピタリティあふれる国」として世界に知られています。日本人の礼儀正しさやきめ細やかな心遣いが賞賛されることも多くあります。しかし、「コミュニケーション力が高い国」という印象は世界からあまり持たれておらず、私たち自身も「日本人はコミュニケーション力が高い」という認識は持っていない人が多いのが現状です。
それに対して、2012年にワシントン・ポストの記事で取り上げられた、世界150ヶ国の国と地域で感情分析をした調査結果では、「世界一笑顔が多く感情表現が豊かな国(コミュニケーションが豊かな国)」はフィリピンなのだそうです。
この調査がどのくらい妥当かには意見もあるかもしれませんが、日本がホスピタリティ溢れる国であるのに、コミュニケーション力が高い国とは言われないという矛盾に、私は疑問を持つようになりました。「ココロ」は繊細で豊かな人が多いのに、「カタチ」にすることが苦手で、コミュニケーションや人間関係に悩む人が多くいることに気がついたのです。
「察する」「空気を読む」文化の弊害
これはあくまで私の持論にすぎませんが、日本人には「察する」「空気を読む」という古き良き文化があり、表現しないことが美徳とされるところが影響を及ぼしているように思えるのです。たとえば、小さい時から母親が大事な日の前日には好物を作ってくれたり、父親が忘れ物をしないように玄関先に必要な物を置いておいてくれたり……。
つまり、一番身近に「察知力のプロ」がいたわけです。すると知らず知らずのうちに、「自分から何かを言わなくても相手は気がついてくれる、理解してくれる」とどこか甘えてしまうところがあるのではないでしょうか。
もちろん相手が何を思っているのか、察しようとすること自体は悪くありません。ただ、相手はあくまで「赤の他人」であり、少ない情報の中から勝手に思い込み、決めつけてしまうことでコミュニケーションに支障をきたしては本末転倒です。闇雲に察しようとすることよりも、相手が何を伝えようとしているのかを理解しようと歩み寄り、「このように理解しましたが、この認識で合っていますか?」と勇気を持って尋ねる(表現する)ことのほうが大切なのです。
オンラインが増えた今こそ「表現する」チカラを身につけよう!
察する力は敏感なのに表現する力が乏しければ、コミュニケーションのストレスや人間関係のトラブルが多くなるのは当然です。
ぜひ、このオンラインとオフラインのコミュニケーションが共存する今だからこそ、私たち日本人が苦手としてきた「ココロ」を「カタチ」にする、「表現する」コミュニケーション力を磨いてほしいと思います。そうすることで「職場」など他者との関わりの中で悩むことが減り、自分らしく生きやすくなるはずです。たとえば、
・表情が伝わるようにアップめで映る
・「上から目線」にならないよう、目線が水平になるようにカメラやパソコンの位置を調節する
・うなずきなどの身振りを大きくする
など、まずはすぐに取り入れられるものから始めてみるのもおすすめです。
ぜひ皆さんも一緒に、ホスピタリティに溢れ、コミュニケーション力も高い国を目指していきましょう。
■ 桑野 麻衣(くわの・まい)
学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、最重要顧客DIAMOND会員専用カウンターのサービス責任者、教育訓練インストラクターなどを務め、7年間で100万人以上を超えるお客様サービスに携わる。オリエンタルランドへの出向、ジャパネットたかた、再春館製薬所グループ企業を経て独立。コミュニケーション、リーダーシップ、接遇マナー等のテーマで企業研修や講演を行い、これまでの受講者は3万人を超える。著書『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』のほか、PRESIDENT、MORE、CLASSY、Oggi、美人百花などメディアへの寄稿・出演も多数。
(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295404640/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295404640&linkCode=as2&tag=cmpubliscojp-22&linkId=f98395b22e49f078b660a426fda3105c)
桑野氏の著書:
『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方(https://amzn.to/35QnzEo)』
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