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株初心者に増える「少額取引」、メリットだけではない理由

LIMO / 2021年1月29日 11時35分

株初心者に増える「少額取引」、メリットだけではない理由

株初心者に増える「少額取引」、メリットだけではない理由

1株から取引出来るオンラインサービスを提供する証券会社が増えています。また、手数料が引き下げられたこともあり若者を中心に人気を集め、特に2020年はコロナ禍で口座開設が急増しました。

個別株は通常100株が取引単位です。まとまった資金がないと株式投資はなかなか手の届かない存在でした。しかし、制限はあるにしてもこうした少額取引や手数料の低下によって、誰もが株式投資が可能になりました。株式投資の「民衆化」ともいえます。

しかし、どんなことにも短所長所があるように、オンラインの少額取引にも負の面があります。どのような落とし穴があるのか、専門家のアドバイスを参考に考えてみます。

コロナ禍でオンライン証券口座開設者急増

日本総研が2020年12月にまとめた調査(※1)(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/12277.pdf)によるとオンライン証券口座開設数は2020年1~3月以降大幅に増加しています。しかも、年齢別株主分布状況では2020年3月以降30代以下が増えていることが分かりました。

この背景には、①外出自粛等による消費減少と特別定額給付金等による可処分所得増加を背景とした資金余剰、②春先の大幅株安による割安感とその後の株価上昇期待、③オンライン投資による手続き簡素化と手数料引き下げによる投資へのハードル低下、④老後の生活不安の強まり、等があると考えられる」としています。

特に、若年層にとっては「親友」のようなスマートフォン(スマホ)のアプリを使って簡単に操作できることが親近感を与えているのではないでしょうか。しかも1株からの少額取引が可能、取引や口座管理手数料が手頃または無料という要因は株式投資を気軽な存在にしているようです。

スマホを使った若者の少額取引ブームはアメリカでも同様です。特に投資アプリ「ロビンフッド」は手数料が一切無料、1ドルから端株(1株未満)を購入できるので大人気です。以前の記事(※2)(https://limo.media/articles/-/19249?page=3)でも触れましたが、2020年はこのような若い少額の新投資家たちが、意外な銘柄選択をしてはベテラン投資家の予想を狂わせたと話題になりました。

分散は場合によっては危険?

しかし、スマホアプリを利用した少額取引でギャンブル依存症になる可能性があると懸念する声も上がっています。

ウォール・ストリート・ジャーナル(※3)(https://jp.wsj.com/articles/SB11236499840805234501604587171990704023060)によれば、米ニューヨーク大学の人類学教授で、『Addiction by Design: Machine Gambling in Las Vegas(邦題:「デザインされたギャンブル依存症」)』の著者であるナターシャ・シュール博士は少額取引について、「一度に何十という銘柄を1ドルずつ保有することができるため、投資をやめられなくなる可能性がある」と指摘しています。

最近のスロットマシンは一回のプレイで幾通りもの当たり方や配当パターンがあります。何かしらのパターンで当たっていると、全体的には損をしていても気付かず長時間プレイを繰り返し、資金を徐々に枯渇させてしまう、とシュール博士は説明します。つまり、少額の分散保有にこのスロットマシンのワナに似た危険が潜んでいるという主張です。

それに対して、「多くの小口ポジションを保有すると、ポートフォリオの損失に気付かないと指摘するのは、分散投資に反対するようなもの」とロビンフッドの製品管理担当シニアディレクターのマドゥ・ムトゥクマール氏は反論しています。

一般的に分散投資はリスク軽減の基本といわれています。しかしそれは経験則を参考に熟慮した有効な分散、運用をしている場合です。知識や経験の浅い投資家が、目先の数字だけで闇雲に複数の銘柄を繰り返し投機することを分散投資といえるのでしょうか。ただ、全体像をつかみづらくしているだけかもしれません。

2020年12月、ロビンフッドは米マサチューセッツ州の証券規制当局に、経験の浅い投資家を適切に保護していないということで提訴されました。ロビンフッドのアプリはゲーム化したサービスで若年層を刺激し、頻繁に取引させるようデザインされていて「依存性が高い」と問題視されていました。若い顧客が損失の勘違いから自殺、という悲しい事件も引き起こしてしまいました。

まずは長期投資のコアをもつこと

少額取引で株式投資が民衆化されるの好ましいことです。しかし、上手く運用しなければ意味がありません。数字に踊らされ短期的な投機を繰り返すことよりも、少額ならば安定したファンドに長期的に積み立てて行くことが資産形成に有効だと多くの専門家は勧めています。

米ラジオキャストで個人ファイナンスに関する消費者アドバイスの専門家として人気のクラーク・ハワード氏は、端株だろうが単元株だろうが、個別株投資を始める前に、まずは先にインデックスファンド投資で長期的なコアの形成を始めた方がいいと話します(※4)(https://clark.com/personal-finance-credit/investing-retirement/fractional-shares/)。

今後ますます少額取引用の金融商品やアプリが増えそうです。アメリカのロビンフッドのようなゲーム感覚で顧客を刺激するアプリや、手数料が曖昧なファンドなどには注意が必要です。少額であろうが、始める前には銘柄の理解や慎重な判断が長期的な差を生むのではないでしょうか。

参考資料

(※1)日本総研「コロナ禍で盛り上がるオンライン投資の定着に向けて ~若年層を「投資から資産形成へ」導く施策を考える~」(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/12277.pdf)

(※2)美紀 ブライト「ベテラン投資家もビックリ!米株式市場をにぎわす「ミレニアルズ投資家」の予想外な行動」LIMO(https://limo.media/articles/-/19249?page=3)

(※3)THE WALL STREET JOURNAL 『「テスラ株1ドル分下さい」端株取引の一長一短』(https://jp.wsj.com/articles/SB11236499840805234501604587171990704023060)

(※4)Clark “4 Things to Know Before You Buy Fractional Shares”(https://clark.com/personal-finance-credit/investing-retirement/fractional-shares/)

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