消えるデパートと生き残るデパート、その違いは
LIMO / 2021年2月6日 11時30分
![消えるデパートと生き残るデパート、その違いは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_21725_0-small.jpg)
消えるデパートと生き残るデパート、その違いは
日本もそうですが、アメリカではデパートや小売店の衰退がコロナパンデミック以前から顕著となり、コロナ禍で拍車が掛かりました。その理由としてオンラインショップの存在が挙げられます。確かにAmazon(アマゾン)のような超大手eコマースの影響は大きいです。しかし理由はそれだけではないようです。
古き良き時代のデパートの没落の背景と、最近話題の新時代のデパートの姿とは?
デパートが消えていく…!
20世紀のアメリカでは増加する中間所得層をターゲットに、”Macy's”(メイシーズ)のような庶民向けのデパートが「アメリカンドリーム」をイメージする物品を提供することで人気を集めるようになりました。
かつては富裕層しか持てなかった物品が、大量生産によって値段が下がり、このようなデパートを通して中間層にも手が届くようになったのです。
しかしここ20年間、庶民向けのデパートだけでなく、高級デパートですら経営難で閉店を強いられ、それに伴い郊外のモールが次々閉鎖されています。
中間層の縮小が影響?
ニュース解説メディアVox-recodeの“The death of the department store and the American middle class”(アメリカのデパートと中間層の没落)という記事(※1)(https://www.vox.com/recode/21717536/department-store-middle-class-amazon-online-shopping-covid-19)では、衰退の理由の1つに、中間層が縮小している事を挙げています。2007年の経済危機以降、所得の成長は高所得者に向けられ格差が広がり中間層が縮小しています。
そして中間層以下の消費者は、デパートで定価で買うよりも少しでも安く買えるアウトレットや”T.J.Maxx”(TJマックス)などのブランド品をディスカウント価格で提供する店で掘り出しモノを見つける消費スタイルを好んでいます。
日本でも百貨店の売り上げが落ちる一方で、ワークマンのような庶民向けの手頃な値段で実用的なモノを販売する小売店が売り上げを延ばしています。
消費者の世代交代…「D2C」が人気
また、主要購買層がデジタル世代といわれるミレニアルズやZ世代に世代交代していることも大きく影響しているようです。
最近はブランド各社が自社のサイトやSNSのプラットフォームを通し新商品を紹介したり、トレンド商品を直接顧客に販売するD2C(Direct-to-Consumer)というリテールを通さない販売モデルが若者を中心に人気を集めています。
かつて、デパートは最新の商品を紹介する唯一の場所でもありました。買わずとも目新しいモノを見ようとやってくる人達でデパートは賑わいました。今は、わざわざデパートに足を運ばなくても手元のスマートフォンで新商品の情報や評判を簡単に集めることができ、タップするだけで注文、数日後には手元に届いてしまいます。
老舗デパートの努力は?
また上述の記事では、デパートの「商品の差別化」や「eコマース戦略への投資が少ない」ことも指摘しています。
特に、デパートのオンラインショップのポリシーには配慮が足りないことは筆者も実感しています。例えば、送料無料にする設定金額。購入価格計50ドル以上と設定されるよりも、アマゾンのようにプライム会員でなくても25ドル程度から送料無料にするほうが消費者としては買い物しやすいのです。
先日もあるデパートのクーポンを利用して買い物をしようと思ったのですが、クーポンをつかっても送料がかかることが分りました。結局、商品自体はちょっと高いけれど25ドル以上で送料無料になるアマゾンのほうが全体的に安くなるのでアマゾンで購入しました。
返品についても、アマゾンは多くの場合近所の宅急便のカウンターに持っていけば返品送料は無料。とても便利なシステムになっています。デパートや小売店のオンラインショップでは、返品の送料は顧客負担というところも少なくありません。
アマゾンは従業員に対する扱いが問題視されています。しかし、多くの人が結局はアマゾンの便利なシステムを選んでしまうのも仕方ないと思わざるを得ません。
新時代のデパート“Neighborhood Goods”
デパートが生き残るためには、斬新なアイデアが求められています。例えば、最近注目されている“Neighborhood Goods”(ネイバーフッド・グッズ)というデパート(※2)(https://neighborhoodgoods.com/)は、SNSなどで話題になっている有名企業の商品、独自の選択基準で選んだ無名スタートアップや小さなローカルビジネスのD2Cブランド商品を集めた新しいタイプのデパートです。2018年にテキサスを拠点にオンライン販売と実店舗販売を始め、じわじわ実店舗を増やし人気を集めています。
ブランド自体や商品の背景について共感を与えたり、ライフスタイルのアイデアや体験を提供することでその商品に愛着を感じさせ購入してもらうという独特の販売スタイルをとっています。人々が集まり、買い物をしたり食事をしたりイベントに参加するなど、コミュニティー広場としての役割も担おうとしています。しかし、客層が限られるのではないか、今後どこまで成長するのかは個人的に興味深いところです。
かつて、庶民で賑わった老舗デパートが没落してしまうのはとても残念です。しかしディスカウントショップなどで掘り出し物を見つけるようなワクワク感もなく、そこでしか見られないという特別な商品があるわけでもない、オンラインショップには便利さへの配慮もない、そんな今のデパートから庶民が遠のいていくのは納得せざるを得ません。今後、デパートに起死回生があるか、このまま没落していくのか、注目していきたいと思います。
参考資料
(※1)Vox-recode “The death of the department store and the American middle class”(https://www.vox.com/recode/21717536/department-store-middle-class-amazon-online-shopping-covid-19)
(※2)Neighborhood Goods(https://neighborhoodgoods.com/)
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