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高所得世帯の児童手当廃止に反発。何でも「待機児童解消のため」でいいの?

LIMO / 2021年2月15日 12時35分

高所得世帯の児童手当廃止に反発。何でも「待機児童解消のため」でいいの?

高所得世帯の児童手当廃止に反発。何でも「待機児童解消のため」でいいの?

2月2日、政府は年収1200万円以上の高所得者世帯への児童手当支給を廃止する児童手当法などの改正案を閣議決定しました。成立すれば2022年10月分から適用が開始されるとのこと。廃止して浮いた分の予算は、待機児童解消のために充てるとされています。

昨年からこの改正案についてはさまざまな形で報じられてきましたが、ここにきて改めて世論の反発が拡大。子育て世帯に限らず、多くの人がこの改正案について反対意見を述べています。

一方、「高所得者層なのだから仕方ないだろう」「別にそこまで生活に困らないのでは?」という賛同派の意見も。しかしこの改正案は、そうした表面的なこと以外の問題を多くはらんでいると感じます。

夫婦どちらかの年収が1200万円を超えたら手当はナシへ

現行の制度では、児童手当は中学校卒業までの子ども1人当たりに対して月額支給されるもので、金額は3歳未満が一律15,000円、3歳以上小学校終了前までが一律10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生が一律10,000円です。

しかし親の所得制限による限度額があり、たとえば会社員の夫と専業主婦の妻、子ども2人の世帯では夫の年収が960万円を超えると特例給付として支給額は子ども1人につき一律5000円となります。

今回の改正案では、所得によってはこの特例給付が廃止される世帯が出てきます。それは夫婦どちらかの年収が1200万円を超える世帯。そして廃止対象として見込まれている子どもの数は約61万人とのことです。

「子育ては自助努力で」という政府からのメッセージ

一般的に「年収1200万円を超える世帯における月額5000円」と聞くと、「たいした額ではないから支給がなくなっても別に問題ないのでは?」と思われるかもしれません。たしかに現実問題として、子ども1人当たりに支給される月額5000円がなくても生活が困窮するほど大きな影響を受けることがない年収1200万円世帯もあるでしょう。

しかし問題は、廃止対象世帯が生活していけるかいけないかではないと筆者は感じます。この改正案は、”子育て世帯は自助努力せよ”という政府のメッセージであり、社会全体で子育てを支えるという少子化対策に必要な視点が欠けてしまっているのです。そして頑張って仕事をして稼いで子どもを持った人ほど、不公平感を持つのではないでしょうか。

また、廃止対象となる子どもの数が約61万人というのは全体の約4%という少数派であり、「今すぐに生活が困窮するわけではない世帯」を狙っているところには、当事者からの反発の少なさを期待した政府の姑息さも感じるのです。

引き起こされるのは子育て世帯の分断か

また筆者は、このような政府施策が生み出す波紋も懸念しています。それは子育て世帯間の分断です。

今回の改正案が報じられると、SNSなどでは「年収1200万円ももらっているんだから子ども1、2人なら余裕でしょう」、「うちは子ども3人でもっとカツカツ」とコメントする人がいる一方で、「睡眠時間削って頑張って稼いでいるのに自分たちは手当が削られて、ゆるく働いてるような世帯が手当をもらえるのはおかしい」といった声も目立ちました。

つまり、所得制限による手当削減があることで、同じ子育て世帯同士で不満をぶつけ合うような分断が生まれているのです。怒りの矛先をお互いに向けさせることも、政府の思惑なのかもしれません。だからこそ、今回の改正案については収入に関わらず、子育て世帯が連帯して異議を唱える必要があるのではないでしょうか。

今回設けられた所得制限は年収1200万円ですが、今後これが年収1000万円、年収800万円と下がっていくかもしれません。また、子育て世帯だけでなく、一定の年収を超える単身者にも何らかの増税を強いる可能性もゼロではないでしょう。

現状で所得制限に引っかかっていないからと言って、また、子どもを持っていないからと言って安心していられるとは言えないのです。

なんでもかんでも「待機児童解消のため」とされていないか

また、筆者は今回の改正案について「待機児童解消のため」という説明があったことにも大きな疑問を持っています。そもそも待機児童解消は、2019年10月に始まった消費税増税の目的の一つでもあったはずです。

消費税増税によって待機児童問題が解消できなかったのであれば、改正案を閣議決定する前にその理由を説明したり予算を検証したりする必要があるでしょう。そうしたプロセスも踏まずに「高収入世帯の特例給付を廃止する」とするのは、あまりにも乱暴なやり方ではないでしょうか。

菅総理は5日の衆議院予算委員会で今回の改正案について「大変申し訳ないことであったが、協力していただきたい、そういう思いの中で、政府として決定させていただいた」として、改めて待機児童解消の財源捻出のためだと理解を求めていました。

しかし、増税や特定の手当て廃止をするために、なんでもかんでも「待機児童解消のため」という便利な言い訳が使われることには注意しなければいけないと感じています。

今回の特例給付の廃止は、各方面からさまざまな批判が起きています。こうした声は政府に届くのでしょうか。今後もまた「待機児童解消のため」を謳った増税や手当て廃止、そして子育て世帯がお互いに不平等を感じる政策が進まないことを祈るばかりです。

参考資料

「児童手当制度のご案内(https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html)」(内閣府)

「知ってほしい! 待機児童の解消のこと(増税分の使いみち)(https://www.gov-online.go.jp/cam/shouhizei/taikijidou/)」(政府広報)

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