日本の「DX化の遅れ」、原因は「思考停止」である理由

LIMO / 2021年2月17日 18時5分

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日本の「DX化の遅れ」、原因は「思考停止」である理由

昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれています。同時に「我が国、日本は、諸外国に比べてDX化の推進が遅れている」というのもお決まりのオチになっています。

過去には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染防止のために自宅でリモートワークをしていたのに、「ハンコをもらうために出社する」という冗談のような話もありました。DX化の話が出るたびに大手ITテック有する米国や、電子国家のエストニアの事例が引き合いに出され、「日本はIT技術者を増やせ」という声も見られます。

しかし、DX化の促進には世界を変えるようなイノベーティブなIT技術者より、まずは現場レベルで「できるところからITを使ってみる」という、小さな一歩への意識改革が必要ではないでしょうか。というのも、IT化推進を阻むケースの中には技術力ではなく、現場の思考停止の部分も少なくないと感じるからです。

なぜ研修をオンラインで実施しない?

先日、ある行政機関が主催した研修に参加しました。

自主的なお勉強として参加したわけではなく、会社で取得した資格の効力を保持するために、参加が必須となっていたものです。内容はこの手の研修によく見られる、法改定したものの案内や、事故発生回避を促す再現VTRなどが中心です。高齢の講師が手元のメモを一言一句読み上げ、VTR動画を再生して参加者はそれを視聴して終わり、というスタイルです。

研修所ではしっかりとした感染拡大の防止対策をしていました。例年に比べて時短、同時に参加できる人数の制限や、会議室内での参加者同士の距離をキープするのは当然として、消毒、換気などにも取り組んでいました。

しかし、これだけ感染拡大防止対策を講じるくらいなら、なぜオンラインでしないのか不思議です。この研修の本質は「研修内容の情報を資格保持者に届ける」という情報伝達にありますから、研修内容を動画にまとめてリモート視聴してもらえばよいだけのことではないでしょうか。

この研修は無味乾燥な情報伝達としてのものであり、ビジネスセミナーやビジネスプレゼンテーションと違って、ほとばしる情熱や現場のアツい空気感などのライブ感も必要なく、参加者とのインタラクティブなコミュニケーションもありません。特別に卓越したITスキルがなくても、ZOOMやYouTubeを使えば、簡単なマウス操作で実現できるはずです。

視聴者が動画を飛ばし見したかは、参加後に簡単な理解度チェックテストや、アンケートを取れば確認することができます。

「今までこのスタイルでやっていたから」という思考停止状態では、どれだけ優れたテクノロジーが世にあっても使われなければ意味がないのです。

中小企業におけるDX成功の鍵は経営者次第

筆者は会社経営者なのですが、中小企業におけるDX導入の鍵は経営者が握っていると感じます。

手前味噌ながら、筆者の会社は地方の中小零細企業であるものの、使えるITテクノロジーは使い倒しています。従業員の勤怠管理は電子的に行っています。社内コミュニケーションはビジネスチャットアプリを、社内でできない専門性の高い業務はクラウドソーシングで依頼を出しています。

また、現場のビジネスノウハウはオンラインでPDF資料や動画、画像などのファイルに落とし込んでナレッジシェアリングをすることで、業務の属人化を防止するようにしています。取引先とのビジネス商談もできるだけZOOMを使い、ムダな移動や感染リスク低減に努めるようにしているのです。

社内DX化の推進というのは、大企業ではIT部門の仕事かもしれません。しかし、こと中小企業については決裁権を持っている経営層の仕事なのです。社内の財務諸表を見て、ムダなコストを削減し、売り上げを拡大させて利潤追求を最大化するミッションを担うのは経営者、DX化はコストも売り上げも大きく影響がありますから、経営者のDX推進の理解なくして導入はありえません。

現場でITの活用がないというなら、それは経営者がITの勉強不足の結果だと思うのです。

ほとんどの仕事はオンラインで完結する

それまでは「リアルでやることに意義がある」「対面でしかできない」と思われていた仕事も、いざオンラインに移行してみると、問題なく完結することは少なくありません。

筆者は企業や公益法人などから登壇依頼を頂いて講演をしています。地方在住ですから、講演依頼があれば飛行機で上京して登壇していました。昨年はある団体主催からご依頼頂いてセミナー会場へ赴いて登壇する予定でしたが、COVID-19感染拡大で延期になり、2021年開催で改めてお声がかかりましたが「オンラインで」という話になりました。あちこちでセミナーがオンラインで実践されているので、その流れに乗った形になるのでしょう。実際、講演もオンラインでやることに大きな障害はないのです。

また、テレビ出演などもリモート化の波が押し寄せています。筆者はフルーツビジネスを経営しており、その関係で時々テレビやラジオの取材を頂いてきました。従来はテレビ番組の出演は、テレビ局へいくか、現地取材に応じていました。いずれも時間も労力も大変なもので、過去に現地取材に応じた際は、東京から来たリポーターの空港への送迎や打ち合わせなど、数分間の動画を撮るためにほぼ丸一日かかるという具合でした。

しかし、昨年に2つのテレビ番組で出演をした時は、いずれもリモートでZOOMで出演しました。当初は「カメラマンが目の前にいなくて大丈夫だろうか」と心配していましたが、特に大きなトラブルはなく放送されてホッと胸をなでおろしました。テレビ出演すらも、リモートの時代になっていったのです。

また、過去3冊の書籍の商業出版もすべてオンラインだけで完結しましたし、ビジネス雑誌やネット記事の原稿もすべてネット上のやり取りだけで済んでいます。香港や台湾、アメリカなど海外の企業から仕事を請けることもありますが、いずれもクラウドだけで済んでいます。

「リアルでなければできない」と思い込んでいた仕事も、「前例がなかった」というだけに過ぎず、実際にやってみると何の支障もなくオンラインで完結する例は少なくないのです。企業におけるDX化の遅れは経営者のIT勉強不足や思考停止が本質的理由にあると考えています。

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