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コロナ失業者が迅速に再就職できる人材あっせんシステムを作った国

LIMO / 2021年3月4日 11時35分

コロナ失業者が迅速に再就職できる人材あっせんシステムを作った国

コロナ失業者が迅速に再就職できる人材あっせんシステムを作った国

キープ・ニュージーランド・ワーキングとは?

一般的に人材募集を行う時、できるだけ早く優秀な適任者を雇いたいと思うのは、企業の人事部なら国に関わらず考えることなのではないでしょうか。一方、求職者も同じです。早く失職状態を脱して再び仕事に就き、収入を得たいと思うのは当然でしょう。コロナ禍であればなおのことです。

ニュージーランドでは社会開発省が中心になり、昨年3月26日に全国がロックダウンになる前から徐々に増加しつつあったコロナ失業者への対応策を迅速に計画・実施し始めました。そんな対応策のうちの1つ、オンライン人材募集ツール「キープ・ニュージーランド・ワーキング」は非常に有用と熱い視線を浴びています。

従業員を解雇せざるをえない企業と人手不足の業界が混在

国内でコロナの経済的打撃を最も顕著に受けたのが、従来経済に大きく貢献してきた観光業界です。実際、航空やホスピタリティ、宿泊施設、娯楽産業では、多くの従業員が解雇されています。

その一方で医療、高齢者ケア、食料品、サプライチェーンなどに関連する企業は、現在人手不足に悩んでいます。そもそも医療、高齢者ケア分野では今までも慢性的に働き手が足りませんでした。

また、食料品、サプライチェーンでは、コロナ禍で以前のようにスムーズに業務を行えなくなっているのだそうです。これらの業界では経験豊富な従業員の確保は必須であり、需要は高まっています。

タイムリーに生まれたオンライン人材あっせんツール

ロックダウン前から計画されていた「キープ・ニュージーランド・ワーキング」がお目見えしたのは4月28日で、まさにロックダウンの真っただ中。この時期コロナは急速に世界に広まり、感染者が急速に増えていきました。加えてコロナの影響を受け、経営状態が悪化し、従業員に給料を払えなくなる企業が目立ったころでもあります。

タイムリーに産声を上げた「キープ・ニュージーランド・ワーキング」は、多様な職種の人材が一カ所に集まる「タレント・ポータル」ともいえます。開発の目的は、その名の通り、失職者を積極的に支援し、迅速に再就職を実現させ、働き続けてもらうことにあります。

また、仕事をなくすことで陥りがちな混乱を最小限に抑え、先行きが見えず、不安なコロナ禍を乗り越えて先に進んでいってもらいたいという失職者の精神面をサポートする面も持ち合わせています。

キープ・ニュージーランド・ワーキングを支え、主導するのは「NZインク」というグループです。会計事務所のデロイト、娯楽施設とカジノで知られるスカイシティ、職業あっせんを行うエマージェントを中心に、国内最大の都市、オークランドに隣接するカウンティ―ズ・マヌカウの地域医療保健委員会、社会開発省で構成されています。

求職者と人材を採用する企業を迅速に結び付ける

キープ・ニュージーランド・ワーキングはビジネス主導型のオンライン人材あっせんシステムとしてユニークな存在だといわれています。

ユニークさの1つが迅速なこと。手続きにかかる手間と時間を短縮し、失職者が再就職するスピードを速めます。再就職までの道のりをサポートするのは専用のシステムで、求職する側がやらなければいけないことは、キープ・ニュージーランド・ワーキングのウェブサイトに行き、自分の情報をアップロードするだけです。

人材を募集・採用する企業は、どのような職種に何人必要としているかや、パートなのか常勤なのかなどを書き込み、クリック。すると、それに当てはまる候補者があっという間に出てきます。

そのほかにも、たとえば候補者全員にEメールを送付することも、1クリックで可能です。優秀なシステムのおかげで、手間も時間もかけずに仕事を得たり、適格な人材にめぐり会えたりできるというわけです。

また、求職者と採用する企業を結び付けるのに、通常の就職あっせん方法をとった場合は厳密な審査を行う必要があり、時間がかかります。しかし、キープ・ニュージーランド・ワーキングを利用すれば、簡便に済むのです。

なぜならキープ・ニュージーランド・ワーキングに人材を提供・登録する企業は雇用基準が高いのが特徴。そのため、人材を受け入れる企業は新たに入念な審査をする必要なしに、優秀な再就職者を迎えることができるのです。

優秀ながら、近々解雇の予定がある人材を有効に活用

もう1つ、ユニークといえるのは、人材を「提供」する企業が就職あっせんサービスに関わっている点です。通常の就職あっせんサービスであれば、求職者と採用する企業が存在するだけですが、キープ・ニュージーランド・ワーキングは違います。

人材を提供する企業というのは、要するに余剰人員の解雇を予定している企業を指しています。解雇して「ハイ、さようなら」ではなく、元従業員がほかの仕事に就けるようサポートしようというのです。

人材を提供する企業は1500NZドル(約11万3000円)を単発で、採用する企業は毎月1500NZドル(約11万3000円)を支払い、キープ・ニュージーランド・ワーキングのサービスを利用します。

驚かされるのは、人材を提供した企業が経済的に持ち直した場合は、その元従業員を呼び戻すことも可能なのだそうです。本人が望めば、再就職先で継続して働くこともできますし、もともと勤めていた企業に戻ることもできるというわけです。最終的な判断は本人に任されています。

ニュージーランド航空の元社員は医療関連業界に再就職

人材を提供する企業の代表としては、ニュージーランド航空、娯楽サービス企業のスカイシティ、旅行代理店のハウス・オブ・トラベルなどが挙げられます。

先だってテレビのニュース番組「ニューズハブ」では、ニュージーランド航空に11年間キャビンクルーとして勤務していた男性の再就職の様子と心情が紹介されていました。男性はキープ・ニュージーランド・ワーキングを通して、現在老人ホームの経営などを手がけるライマン・ヘルスケアで勤務しているそうです。

同番組によると、キープ・ニュージーランド・ワーキングは、大卒でニュージーランド航空に入って以来、11年間履歴書を書く必要もなく勤務してきたこの男性を、履歴書書きからサポートしたそうです。

人材と、人材を受け入れる企業との仲人役として手を貸すのは、キープ・ニュージーランド・ワーキングを主導するNZインクの1社、就職あっせんを行うエマージェント。その創設者であり、コンサルティング・ディレクターを務めるカーメン・ベイリーさんは、同じ企業に長年勤める人は仕事熱心であり、優秀な人材であることが多いと話しています。

また、カウンティ―ズ・マヌカウの地域医療保健委員会の代表は、多くの優秀な人材を医療現場では必要としているとコメントし、男性のような求職者を歓迎しています。

一方で、メンタルヘルス・サービスを行うクリアヘッドの創設者で最高経営責任者のアンジェラ・リム博士は、コロナによる解雇はあまりに突然のことだけに、従業員は収入だけでなく、生きる目的をも失ってしまう傾向があると忠告しています。

紹介された男性も、前の職場は現在の自分を形成した場所であり、第2の家庭であり、共に働いてきた人は家族だったと語り、突然の解雇のショックを隠し切れない様子でした。

今後さらに失業者が出る可能性

1月26日、ジャシンダ・アーダーン首相は、国境封鎖はほぼ今年いっぱい続くことになると会見で述べました。これは海外旅行者が入国できないことを意味しており、昨年来、観光業界に大打撃をもたらし、失職者が多く出ている状況は今年も続くことを示しています。つまりさらに失職者が出る可能性があるわけです。

また予防接種キャンペーンの展開時には、医療関係業界で人手が必要となるのは避けられません。人材仲介役のベイリーさんによると、現在キープ・ニュージーランド・ワーキングの資金不足が問題化しているそうです。コロナが続く限り、この優れたタレント・ポータルの存続も望まれるところです。

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