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電気自動車もさようなら。未来のモビリティ・水素燃料電池車が走る

LIMO / 2021年3月14日 12時35分

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電気自動車もさようなら。未来のモビリティ・水素燃料電池車が走る

「脱炭素」への動きが世界的に加速しています。前回の記事では「ガソリン車よ、さようなら!(https://limo.media/articles/-/22288)」と題し、二酸化炭素(CO2)削減に向けた電気自動車(EV)へのシフト、そして、その課題などについて考えました。

本記事では、そのEVにも「さようなら」と言える可能性を秘めた未来のエネルギー、水素で走る燃料電池車の現状と普及への課題を探ります。

水素燃料電池車の原理

燃料電池車(FCV)は、バッテリーに蓄電した電気で走るEVと異なり、搭載した燃料電池で発電し、電動機の動力で走る電気自動車のことです。アルコール燃料電池車、金属燃料電池車がありますが、最もよく知られ注目されているのが水素燃料電池車(水素FCV、FCVはFuel Cell Vehicleの略)です。

水素FCVは水素自動車ですが、水素自動車にはもう一つのタイプがあります。水素をガソリンの代わりの燃料として用い、エンジン内で燃焼させて走る水素エンジン車と呼ばれものです。

水素FCVと同様にCO2を全く生成しませんが、水素の高い爆発性などの問題があって開発は難航しています。中学校の実験で、水上置換で集めた水素に点火すると、ポンと音を立てて爆発的に燃焼したことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

一方、水素FCVでは、水素と酸素を反応させて電気エネルギーを獲得して走行します。つまり、水素エンジン車とは「走るための原理」が異なるわけですが、その原理は180年も前に見つけられたもので、水の電気分解(水素と酸素に分解)の逆の反応です。

基本的な仕組みとしては、電解質(これには4種類あり、自動車用は固体高分子型)を挟んだ2つの電極の片側に水素を供給し(-極、燃料極)、もう片側の電極には空気中の酸素を供給します(+極、空気極)。

すると、水素のイオン化(2H+)によって放出された電子(2e-)が外部回路を通じて反対側の空気極に流れることで、電流が流れて電気が発生します。空気極では、供給された空気中の酸素(O2)が、外部回路から流れてきた電子(e-)を受け取り、酸素イオン(O2-)になります。

そして、この酸素イオンは電解質膜を移動してきた水素イオン(2H+)と結合し、水(H2O)になります。

このように、化学反応を起こして水と電気を生み出すのが水素FCVの原理です。この時、水が生成されますがCO2は全く生成されません。これが水素がクリーンなエネルギーと言われるゆえんです。

水素FCVの普及率はどのくらいか

ご承知のように、水素FCVはすでに商用化され(トヨタのMIRAI、ホンダのクラリティ Fuel Cellなど)、都バスでは70台の水素燃料電池バスが走っているといいます。

一般社団法人 日本自動車工業会の調べによれば、2019年の乗用車の新車販売台数430.1万台の内訳は次の通りです。

従来車261.4万台(60.8%)

ハイブリッド車(HV)147.2万台(34.2%)

クリーンディーゼル車17.5万台(4.1%)

電気自動車(EV)2.1万台(0.49%)

プラグインハイブリッド車(PHV)1.8万台(0.41%)

水素FCV685台(0.02%)

また、一般社団法人 次世代自動車振興センターによると、2019年の次世代自動車(乗用車)の保有台数は、水素FCV3,695台、EV11,7315台、HV9,145,172台となっています。

このように、水素FCVの普及はまだまだと言えます。しかし、保有台数は2014年の150台から2019年の3,695台へと5年で約25倍に増加しており、今後、水素FCVの普及率がさらに高まることが予想されます。

FCVは日本が世界をリードする技術ですが、欧米や中国も商用車を中心にFCVを強化しています。

たとえば、ダイムラーとボルボが2025年以降、航続距離1000キロメートルを超えるFCVトラックの量産を計画。また、中国も商用車を中心に2035年までに100万台の保有台数を目指していると報道されています。

このように、世界的にも水素FCVの普及が加速しています。その結果、水素FCVの市場は、2030年には円換算で2兆2084億円になるとの予想もあります。

水素FCVの購入補助金

水素FCVは環境性能に優れた次世代型自動車ですが、車体価格が高額という難点があります。そのため、国や自治体では、購入・保有に対する補助金や税制の優遇措置(クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金、自治体主体の補助金、グリーン化特例、エコカー減税)など、普及促進のためにさまざまな対策を行っています。

ちなみに、トヨタのMIRAIのメーカー希望小売価格は710万円〜805万円ですが、エコカー減税、環境性能割、グリーン化特例、クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金を合わせた優遇額は、(グレードにより異なりますが)おおむね140万円前後になるようです。

ただし、エコカーへの優遇措置は各自治体によって異なるので、居住地域で独自の補助金制度があるかどうか確認が必要です。現時点において水素FCVの購入を考えている方は、国や自治体の補助金や税制など、あらゆる優遇措置を活用しましょう。

水素FCVのメリットとデメリット

ここで改めて、水素FCVのメリットとデメリットをまとめます。

メリットは?

    排出されるのは水のみ、CO2排出はゼロで環境に優しい。

    ガソリン車と比べ水素FCVはエネルギー効率が2倍ぐらい高いので、多くの経済的効果が期待できる。

    充電に数時間かかるEVと違い、水素FCVは数分間という短時間で燃料を充填できる。

    EVに比べ航続距離が長い。

    内燃機関ではなくモーターによって駆動するため、エンジンの振動や排気による騒音がない。

デメリットは?

    水素FCV車の燃料電池の電極には、白金などの貴金属の触媒層が担持されているため高価格になる。

    水素ステーションなどインフラの整備が必要(日本の水素ステーションは2019年12月現在で112ヵ所、東京には21ヵ所)。

    水素FCVの燃料電池は、乗用車の実用水準とされる20万kmの耐久性は達成しているものの、タクシーやバス、トラックなどに求められる100万km程度になるには、さらなる耐久性向上が必要とされる。

    水素を製造する過程で多量のCO2が排出されるので、水素製造過程の技術開発が必要。

水素FCVは脱炭素モビリティの主役になるか

水素FCVの普及のためには、人類が長年にわたって築き上げてきた化石燃料によるエネルギー獲得と利用のインフラ設備をやめ、水素エネルギーのインフラを整備しなければなりません。この切り替えは簡単なことではありませんが、これが進めば水素FCVの生産量も増え、その価格も手の届きやすいものになるでしょう。

こうした課題に対し、経済産業省は「水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン」として、水素・燃料電池戦略ロードマップを策定。車体の価格低減や水素ステーションの整備、水素供給価格の安定化、CO2フリー水素の活用に向けたカーボンリサイクルの実用化など、環境問題解決や経済効果が期待できる水素FCV普及を後押しする方策をまとめています。

CO2排出実質ゼロ、枯渇性化石燃料に頼らない脱炭素社会の実現を目指して世界が激しく動く中、次世代モビリティの主役候補として脚光を浴びている水素FCV。まさに100年に一度の自動車産業の革命が起こりつつありますが、その革命の中心にあるのは「水素」という新エネルギーです。

この水素の製造方法や利用、夢の人工光合成などについては、次回の記事で詳しく解説しましょう。

参考資料

次世代自動車(乗用車)の国内販売台数の推移(http://www.jama.or.jp/eco/earth/earth_03_g01.html)(一般社団法人 日本自動車工業会)

EV等 保有台数統計(http://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai.html)(一般社団法人 次世代自動車振興センター)

FCV市場、2030年に2兆2084億円を予想 富士経済(https://response.jp/article/2019/01/17/318157.html)(Response)

MIRAI エコカー対象グレード(https://toyota.jp/mirai/ecocar/)(トヨタ自動車)

水素・燃料電池戦略ロードマップ(https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001.html)(経済産業省)

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