1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

住宅ローンを「繰り上げ返済してはいけない」大きな理由

LIMO / 2021年2月14日 20時5分

写真

住宅ローンを「繰り上げ返済してはいけない」大きな理由

私は「不動産投資」を軸とした資産形成について情報発信をしていますが、最近、「住宅ローンがあると不動産投資の融資を引きにくいので、繰り上げ返済した方が良いのでしょうか?」という質問をよくいただきます。

結論から言うと、住宅ローンの繰り上げ返済はしない方が断然お得です。それはいったいなぜなのか? 今回はその理由を詳しく解説していきたいと思います。

本記事をお読みいただければ、住宅ローンの繰り上げ返済にはメリットが少ないこと、繰り上げ返済をしない方がむしろ資産が増えるということがお分かりいただけると思います。

また、住宅ローンだけでなく、アパートローンの繰り上げ返済についても詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

まずは、住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みから解説しましょう。

住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みとは?

そもそも繰り上げ返済とは、毎月のローン返済とは別に残債の一部を返済することを言います。

通常のローンでは金利と元金の合計額を毎月返済していきますが、繰り上げ返済のお金は元金の返済に充当されます。つまり、残債を一気に減らすことで月々の金利返済が軽くなり、その結果として総返済額が少なくなるという仕組みです。

具体的な繰り上げ返済の方法としては、「期間短縮型」と「返済額低減型」の2種類があります。

図表1:<期間短縮型>

(/mwimgs/9/d/-/img_9d0f5458555c48e1ef16b7e47dda58ab85451.jpg)

拡大する(/mwimgs/2/f/-/img_2f1378181043deecce03c22e32710b99145633.jpg)

出所:一般財団法人日本不動産コミュニティー(筆者の浦田が代表を務める団体です。以下同)


「期間短縮型」の繰り上げ返済とは、月々の返済額を変えずに返済期間を短縮する返済方法のことを言います。これを実施することで返済期間が短縮され、短縮された分の金利負担が軽減されるということです。

期間短縮型は、「ローン返済のプレッシャーから早く解放される」というメリットがあります。この後に説明する「返済額低減型」と異なり、繰り上げ返済の恩恵を感じるのはローン完済後となりますが、期間短縮型の方が返済額低減型よりも大きな金利軽減効果が期待できます。

図表1:返済額低減型

(/mwimgs/a/b/-/img_ab07821d2af68d160caab3552240e2a688822.jpg)

拡大する(/mwimgs/a/b/-/img_ab07821d2af68d160caab3552240e2a688822.jpg)

出所:一般財団法人日本不動産コミュニティー

一方で、「返済額低減型」の繰り上げ返済とは、返済期間はそのままで月々の返済額を少なくする返済方法のことを言います。繰り上げ返済を実施することで、返済期間こそ変わりませんが、毎月支払う金利を減らすことができます。

たとえば、両親を介護しなければならない状態となり、「これからは両親の介護にお金がかかるから少しでも家計の負担を減らしたい。期間を短くするよりも毎月の返済額を減らしたい」という考えの方であれば、こちらの返済額低減型がおすすめです。

どちらの方法を選択しても、トータルの金利の支払い額を減らすことができます。しかし、利息を減らす効果は同じではなく、期間短縮型の方がより多くの金利を節約できます。なぜなら、返済期間が短くなればその分金利の負担も少なくなるからです。

繰り上げ返済のメリット

住宅ローンの繰り上げ返済についてご理解いただいたところで、繰り上げ返済のメリットについて見ていきましょう。繰り上げ返済のメリットは2点あります。

1. 借金を早く返済できる

繰り上げ返済の1つ目のメリットは、借金を早く返済できるという点です。

借金を抱えることに対してマイナスイメージを持っている人は、借金を早く返済すればするほど精神的なストレスからも逃れることができます。「ローン返済のプレッシャーから早く解放されたい!」と考えている方にとってはかなりのメリットがあるでしょう。

2. 早く返済した分、金利の負担が減る

2つ目のメリットは、金利の負担が少なくなるので返済総額が少なくなるということです。

たとえば、借り入れ5,000万円、金利0.5%で35年返済ローンを組んでいるとして、25年後に退職金1,520万円で全額繰り上げ返済したらどうなるでしょうか?

(/mwimgs/e/0/-/img_e0fe25b1f0e2686e61159f3d04ddd63a139738.jpg)

拡大する(/mwimgs/e/0/-/img_e0fe25b1f0e2686e61159f3d04ddd63a139738.jpg)

ここでは35年間ずっと金利の変動がないものとします。

繰り上げ返済をしない場合は35年間で総額約5,451万円を支払うこととなりますが、25年後に退職金で残債1,520万円を一括返済したとすると、残りの15年間分の金利である約51万円分を節約することができます。

(/mwimgs/0/4/-/img_04a98ca7c25fa7a4cae3f9467a44d441173646.jpg)

拡大する(/mwimgs/0/4/-/img_04a98ca7c25fa7a4cae3f9467a44d441173646.jpg)

このように、早く返済した分、金利負担が減るというのが2つ目のメリットです。

繰り上げ返済のデメリット

次に、繰り上げ返済のデメリットを解説していきます。

繰り上げ返済の最大のデメリットは、手元の資金が一時的になくなってしまうということです。

先ほどの事例のように、退職金でローン一括返済してしまうことによって毎月の生活が苦しくなってしまっては本末転倒ですし、大きな病気をした時なども手元に十分な資金がなければ困ってしまいます。

また、団体信用生命保険、いわゆる団信の保険料が金利に含まれている場合は、一括で繰り上げ返済をしてしまうと、もしもの時の生命保険もなくなってしまいます。

そのため、繰り上げ返済をする場合は堅実な計画のもとで行うか、もしくは相続や贈与などで予想外の一時金があった時に検討すべきものだと思います。

繰り上げ返済をオススメしない2つの理由

さて、繰り上げ返済の仕組みとメリット・デメリットについて見てきましたが、結論としては、繰り上げ返済はオススメしません。

繰り上げ返済をオススメしない理由は2つあります。

1. 現在のローン金利が激安のため、繰り上げ返済のメリットがほとんどない

繰り上げ返済をオススメしない最大の理由は、現在の住宅ローン金利が激安なので繰り上げ返済のメリットがほとんどないということです(住宅ローンが1%台後半の場合は別)。

先ほどと同様、借り入れ5,000万円のケースで期間35年、変動金利で0.5%、10年後に500万円を繰り上げ返済したケースをシミュレーションしてみましょう。

(/mwimgs/0/d/-/img_0d380a2bc0748739671465edc604668c84221.jpg)

拡大する(/mwimgs/0/d/-/img_0d380a2bc0748739671465edc604668c84221.jpg)

すると、返済額低減型の場合は月々のローン負担が17,789円減少し、金利の総支払額は31万8,965円ほど少なくなります。

年間の金利負担額の減少は残りの期間25年で割ると、年間でたった1万2,758円の節約にしかなりません。500万円も繰り上げ返済をして、年間でたった1万2758円の節約にしかならないのです。

(/mwimgs/c/0/-/img_c0d0ee2b526a5ed83e86f4099e6b2f63170905.jpg)

拡大する(/mwimgs/c/0/-/img_c0d0ee2b526a5ed83e86f4099e6b2f63170905.jpg)

この状況ですと、繰り上げ返済をする意味はあまりありませんね。

2. 住宅ローン控除のメリットがなくなる

繰り上げ返済をオススメしない2つ目の理由は、住宅ローン控除のメリットがなくなってしまうということです。

たとえば500万円の繰り上げ返済をすると、その年の住宅ローン控除もなくなってしまいます。その額は「500万円×1%」で5万円分。

500万円を繰り上げ返済して節約できる金利が年間でたったの1万2,000円程度ということを考えれば、繰り上げ返済をしないで5万円の住宅ローン控除を利用した方がお得ということになります。

ちなみに、フラット35の固定金利1.3%でもシミュレーションしてみましたが、それでも年間で節約できる金利はわずか3万4,000円程度でした。

確かに、昔のように住宅ローンの金利が3%も4%もあった時代なら繰り上げ返済のメリットはあったと思いますが、この超低金利の時代に繰り上げ返済をするのは、ほとんどメリットがないのです。したがって、今の低金利水準であれば繰り上げ返済はしない方が良いということになります。

住宅ローンはあらゆるローンの中でもっとも融資を受けやすく、もっとも金利が安いローンです。

そのローンをいったん繰り上げ返済してしまうと、その後お金が必要になった時に、その時の経済状態で改めて追加で融資を受けられるとは限りません。生活資金のリスクヘッジという意味でも、繰り上げ返済はしない方が良いというのが結論です。

繰り上げ返済した方がいいケース

ただし、そうは言っても繰り上げ返済をした方が良いケースもあります。それは、変動金利で借りていて、変動金利が急に上昇してしまった場合です。

また、高い金利から安い金利へ借り換えた場合は、当然ながら以前に借りていたローンを繰り上げ返済しなければなりませんので、この場合も繰り上げ返済をしてOKです。

このようなケース以外では、基本的には繰り上げ返済をしない方が良いでしょう。

手元資金は繰り上げ返済をするのではなく、運用した方が良い

ここまでの記事の内容を理解していただければ、現在のような超低金利時代であれば、まとまった資金ができても繰り上げ返済をしない方が良いということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

むしろ、まとまった資金ができたらそれを不動産投資や株式投資などの資産運用に回した方が良いでしょう。

たとえば、ETFの長期積立投資であれば年利1%以上で運用するのは難しくないと思いますし、少し勉強すれば年利3%で運用することも不可能ではないと思います。

また、500万円の頭金があれば、土地値相当の激安戸建を購入して運用するのも良いと思います。利回り15%もあれば年間で75万円の家賃収入を得ることができますし、土地値で購入していれば、リフォームをして将来売却することで、売却益を出すことも不可能ではないはずです。

長期投資であれば米国株S&P500の積立投資や、世界株投資などのグローバルな積立投資をすれば、さらにリスクは分散できると思います。また、資産の一部を金やビットコインなどで保有するのも一つの手です。

しかし、私は不動産投資の専門家なので、一番おすすめしたいのは不動産投資です。

不動産投資は株式投資やFXなどと違い、最初にきちんと勉強して取り組めば、確実に成功することができる、唯一の投資法だと私は考えています。不動産投資を本気でやりたいのであれば、不動産の実務を体系的に学べる「不動産実務検定(https://www.j-rec.or.jp/)」があります。興味がある方は同検定のサイトを覗いてみてください。

アパートローンの繰り上げ返済はどうすべきか?

最後に、アパートローンの繰り上げ返済についてお話しします。

アパートローンの繰り上げ返済については、ズバリ、ケースバイケースです。もしもアパートローンを0%台の超低金利で借りているのであれば、繰り上げ返済をせずにその資金を次の物件の頭金に充てるのが良いでしょう。

しかし、金利が高かったり、レバレッジを効かせすぎたりしてしまったがために途中でデッドクロスがきているような場合は、一部繰り上げ返済をした方が良いパターンがあります。繰り上げ返済をしないとキャッシュフローが出ませんし、税金も多く支払わなければならなくなってしまうことがあるからです。

ちなみにデッドクロスとは、経費にならない元金返済額が、毎年経費として計上できる減価償却費を上回る現象のことを言います。

このデッドクロスを明確に意識しなければ黒字倒産してしまう可能性すらありますので、不動産投資をされる方は必ず、書籍や筆者のYouToubeチャンネル(https://www.youtube.com/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B1%E3%83%B3%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3-%E6%B5%A6%E7%94%B0%E5%81%A5%E5%85%AC%E5%BC%8F)などを見て理解しておきましょう。

まとめ

「住宅ローンは無駄だから、とりあえずさっさと返済してしまえ!」と安易に考えるのではなく、まずはその効果を具体的にシミュレーションして、考えるクセをつけるようにしましょう。

そのようなクセをつけることができれば、大事なお金を節約できるだけでなく、資産形成においても大きな力を発揮することができるでしょう。

また、今回シミュレーションしたように、

「繰り上げ返済をするとどのくらい得するのか?」
「金利の変動によって住宅ローンはどのように変化していくのか?」

こういった疑問があれば、「みかローン(http://loan.mikage.to/)」というサイトで簡単に試算することができます。こちらも興味があればチェックしてみてください。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください