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元・採用ライターが考える「ここがおかしい日本の転職事情」

LIMO / 2021年4月5日 19時35分

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元・採用ライターが考える「ここがおかしい日本の転職事情」

早いもので、もう今年も桜咲く4月となりました。年度初めということで、学生生活に別れを告げ、晴れて社会人となった方も多いでしょう。また、今年度こそは「絶対、転職するぞ!」と心に誓っている方もいるかもしれません。

今回のテーマは、『元・採用ライターが考える「ここがおかしい日本の転職事情」』。派遣業界も含めて、転職業界の裏側をのぞいてみましょう。

年齢制限ってどうなっているの?

自分が採用関連のライターをやっていたのは、5年くらい前のことです。とある大手中途採用サイトのライターを1年くらいやっていました。では、採用メディアにおける年齢制限から見ていきましょう。

よく投稿サイトなどで、中高年の方々が「50社応募したのに全て書類で落ちた。もう絶望だ」と書き込んでいるケースがありますね。ハッキリ言って、絶望することなんて、ありません。これは、まず確実に年齢制限に引っかかっている場合が多いのです。

「え! 年齢制限なんて書いてなかったぞ・・・」と、あなたは思うかもしれません。

そうなんです。これにはカラクリがあって、いまの日本の採用メディアでは年齢制限が書けないのです。2007年10月に雇用対策法が改正され、採用における年齢制限が原則的には禁止となりました。

こんな感じで採用広告の打ち合わせは進行する

先ほど、採用広告で年齢制限はできないと書きましたが、これは「原則」です。例外もあります。

例外のひとつが、たとえば募集を35歳以下としたい場合、雇用対策法の「例外事由3号のイ」が使用できます。この例外を使用する条件は、「職業経験を一切問わない募集であること」「期間の定めのない募集であること(=正社員募集であること)」。

ここからは、採用広告のできる過程を紹介しましょう。

まずライターがクライアント(採用広告主)のところに行って、打ち合わせをしますね。初めは、クライアントの希望をともかく聞くところからスタートします。希望としては、たとえば「35歳以下の若手が欲しい」「法人営業の経験は必須」「最低、MSオフィスは使いこなせること」などなど・・・たくさん出てきます。

一通り聞き終わって、まずライターが確認することは、「それだけご希望があれば、35歳以下とは書けませんね」ということです。前述の例で言えば、「法人営業の経験は必須」が「例外事由3号のイ」の「職業経験を一切問わない募集であること」に引っかかるからです。

通常の場合、企業の人事担当の方は、このことはご存じです。ここで選択肢として、「職業経験」などを外して、「35歳以下」を活かすことも可能ですが、自分の経験では、まずそんなことはありません。これが採用広告から年齢制限の記載が消える「カラクリ」です。

もちろん、雇用対策法においては年齢を基準に採用しないことは禁止されています。ただ実際の企業の採用・選考過程がどうなっているかは分りません。自分は企業の採用担当者ではなく、ただの採用ライターでしたから。

「職場見学会」ってナニ?

ここからは、派遣労働について見ていきます。まず「職場見学会」です。これは派遣で一度でも働いたことのある方にとっては、「基本のキ」ですが、派遣労働の経験がない方もいらっしゃると思うので紹介します。

実は、通常の派遣労働では、労働者派遣法において、事前の面接や個人の特定行為が禁止されています。つまり派遣先(派遣会社ではなく、実際に派遣されて働く企業)担当者は面接が法的にはできないのです。そこで編み出されたのが「職場見学会」という必殺技です。つまり「面接」を「職場見学会」という名前に言い換えるわけですね。

最近は正社員から派遣社員に転向するケースもあると思います。自分も、そのような体験があるので、ここで「働きがいのある派遣先」を見分けるワンポイント・アドバイスを書きましょう。

派遣社員がこなす職務は、正社員以上に個別企業によって異なるものですが、結構、この職場見学会で方向性が分かります。職場見学会の「面接」担当者が人事担当者なら、あくまで一般的な傾向ですが「やりがいのない仕事」のケースが多い。職場見学会の「面接」担当者が、自分の所属するプロジェクト担当者の場合の方が「当たりのケース」が多い。

この採用主体を人事ではなく現場が主導するカタチは、実は、いま巷でとやかく噂されている「ジョブ型雇用」に近いイメージではないでしょうか。そんな気がします。

「見えない化」を突き進む日本

さて。マトメです。もし自分が応募する立場だったらという前提で考えてみます。自分も中高年ですから、普通に応募したら何十社も書類審査を通らないかもしれません。ただ、いまは「マトメて応募」なんて便利なボタンがありますから。100社くらい応募するのはカンタンですよね。

ただ、このことを俯瞰して考えると、日本中でそんなことをやっているわけです。ホントに「壮大なムダ」だと思います。結局、タテマエばっかり言っているから、そうなる。ハッキリ言えば、年齢制限したいなら、そう書けばよい。派遣でも面接が必要ならガンガンすればよい。

日本の社会制度は、結果としては「見える化」の真逆の「見えない化」を突き進んでいる気がします。そういう根本的なことを考えるのも、時には大切だと思います。

ちょっと話が脱線しますが、採用ライターが書きたくない職種があります。

自分の場合は「ドライバー」と「保育士」でした。応募が来ないからです。応募が来ないから原稿を修正する。それでも来ない。ただこれも、いまの潜在保育士数は70万人以上で、保育士登録者の6割以上ですから。テキストを修正したって、来やしません。根本的な問題とは、そういう事象だということです。

問題の本丸はやはり「新卒一括採用」だと思います。あとは雇用流動化を阻害する「整理解雇の4要件」。これが、正規と非正規の分断も生み出しています。ともかく日本の労働市場は問題がありすぎて、疲れます。当分、採用ライターはやりたくありません。

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