「1億円」の老後資金、普通のサラリーマンなら何とかなる理由
LIMO / 2021年4月11日 19時35分
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「1億円」の老後資金、普通のサラリーマンなら何とかなる理由
老後資金は1億円必要だが、普通のサラリーマンは何とかなるので過度な懸念は不要だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
老後資金は1億円必要
老後資金は1億円必要だ、と言われます。ギョッとする数字ですが、ちょっと計算してみれば、概ねそれほどの額が必要であることは簡単にわかります。
老夫婦2人の生活費が毎月25万円かかるとすると、年間で300万円になります。60歳で定年退職して92歳まで生きると9600万円必要だという計算です。
あとは、万が一に備えて400万円くらいは持っておきたいですね。何事もなければその分は相続されて葬儀費用になるはずです。
何歳まで生きるかわからないので、正確な金額の算定は無理ですが、60歳女性の平均余命は29年強なので、平均余命より少し長生きしても大丈夫なように32年分を予定しておきたいところです。
あるいは、医学の進歩で平均寿命が伸びるかもしれません。あるいは、妻が夫より若ければ、夫が60歳で定年退職した時に60歳以下かもしれませんから、いずれにしても32年分というのは的外れな計算ではないでしょう。
現役時代に1億円持っている人は稀なのでご安心を
現役の読者は「自分は1億円も持っていないが、大丈夫なのだろうか」と不安になったかもしれませんが、考えてみましょう。今の高齢者で、現役時代に1億円もっていた人は非常に少ないはずなのに、高齢者たちの多くは何とか暮らしているわけで、自分たちも現役時代に1億円なくても大丈夫なのです。
その最大の理由は、公的年金が受け取れるからです。以下では、主にサラリーマンと専業主婦の夫婦について考えることにします。
自営業者は人によって収入等々が全く異なるので一般論として論じることが困難だからです。
強いて一般論を言えば、自営業者は公的年金がそれほど多くありませんが、定年がないので元気な間は現役並に働いて稼ぐことができますから、長く働いて「老後」を短くするように努めましょう。
年金だけで暮らせるが、ささやかな贅沢は楽しみたい
厚生労働省によれば、標準的なサラリーマンと専業主婦の夫婦は、65歳から死ぬまで毎月約22万円の公的年金が受け取れます。上記の25万円には少し足りませんが、足りない金額分くらいは退職金等々で何とかなるでしょう。つまり、60歳で定年になってから65歳まで働いて何とか生活費を稼げば、その後は何とかなるのです。
さらに言えば、25万円は老後の生活に必要なのではなく、22万円で最低限の生活はできるけれども、ささやかな贅沢を楽しむためには25万円くらい欲しい、ということだと考えれば、老後資金が貯まっていなくても、退職金が住宅ローンで消えてしまっても、老後に路頭に迷う心配はなさそうです。
もっとも、老後は自宅に住むことが望ましいので、現役時代に住宅を確保しておくことが前提でしょうね。そうでないと、長生きしている間にインフレが来た場合、ただでさえ生活費がかさむのに借家の家賃が値上がりしていくわけですから、そうしたリスクは避けておきたいですね。
少子高齢化で年金支給額は減ると言われているが・・・
日本の公的年金制度は、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」となっています。現役時代に積み立てた資金を高齢者になってから受け取る「積立方式」とは一長一短の制度です。
後者は、インフレに弱いという短所があります。現役の時に積み立てた資金を老後に受け取るまでの間にインフレが来たら、受け取る現金の価値が目減りしてしまうからです。インフレに負けない運用ができれば良いですが、それは容易なことではないのです。
前者と比べた後者の長所は、少子化の影響を受けない点です。それでも、平均寿命が伸びていくことには影響されます。20年生きる予定で老後資金を取り崩していたら、30年生きる時代になってしまった、というリスクは避けられないからです。
一方で、前者はインフレに強いという長所があります。インフレになると現役世代の給料が増えるので、年金保険料を値上げすることが容易であり、値上げして集めた保険料を高齢者に配れば良いわけです。
前者の欠点は、少子高齢化に弱いことです。少数の現役世代から集めた年金保険料を多くの高齢者に配るわけですから、1人あたりの受取金額は減っていかざるを得ません。
そうしたことから、「今の若い人は老後になっても年金が受け取れない」という噂が流れたりしていますが、さすがに受け取れないことはないでしょう。若干減ることは覚悟する必要がありますが、その程度です。
ちなみに、年金がある程度減ることは、少子高齢化ですから当然のことです。「政府が年金制度を改悪した」などと考えるべきではありません。誰が総理大臣をやっても、年金を減らさずに制度を維持することは不可能なのですから。
一方で、高齢化ということは、人々が長生きするということですが、それは単に寿命が伸びるというだけではなく、健康寿命も伸びるはずです。そうであれば、「高齢者になっても元気な間は働けば良い」ということになるわけです。
平均寿命が短かった時にできた制度が変更になるのであれば、それと平行して我々も平均寿命が短かった頃の定年の年齢にとらわれず、かつての定年の年齢よりもはるかに長く働けば良いのです。
高度成長期の人々は、15歳から55歳まで働いて、定年を迎えて短い余生を楽しんで他界しました。人生の半分以上は働いていたわけです。そうであれば、人生100年時代の人々は、20歳から70歳まで、あるいはさらに長く働いて当然だ、と発想を転換することが重要でしょう。
老後資金が心配なら、長く働けば良いのです。寿命が伸びた分だけ健康寿命が伸びたとすれば、「老後」は伸びていないのですから。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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