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住宅ローン破綻、金融機関が容赦なくなるのはどんなときか

LIMO / 2021年3月11日 12時35分

住宅ローン破綻、金融機関が容赦なくなるのはどんなときか

住宅ローン破綻、金融機関が容赦なくなるのはどんなときか

ローン残高と評価額を把握する必要性

「人生最大の買い物」と言われている住宅(マイホーム)は、多くの人がローンを組んで購入しますが、最近はコロナ禍の収入ダウンによる”住宅ローン破綻”がマスコミで取り沙汰されるようになっています。

そもそも、国内における住宅ローンの貸出残高はどれくらいあるのでしょうか。住宅金融支援機構の貸出し分を除いた、いわゆる純粋な金融機関による貸出残高は約185兆円と見られます(2020年3月末、四半期で変動あり)。

185兆円と言われてもピンとこないと思いますが、日本の国家予算が約105兆円ですから(2021年度は106兆円見込み)、その規模の大きさが分かるのではないでしょうか。

“事件扱い”となった住宅ローンの破綻率と破綻予備軍

さて、こうした住宅ローンの破綻率はどれくらいだと思いますか?

結論から先に言うと、2%~4%です(参考資料:NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」、以下同)。金額にすると3.7兆円~7.4兆円です。少し幅が広いのは、当該業界(主に金融機関)から正式データが公表されていないこと、そして競売の範囲が広いためと見られます。

それでも、この公表値に基づけば、破綻率はザックリ約3%、金額にすると約5~6兆円となり、かなり大きな金額です。

さらに、ここでいう「破綻」とは、単に返済が数カ月滞っているというレベルではなく、完全に“事件扱い”された案件が対象です。この“事件扱い”とは、返済不能に陥ったため、(住宅ローンの対象である)住宅が競売に掛けられたり、任意売却を迫られたりした案件を指します。

競売は裁判所から情報公開され、任意売却は信用機関のブラックリストに載ります。事実上、世間に“住宅ローンが返済できませんでした”と公表することになり、多くの場合は自己破産の申請を余儀なくされます。

また、こうした“事件扱い”には至っていないものの、長期間の滞納や将来の返済困難に陥った事例など、いわゆる“破綻予備軍”は前述した破綻件数の3倍程度あると見られています。つまり、既に破綻済みの分を除いても、約10兆円がいつ焦げ付いても不思議ではないということです。

ちなみに、住宅に次ぐ高級消費耐久財である自動車の場合、前述した“事件扱い”と同じレベルの自動車ローン破綻比率、つまり、返済不能でクルマを強制差し押さえされるレベルは0.3~0.5%程度と見られます。金額やローン期間が異なるので一概に単純比較はできませんが、住宅ローンの破綻率の高さが理解できましょう。

厳格な事前審査があるのに住宅ローン破綻は起きる

そもそも、住宅ローンを組む際(金融機関から見ると貸し付けの際)、厳格な審査が行われているはずです。確かに、一昨年に大きな社会問題となったスルガ銀行の不正な過剰融資事件など、個人向け融資を伸ばそうとする金融機関は増えてきました。

それでも、低所得層など返済が滞る懸念がある人に、最初から住宅ローンの融資する可能性は低いはずです。本来ならば、3%とか4%の破綻比率は考え難いのです。しかしながら、現実には住宅ローンの返済に困窮する債務者は後を絶ちません。

その要因として、住宅ローンを組んだ後に、外的要因(自営業者の会社経営不振、投資運用失敗、ギャンブル等の浪費)、健康問題(病気、ケガによる収入減)、職場問題(リストラ、転職の失敗、退職金の減額)、家庭問題(離婚、介護、年金減額)などによって、借入債務者の財政状況が大きく悪化することが挙げられます。

しかも、返済が順調に進んでいたにもかかわらず、気が付いたら返済困難に陥ってしまっていたケースが少なくないようです。今回の一連のコロナ禍の影響で住宅ローン返済計画が大きく狂った人も少なくないはずですが、1年前には全く予想していなかったことだったのではないでしょうか。

「オーバーローン」になったときの金融機関は甘くない

住宅ローンの返済が滞り、いよいよ破綻が迫った時、多くの債務者が“最後の一手”として考えるのが売却による返済です。つまり、今現在住んでいる自宅を売却して、その売却金額を返済に充てるというものです。しかし、そうは問屋がおろさない場合があるのです。

最大の理由は、その自宅に(金融機関の)抵当権が設定されているからです。抵当権が設定されたままでは不動産を(勝手に)売却できません。自宅の売却には金融機関の許可が必要になります。

ここで重要になるのが、「アンダーローン」と「オーバーローン」という状況です。簡単なモデルで考えてみましょう。

たとえば、何らかの理由(リストラや病気、今回のコロナ禍等)によって収入が激減し、住宅ローン残高3,000万円の返済が難しくなったとします。

この時、自宅の評価額(=市場取引額。相続税評価額ではない)が3,500万円の場合、金融機関は抵当権を抹消して売却を承諾するでしょう。なぜならば、金融機関は残額3,000万円を回収できるからです。これが「アンダーローン」です。

しかし、もし自宅の評価額が2,500万円の場合、単純に売却しても金融機関は残債3,000万円を回収することはできず、▲500万円の不良債権が発生します。

金融機関は、この不足分▲500万円の返済を繰り延べたり、新たなローンとして設定したりするような生ぬるいことはしません。自宅は強制的に競売に掛けられ、自己破産を迫られます。あるいは任意売却の手続きが取られますが、いずれにせよ抵当権設定者である金融機関の主導で行われます。

これを「オーバーローン」と称します。“まさか、そこまではしないだろう”、“一定の猶予期間はあるだろう”という希望的観測は甘いと言わざるを得ません。

ローン残高と自宅の評価額を常に注視すべき

こうした「オーバーローン」に陥る可能性を少しでも低くするためには、常日頃からローン残高と自宅の評価額を把握しておくべきでしょう。自宅の評価額に関しては、様々なサイトで大まかな額を調べることが可能です。

ただし、この評価額(=市場取引額)は、買い手と売り手の需要で決まりますから、投資家のニーズ、大きな経済変動、自然災害などで常に変動します。

特に、最後の自然災害による影響は、一定のタイムラグを置いてから表面化するため注意が必要です。ある日調べてみたら、自宅の評価額が考えていた以上に下落していることは決して珍しくないのです。

住宅ローンの返済が順調に進んでいて、この先も滞る懸念がないならば、こうした心配は無用です。

しかしながら、前掲の既に破綻した2~4%の借入債務者も、最初から破綻のリスクに直面していたわけではありません。ある日気が付いたら、住宅ローンの返済が困難に陥っていたというパターンが多いのです。そして、これは破綻済みの3倍程度いると見られる破綻予備軍も同様です。

何の懸念もなく順風満帆な人でも、ぜひ一度調べて見てください。今回のコロナ禍のような危機が突然やって来ても対処できるように。

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