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「孤独死リスク」が賃貸契約の壁。単身高齢者の増加で住居問題が深刻に

LIMO / 2021年2月24日 18時35分

「孤独死リスク」が賃貸契約の壁。単身高齢者の増加で住居問題が深刻に

「孤独死リスク」が賃貸契約の壁。単身高齢者の増加で住居問題が深刻に

政府が「孤独・孤立対策室」設置へ

2月12日、菅首相は新型コロナウイルスの感染拡大の長期化に伴って深刻になってきた「孤独・孤立問題」に対応する新たな担当閣僚を設けることを発表、坂本少子化相が兼務することになりました。

これにより、感染防止策や経済支援だけでなく、多角的なコロナ対策へ乗り出すことになります。坂本担当相は早速、内閣官房に「孤独・孤立対策室」を立ち上げることを表明しました。

孤独・孤立問題に関しては、コロナ禍以前からその深刻さが指摘されていたため、今回の政府対応がスピーディーだったとは思えません。むしろ、遅過ぎたと言えなくもない状況ですが、それでも担当閣僚を新設するなどかつてない力の入れ具合は確かです。政府の対策が看板倒れにならないよう願うばかりです。

「孤独死」が深刻な社会問題に

ところで、毎年冬になると、一人暮らしのお年寄りの家が火事になったというニュースを頻繁に見聞きします。そして、それが年々増えているような気がします。それだけ一人暮らしの高齢者(65歳以上、以下同)が増えているということなのでしょう。

一人暮らしの高齢者が増える中、避けて通れないのが「孤独死」です。孤独死とは、一人暮らしの人が誰にも看取られること無く死亡することを言い、基本的に自殺は含まれません。

生活中の突発的な疾病(心臓発作や脳出血など)によって死亡するケースもありますが、高齢者の持病が重篤化してそのまま亡くなるパターンが「孤独死」のイメージではないでしょうか。

詳しくは後述しますが、国立社会保障・人口問題研究所が2年前(2019年4月)に公表した今後の世帯数予測を見ると、現在既に社会問題化しつつある孤独死がよりいっそう深刻になる可能性が高まっていることが見て取れます。

自殺者数をはるかに上回る高齢者の孤独死

ところで、現在の日本社会において孤独死で亡くなる高齢者はどれくらいいるのでしょうか?

直近データではありませんが、東京都監察医務院(東京都福祉保健局)の調査によれば、平成29年(2017年)に東京23区内で一人暮らしをする65歳以上の死亡者のうち、自宅での死亡者数は5,336人となり、過去最高を記録しました。

平成27年が3,127人でしたから、わずか2年間で急増したことになります。さらに、14年前(平成15年)が1,451人だったことを勘案すると、直近数年間で大幅増加になったことも分かります。

また、同じベースの調査ではありませんが、大阪府警の調査によれば、2019年の府内における孤独死は2,996人で、うち71%が65歳以上だったとする結果もあります。

これらの孤独死データを基にすると、全国では3万5千人~4万人の高齢者が孤独死で亡くなっていると推察されます。令和2年(2020年)の全国における自殺者(全世代)が21,077人(厚労省による暫定値ベース)であることを考えると、孤独死の多さが理解できましょう。

誰にも看取られることなく亡くなる人は、決して珍しくない時代になったのです。

ちなみに、平成29年の全死亡者数は約134万人だったので、高齢者による孤独死の割合は3%前後と推測されますが、直近では3%を超えている可能性が高いと考えられます。

2040年の高齢者の単身世帯数は約900万へ増加

さて、前述した国立社会保障・人口問題研究所による今後の世帯数予測によれば、65歳以上の単身世帯数と65歳以上の総世帯に占める比率(カッコ内)は、以下のように推測されています。

2015年実績:6,253,000(32.6%)

2020年予測:7,025,000(34.0%)注:調査時の予測

2030年予測:7,959,000(37.4%)

2040年予測:8,963,000(40.0%)

基本的には、「単身世帯数=1人暮らしの人数」と考えていいでしょう。すでに2015年の実績で、65歳以上の総世帯数に占める単身世帯の割合は3割を超えています。そして、今から20年後の2040年には、65歳以上の単身世帯数が約900万に達し、65歳以上の総世帯数に占める比率は4割となるわけです。

現在の少子化や未婚比率の上昇などを勘案すれば、孤独死の“予備軍”でもある高齢者の単身世帯がさらに増加することは容易に想像できましょう。

人生の終末を民間賃貸住宅に頼らざるを得ない?

そこで問題になるのが、孤独死を迎える自宅が持家なのかどうかということです。

現在、日本の持家比率は約61%(全世代平均)ですが、過去の推移から見ても今後の大幅上昇は期待し難い状況にあります。仮に、前提条件を甘くして、この持家比率が65%まで上昇したとしても、2040年には約320万人の高齢者が自分の家を持たない状況になります。

これら高齢者は、高齢者向け施設(有料)、公営賃貸住宅、民間の一般賃貸住宅に住むことになります。しかし、施設や公営賃貸住宅で受け入れるキャパシティには限度があり、その大部分を民間の一般賃貸住宅に頼らざるを得ない状況にあると考えられます。

単身高齢者への賃貸住宅契約は、孤独死リスクが大きな壁に

一方で、家主の立場になって考えると、一人暮らしの高齢者へ貸すことに躊躇せざるを得ません。仮に、連帯保証人がいたとしても躊躇する最大の理由は、いわゆる孤独死リスクがあるからです。

家主から見た“孤独死リスク”とは何でしょうか?

一般に、孤独死が早期に発見されるのは稀で、少なくとも死後数週間を経過した時が多いと言われます。その際、現実問題として、遺体から発された体液が染み込んだ部屋は、とても使用できる状態にはありません。専門業者にしかできない特殊洗浄が必要になり、多額の費用がかかります。

しかも、現在の民法では、自殺でない場合、遺族や連帯保証人に対して損害賠償の請求ができません(一部は上限)。

「孤独死時代」に向けた保険や社会保障の整備が急務

昨今、こうした社会情勢に合わせた家賃保証や特殊洗浄費用負担など、孤独死保険の類も登場していますが、まだまだ不十分です。今後迎えるであろう「孤独死時代」に備えた様々な社会保障の整備・強化が求められるでしょう。

今回、政府が「孤独・孤立問題」に本腰を入れ始めたことは評価できますが、コロナ禍問題の一環として扱うのではなく、構造的な社会問題として対処すべきです。もし、コロナ禍が収束した後に、政府がこの問題から手を引くようなことがあれば、認識不足も甚だしいと言わざるを得ません。

この記事を読んでいる人の中には、自分には孤独死なんか関係ないと思っている方々も多いと思います。しかしながら、日々の仕事等に追われていると、自身が高齢者に達するのはあっという間です。

直接的にも(自身が高齢になって孤独死)、間接的にも(隣室で孤独死が発見される等)、その影響を受ける日はもうすぐそこまで来ていると言えましょう。

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