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大学生の中退・休学が減少。コロナによる本格的な経済的困窮はこれから

LIMO / 2021年3月5日 19時5分

大学生の中退・休学が減少。コロナによる本格的な経済的困窮はこれから

大学生の中退・休学が減少。コロナによる本格的な経済的困窮はこれから

推薦や一部の先行試験を除くと、1月16日~17日の大学入学共通テストで始まった今年の大学受験シーズンも、一部私立大学と国公立大学の2次後期試験を残すだけとなりました。受験生の皆さん、お疲れさまでした。

ところで、長丁場の大学受験を終えて晴れて入学したものの、様々な理由から中退や休学を選択する学生も一定数いるのが実情です。中退や休学を選択する大学生は、一体どれくらいいると思いますか?

新卒入社の3年離職率は大卒で32%前後

ちなみに、比較や参考にするのが適当かどうか分かりませんが、新入社員の離職率を見てみましょう。

最新のデータではありませんが、厚労省の調査データ(平成28年3月卒業者が対象)によれば、新卒入社の3年離職率(入社から3年以内の退職)は、大卒で32%前後、高卒で40%前後です。筆者の感覚だと、大卒でも3年以内に約3割が離職するのは少し驚きですが、この比率は年によって多少の上下はあるものの、大きくは変わっていないようです。

ちなみに、その内訳(大卒)は1年目の離職率が11~12%、2年目が10~11%、3年目が9~10%となっています。

令和2年4~12月の大学生の中途退学率は?

さて、話は大学の新入学生に戻ります。結論から言うと、令和2年4~12月(9カ月間)における大学生の中退率は以下の通りです(文部科学省の調査結果、%は学生数全体に占める割合、短大と大学院生を含む)。なお、カッコ内は前年の令和元年4~12月実績です。

中途退学者:28,647人、0.97%(36,016人、1.22%)

休学者:65,670人、2.23%(71,287人、2.42%)

ちなみに、入学1年内である学部1年生だけの実績は、%を新入学生全体に占める割合として以下となりました。

中途退学者:5,186人、0.76%(7,096人、1.02%)

休学者:6,440人、0.95%(6,020人、0.88%)

中退理由のトップは「経済的困窮」が定着

まず、学生数全体(約295万人、概算)で見ると、本当にザックリ言えば、中途退学者が1%、休学者が2%強ということになります。この比率が高いか低いかは意見が分かれるかもしれませんが、毎年(注:9カ月間)3万人近い学生が中退を選択するのは、少しもったいないと感じるのは筆者だけでしょうか。

ちなみに、「その他」を除いた中退理由の第1位が「経済的困窮」19.3%(令和元年は18.6%)、第2位が「学生生活不適応、就学意欲低下」18.3%(同17.6%)、第3位が「就職・起業等」が14.1%(同14.5%)、第4位が「転学」12.9%(同12.8%)、第5位が「学力不振」7.0%(同6.8%)でした。

このうち、第1位が定着している「経済的困窮」については、奨学金制度の活用や授業料減免などで救済できる学生が相当程度いるような気がします。

一方で、大学生活を送る間(一般には4年間)に経済情勢が大きく悪化すると、学費支払いに困窮するケースは決して珍しくないと思われます。いずれにせよ、大学に入学する前に、少なくとも向こう4年間のキャッシュフロー計画は立てておいたほうがよいでしょう。これは、学生本人だけでなく、保護者(両親)もしっかりと取り組む必要があります。

昨年は中退者数、休学者数とも前年を下回る

ところで、今回の調査結果には興味深い点もあります。

まず、中退者数、休学者数ともコロナ禍の影響を大きく受けた令和2年は、前年より減少していることです。普通に考えると、コロナ禍で経済的困窮が増えたり、定例化しつつあるオンライン授業に馴染めなかったりするなど、コロナ禍の影響が皆無だった前年より大幅に増えても不思議ではありません。

ちなみに、コロナの影響が理由と判明しているのは、いずれも令和2年のみで、中途退学者:1,357人(うち学部1年生は470人)、休学者:4,434人(同859人)でしたから、コロナの影響を除外すると、中退者も休学者も大幅に減少していることになります。

実質的には経済的困窮が大幅増加?

文科省の調査結果によれば、この大きな理由の1つとして、各大学等において後期分の授業料の納付猶予や、国の制度によらない独自の授業料等減免を実施していることが挙げられています。

同調査によれば、全体の98.5%の大学等において、後期分の授業料の納付猶予を実施し、さらに、全体の74.0%の大学等において、経済的に困難な学生を対象とした各大学等による授業料等減免を実施している模様です。多くの大学(特に私立大学)で厳しい財政状況が続く中、こうした経済的支援に踏み切っていることは注目に値します。

一方で、これだけ大学側が支援しても、依然として「経済的困窮」が中退者数の第1位の理由になっていることも見逃せません。逆に言うと、経済的困窮に陥っている学生数は想像以上に多いと見ていいでしょう。

全ての経済的困窮がコロナ禍の影響とは言い切れませんが、やはり、今回の一連のコロナ禍による影響が大学生に広く及んでいる可能性は高いと考えられます。

コロナ禍の本格的な影響はこれから

もう一つ気になる点は、休学者数の大幅減少です。

休学者も経済的困窮が大きな理由となるケースがありますが、休学する理由の第1位は「海外留学」が恒常化しています。最近は、海外の大学との交換留学制度を拡充したり、休学して海外留学することを奨励したりする大学も多く見られます。そして、こうした海外留学を大きな目的として入学する学生も増加してきました。

しかしながら、コロナ禍の影響で新規の海外留学は相次いで中止に追い込まれたのはご存知の通りです。ちなみに、海外留学を理由とする休学者数は令和1年の11,024人から令和2年は4,832人へ激減しました。さらに、海外留学の再開の目途が立たないケースも多く、夢破れた学生の多くが退学する懸念も残ります。

今回の文科省の調査は、昨年10月に実施されましたが、その後に緊急事態宣言が再発出されるなど、大学生を取り巻く環境はさらに悪化していると推察されます。したがって、今回の調査結果は、コロナ禍における“途中経過”に過ぎません。コロナ禍における直接的・間接的な影響がどこまで及ぶのか、今後も文科省の調査結果に注視していきたいと思います。

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