「報ステCM炎上」「名誉男性」…女性をめぐる”ねじれ”と日本の弱点
LIMO / 2021年4月18日 20時5分
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「報ステCM炎上」「名誉男性」…女性をめぐる”ねじれ”と日本の弱点
今年はコロナ禍、そして五輪問題と、さまざまな問題が山積みの波乱の年になりそうな予感がします。そのなかでジェンダー関連の課題も急浮上してきました。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長の失言から始まって、「渡辺直美さんのブタ=オリンピッグ問題」、テレ朝の「報ステCM炎上」。さらに最近では「名誉男性」というワードも注目を集めています。今回は日本のジェンダー問題や女性の働き方について考えていきます。
炎上狙いとしては最高の報ステCM
まず、初めはテレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の若者向けCM動画が「女性蔑視」「若い女性をバカにしている」と炎上した件です。
CM内容としては、「これは報道ステーションのCMです」というテロップに続いて、仕事帰りの若い女性がモニター画面に向かって話しかけるところからスタート。
「リモートに慣れちゃってたらさ、ひさびさに会社行くと変な感じしちゃった」「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」というような“意識の高い"女性の台詞が続き、最後に「こいつ報ステみてるな」というテロップで締め括られていました。
感想としては、炎上狙いとしては最高品質のCMだと思いました。地上波の世界は、結構ウェブの世界を模倣・追従していますし、最後のテロップなんてメガトン級の地雷ですよね。「お見事!」としか言いようがありません。
「財務次官セクハラ問題」を総括できないテレビ朝日
そもそも、意識の高い女性が地上波の、それも報ステを見ているんですかね。とてもギモンです。
しかし、この問題は、いろいろなところで言及されているので、角度を変えて2018年の「財務次官セクハラ問題」の話を蒸し返してみます。まだ、ご記憶の方も多いと思いますが、これは当時、テレ朝女性記者が取材中のセクハラ証拠音声を「週刊新潮」に持ち込み・公表した事件です。最終的には財務省の福田淳一事務次官が辞任しました。
当時「取材中のオフレコ録音データを公開するなんて言語道断」といった、よく分からない議論が盛んに行われていました。単に「業務中のセクハラ証拠音声」なんですけどね。
セクハラの証拠音声を相手(セクハラ加害者)に許可を取って、録音するなんて聞いたことないですけど。“報道倫理"こそが最優先というならば、それはブラック企業の理屈そのものです。
結局、あの問題はテレ朝が好きな“神聖な報道"の問題などではなく、単なるテレ朝という企業の“ガバナンス"の問題だったのです。セクハラ後の初動で、女性記者の相談に上司が適切に対応できなかったのですから。
テレ朝の深夜記者会見でも報道局長が出てきて、“報道とセクハラ"が整理しきれていない玉虫色の発言をしていました。
そもそも企業ガバナンスの問題なのに、なぜ報道局長なのでしょうか。結論を言うならば、テレ朝は自社の女性記者を守れなかった。そして、そんな無反省な企業が3年後につくった、見事な炎上CMというのが個人的感想です。
ナイーブすぎる「名誉男性」論
いまの日本のジェンダー関連の問題は、結構、錯綜していて発言をためらってしまうような感じが、ちょっとします。たとえば、最近、話題になっている「名誉男性」というワードがあります。
これは辞任した山田真貴子・前内閣広報官が“飲み会を断らない女"と発言していたことなどが契機となったもので、「男性社会に迎合して成功した女性=名誉男性」という意味です。
たとえば人気コラムニストの河崎環さんは、“飲み会を断らずにエラクなった女たちに走った激震"と題して、40代・50代の一部女性に走った「私たちも男性社会に加担していたのでは!?」という衝撃について書いていますね(出所:PRESIDENT online、2021年3月12日(https://president.jp/articles/-/44050))。
しかし、男性の自分にとっては、これが正直、よく分からない。そういう古い社会(男性社会)の枠組みが強固である以上、そこに適応(迎合)するのは仕方ないのでは・・・と、書くと、炎上しそうで、この辺が日本のジェンダー問題のややこしいところなんですよね。別に、その古い社会の枠組みを肯定しているつもりは、全くないのですが。
ともかく「ワタシって、もしかして名誉男性!?」なんて思う女性が、名誉男性のわけがないだろう、という気がします。少なくとも、辞任した前内閣広報官には自分が名誉男性という意識はないと思いますけどね。同化するということは、そういうことだと思います。
もっとシンプルに考えるべきでは
結局のところ、ジェンダーギャップ国際比較において120位そこらの日本で、たとえば“名誉男性"なんていうナイーブな議論をしていても、ラチがあかないという気がします。問題はそこではない気がします。優秀な女性たちが「ワタシって、もしかして名誉男性!?」と悩むのはナンセンスでしょう、やはり。
大きな話としては、結局「なぜジェンダーレスが必要なのか」ということなのだと思います。私見としては、現在の世界はジェンダーレスを含めて多様性に準拠した社会の方が、競争優位性があるということに尽きます。
ザックリ言ってしまえば、日本の「失われた20年(30年?)」の根本原因は、同一性に準拠した「モノづくり社会(ソサエティ3.0)」から社会を更新できていないからでは。つまりジェンダーの問題もその一つという気がします。
ここで問題です。日本人の好きな“まずは、問題をひとつずつ解決していこう"という方法論が、この課題が山積みする国で最適解なのか、ということです。
たとえば、ジェンダーの問題だけを切り出して、深化させて議論することに、どれだけの意味があるのか。そんなことをしていたら、課題解決まで何百年もかかるのではないか。やはり、まず大元から変える必要があるのではと思えるのです。日本の栄光を支えた“カイゼン"という方法論は、もはや過去の遺物なのではないか、そんな気がします。
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