予防接種をする医師に感謝すべき理由。メリットとリスクをどう捉えるか
LIMO / 2021年3月21日 19時35分
予防接種をする医師に感謝すべき理由。メリットとリスクをどう捉えるか
治療する医師に比べて予防接種をする医師は、感謝されることが少なく恨まれることが多いはずです。それでも予防接種をしてくれる医師には感謝すべきだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
警察官のメリットは感じにくい
警察官は、泥棒を捕まえるのが仕事です。そして、彼らが泥棒を捕まえてくれるから、我々の家に泥棒が入らないのです。彼らが捕まえた泥棒が監獄にいて稼げないから、ということもありますが、より重要なのは警察官の存在が抑止力となっているということですね。
泥棒したい、と考える人は多いでしょうが、「泥棒すれば警察官に捕まる可能性が高いから、やめておこう」と考えて思いとどまる人が多いわけで、だから我々は安心して暮らせるわけです。
このように、我々は警察官の存在によって極めて大きな安心を得られているわけですが、日々の生活で警察官に感謝することはあまりないかもしれませんね。それは、「警察官がいなかったら、我が家に泥棒が入っていたはず」なのに警察官のおかげで助かった、という証拠がないからです。
神様が「あなたの家に泥棒がはいる予定だったのに、警察官のおかげで助かったのですよ」と教えてくれるなら、もっと警察官に感謝する人が増えるのでしょうが。
一方で、消防士に感謝する人は多いでしょう。実際に火事を消しとめてくれた人ですから、近隣住民は全員感謝するに違いありません。本当は、消防士が日頃から行っている防災活動の方にも感謝すべきなのですが・・・。
予防より治療が感謝される
同様のことが、医療の世界でもあるはずです。病を患って医師に診察し、治療してもらった人は感謝しますが、予防接種を受けた人が医師に感謝することは稀でしょう。「予防接種を受けなければ、自分は病を患っていたはずだ」と考える人は稀ですから。
一方で、予防接種の副反応に苦しんだ人は、医師を恨むかもしれません。また、予防接種を受けたのに罹患した人も、医師を恨むかもしれません。メリットを受けた多くの人が感謝してくれず、不運だった少数の人に恨まれるなんて、損な役回りですね。
医師としては、予防接種をせずに多くの人が罹患して治療を受けに来れば、多くの人に感謝されるわけですが、そんな事態に陥らないように、損な役回りを引き受けてくれているわけです。感謝です。
マスコミも、副反応が出た人や接種しても罹患した人のことは報道するでしょうが、「接種によって罹患を免れた人」についての報道はしないでしょうから、マスコミ報道に接した人はいっそう「予防接種は怖いから、やめておこう」と考えるかもしれません。
マスコミには「接種を受けた人のなかで、副反応が出た人が何%で、罹患した人が何%だったのか」「接種を受けなかった人で罹患した人が何%だったのか」を両方報道して、情報の受け手が冷静に判断するための材料を提供してくれることを期待しましょう。
接種を受けない人が多いと困ったことに
感染症の場合には、接種を受けないことで本人が罹患するリスクが高まるのみならず、本人が罹患したことで他人に感染を拡げてしまうリスクもあるわけです。これは難しい問題です。たとえば次のようなケースをどう考えれば良いのでしょうか。
「予防接種を受けることにより、副反応のリスクがある一方で、罹患するリスクが減る。確率を計算すると、個人の利益を考えるならば、予防接種を受けるメリットは差し引きゼロである。したがって、面倒だから接種しない人が多い」
「しかし、個々人が罹患しなければ他人に感染させることがなくなるので、個々人が予防接種を受けることによる社会全体のメリットはプラスである」といった場合です。
筆者は医療関係のデータに詳しくないので、副反応の確率等々を用いて接種すべきか否かを論じることはできませんが、筆者個人にとって罹患確率低下メリットの方が副反応リスクよりも大きいのだろうと信じています。
各国の政府がワクチンの接種を決めているわけですし、すでに接種した人の副反応もそれほど多くないようですから。それならば、周囲や社会に迷惑をかけないように、予防接種を受けるべきだろうと考えています。
理屈で考えれば、筆者に順番が回って来る前に大勢の人が予防接種を受けて感染を予防し、感染者数が激減し、その結果として「筆者は予防接種を受けなくても罹患する可能性は非常に小さい」ということになる可能性はゼロではありません。もっとも、そんなことを期待するくらいなら、「順番が回って来るまで罹患しないで過ごせますように」と祈る方がマシですね(笑)。
なお、同様の問題は、予防接種を受けるための金銭的な費用に関しても発生しますが、そちらは接種費用を無料化すれば良いだけなので、比較的簡単な問題なのかもしれません。そちらについては、拙稿『新型コロナのワクチン接種無料化、公費で負担するメリットは何?(https://limo.media/articles/-/19320)』を併せてご参照いただければ幸いです。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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