「コロナが怖い」一因は、悲観論に走る評論家やマスコミによるバイアスか
LIMO / 2021年3月14日 19時5分
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「コロナが怖い」一因は、悲観論に走る評論家やマスコミによるバイアスか
世の中には、悲観的な情報が多く流れるメカニズムが存在しているため、我々が接している情報には「悲観バイアス」がかかっているので注意が必要だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
新型コロナを怖がる人が多い一因は悲観バイアスかも
新型コロナを怖がる人が多いですね。筆者は感染症の専門家ではないので、新型コロナが本当に怖いのかを本稿で論じるつもりはありません。そうではなく、「もしかしたら人々が必要以上に新型コロナを怖がっているのかもしれない」という可能性について考えてみよう、というわけです。
そう考える理由は、世の中の情報には「悲観バイアス」がかかっているからです。情報の発信をする人、解説をする人、報道をする人、等々が悲観的な発信をするインセンティブを持っているため、我々のところに情報が届く時には世の中が実際の姿よりも暗く見えるようになっているわけです。
ということは、情報の受け手は「悲観バイアスを取り除いた本当の世の中の姿はどうなのだろう?」と考えてみる必要がある、ということになります。言うは易く、行うは難し、ですが。
以下では、新型コロナ関連に限らず、一般論として悲観バイアスが生じるメカニズムについて考えてみましょう。
「大丈夫」という発言はリスクが大
社内のプロジェクト検討会議で、発言者は「大丈夫です」というより「難しいです」と言うインセンティブを持ちます。「大丈夫です」というと能天気に何も考えていないような印象ですが、「問題点が3つ、リスクが4つあります」などと言えば賢そうな印象を与えることができるからです。
発言者が担当者であれば「大丈夫だと言っていたのに失敗した」と批判されるリスクを負うことは避けたいでしょうし、困難やリスクを強調しておけば、成功した時に「担当者が頑張ったおかげだ」と思ってもらえるかもしれませんから。
したがって、経営者がよほどの決断力を持って「悲観バイアスを修正すれば、このプロジェクトは行けそうだ」と決めないと、なかなかプロジェクトは陽の目を見ない、というわけです。
新型コロナに関しても、情報の発信者には悲観論を述べるインセンティブが働きかねません。「怖くないから恐れるな」と言っている人は大流行した時に過去の発言を問題視されかねないからです。
一方で、「怖いから気をつけろ」と言っている人は大流行しなくても「皆が気をつけたから大流行が防げた」と言えば良いので、過去の発言を問題視されるリスクは小さいでしょう。したがって、「怖い」と発言するインセンティブを持つ人がいるかもしれません。
景気判断に際しても、悲観バイアスには要注意です。儲かっている会社は静かにしています。そうしないと労働組合が賃上げを要求したりするからです。一方で苦しい会社は「今期は苦しいからボーナスは出せない。部品メーカーには値下げを頼む。政府は支援をよろしく」などと大きな声を出します。
「儲かりまっか」と聞かれて「あきまへん」と答えれば無難ですが、「儲かってます」と答えると人々の妬みを買うというリスクもあるでしょう。
したがって、発信された情報だけを見ていると、日本経済は不況だという印象を常に持ちかねません。そこで、景気の現状を知りたければ、人々の発言を聞くだけではなく、しっかりデータを確認する必要があるわけです。
評論家もマスコミも野党も悲観論を述べたがる
評論家は「問題ありません」と言うより「様々な問題点とリスクがあります」と言う方が賢そうに見えますし、顧客も面白がって話を聞いてくれます。
「米国にはこういうリスク、中国にはこういうリスク、国内にはこういうリスクがあるので、来年の景気はとても心配です」という方が、「米国も中国も国内も特に問題ないので、来年の景気は大丈夫でしょう」と言うより話が面白くなることは当然ですね。
後述のようにマスコミが悲観論を好むので、楽観論者はマスコミに出にくい、ということも評論家に悲観論を述べさせるインセンティブとなっているかもしれません。
マスコミも、悲観論を流した方が視聴率や販売数が上がるので、悲観論を好みます。これはマスコミが悪いというよりも、悲観論を流す番組や記事を見たがる視聴者が悪いのでしょうが(笑)。
中には政府を批判するのがマスコミの役割だと考えて、うまく行っていないことばかり流すところもあるようです。マスコミの仕事は政府を監視することであって、批判すべきところは批判するとしても、褒めるべきところは褒めるべきなのですが・・・。
マスコミとは異なり野党は、与党を批判することも重要な仕事でしょうから、世の中で起きている困ったことを取り上げて、うまく行っていることは取り上げない、というインセンティブを持つはずです。
もっとも、これについては情報の受け手もわかっているでしょうから、割り引いて受け取るでしょう。本稿が懸念する必要はなさそうです。
悲観論を商売に使うインセンティブも
「将来は年金がもらえないから、投資で稼がないと」と言いながら投資商品を売りつけようとする事業者がいるかもしれません。
「災害が心配だ」と言って防災用品を売りつけようとする事業者がいるかもしれません。
「悲惨な目に遭った人」の話ばかり並べた上で、保険への加入を勧める事業者がいるかもしれません。
こうした事業者の口車に乗って様々なものを買わされるのは問題ですが、そうでなくても「世の中は心配なことばかりだ」と感じてしまうようであれば、それも問題でしょう。
さて、本稿の最後に質問です。政府の年金運用は儲かっているのでしょうか。損をした時には大きく報道され、儲かった時には小さく報道されるので、政府は年金の運用で損していると考えている人も多いようですが、株価がこれだけ上がっているのですから、儲かっているに決まっていますね。
政府が年金運用で損をしていると考えていた人は、それ以外の点についても悲観バイアスに気をつけてくださいね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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