五輪ドタバタ劇。結局は外圧頼みの「変われない国」はなぜ迷走するのか
LIMO / 2021年2月28日 18時35分
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五輪ドタバタ劇。結局は外圧頼みの「変われない国」はなぜ迷走するのか
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長による「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」失言から約2週間。新しい会長に橋本聖子前五輪相が選ばれ、東京五輪開催への苦難の道が再スタートしました。
今回の一連の迷走劇で、ハッキリと浮かび上がった「ジェンダー後進国」日本の実情。開催されるかさえ、いまだ判らない東京五輪が突き付けた課題先進国・日本の姿。今回は、ジェンダーの問題を中心に、ちょっと気の早い東京五輪総括をおこなってみます。
森前会長の「逆ギレ謝罪会見」にみる日本の病巣
まずは出発点となった森前会長の前述の「失言」について。もともと森氏は「子どもを一人もつくらない女性が、年とって税金で面倒みなさいというのはおかしい(2003年の発言)」と言い放った人物ですからね。この時点から、森前会長の考え方はアップデートしていないのだと思います。
このような枠組みのなかで女性を位置付けている森氏ですから、氏の「逆ギレ謝罪会見」の「自分は女性蔑視などしていない」発言も本音なのだと思います。たしかに、その枠組みのなかでの女性蔑視はしていないのでしょう。つまり“わきまえた女性"は決して蔑視しない。しかしながら、問題は女性に対する根本的な考え方、その枠組み自体なのですから。
森氏の「逆ギレ謝罪会見」は大変、興味深い内容でした。特に「老害とは心外だ。老人差別だ」という発言が印象的でした。この発言に失笑した人も多いようですが、この発言の論旨自体はきわめて正しいと思います。おっしゃる通り、ご説ごもっともです。
しかし、そこに憤りを感じるなら、問題の失言による女性の気持ちが、なぜ分からないのかという素朴なギモンがあるわけです。昭和時代に育った自分としては、あの頃は「年寄りは後進に道を譲る」という価値観があった気がします。森氏はその点に関しては、現在の「人生100年時代」にあわせて見事にアップデートしています。
「年寄り」に対する考え方はアップデートできても、「女性」に対する考え方はアップデートできない。これは、やはり自己中心的ですよね。古い時代の言葉をつかうならば、“老醜"そのものだと思います。いま風に言うならば、原理原則への無関心と恣意的な“良いとこ取り"。日本のデフォルトともいうべき病巣です。
辞任後も迷走は続きました。川渕氏への辞任する前会長自らの禅譲劇。これは川渕氏がベラベラ喋ってくれたから判明したものです。川渕氏がダンマリを決め込んで、体裁を整えたら誰にもわからなかったでしょう。これが密室政治のスゴイところです。
「たかが運動会」という健全な感覚
では、橋本氏の選出過程に果たして透明性があったのか。これは実のところ、透明性の必要性以前に「ダイバーシティ(多様性)」「インクルージョン(包摂性)」等々のカタカナを並べ立てる組織委員会に、ウンザリでした。たくさん並べれば良いってモノでも、ない気がするのですが。
五輪への逆風が強まるなか、巷で呟かれる「オリンピックはただの運動会」が実は健全な気がしてきました。女性蔑視発言者が長年、会長職を務めてきたのに、いまさらジタバタしてもですね。ともかく〈多様性〉が大事ならば「ただの運動会」という意見も〈包摂〉して前に進んでもらいたいものです。
今回の辞任劇にはスポンサー企業の反発もありました。しかし「わが社の価値観に合わない」と森氏を批判したトヨタ自動車の女性管理職比率はわずか2.5%(2019年/「日経ESG」より)。これが日本の実情です。五輪組織委員会はすぐになくなる組織ですが、日本社会の深層にはびこる男女不平等に果たして処方箋はあるのか。
今回の辞任劇は、国内企業の反発や多くの辞任要求の署名もありましたが、やはり“外圧"が要因でしょう。米国での放映権を持つNBCの森会長辞任要求記事。これと連動したかのようなIOC(国際オリンピック委員会)の手のひら返し声明。「日本は外圧でしか変われない国だ」という意見は正しいのかもしれません。
“高い意識が制度を変える"へのギモン
「黒船」が来ないと変われない日本。ところでペリー来航から明治維新まで何年か、憶えていますか。正解は15年です。歴史の授業のときに、「昔の人はノンビリだな」と思ったものです。しかし、最近は「昔の人はスピード感があるな」とも思えるのです。
いまから15年前は2006年。ジェンダーの問題でいえば、その3年前の2003年に「202030」が発表されています。これは内閣府・男女共同参画推進本部による「あらゆる分野で、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」です。結果は、惨憺たるものです。
もちろん、割合を変えれば良いわけではない、意識が大切だという意見もあります。ただ、これは微妙なところですよね。日本の場合、阻害要因として選択的夫婦別姓の問題から、女性の働き方まで、制度の壁があまりにも頑強です。問題は、人の意識が制度を変えるのか。あるいは、制度が人の意識を変えるのか。
これは、最終的には「ニワトリが先か、卵が先か」問題ですが、いまの日本全体でジェンダーレスの“高い意識"を求めてもムリな気がします。制度の壁が高すぎるのです。これは、近年の歴史が証明しています。そして、この“意識”に過剰に求めすぎることが「日本が変われない国」の原因であるとも思えるのです。
まず制度を根本的に変えてしまうこと。女性の社外取締役登用などでごまかす、いつもの手は禁止で。制度がガラッと変われば日本人の“意識"なんて変わりますよ。1868(明治維新)/1945(敗戦)を見ても、日本人は、そのような順応性が高いと思います。良い意味でも、悪い意味でも。
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