小学生の1人1台端末「GIGAスクール」 どのように始まっているか
LIMO / 2021年4月23日 19時35分
小学生の1人1台端末「GIGAスクール」 どのように始まっているか
「巣ごもり消費」「ソーシャルディスタンス」「3密」。これらの言葉はこの1年で広まり、すっかり定着しました。コロナ禍に関する新しい言葉が次々に誕生したのは、日常生活が一変してしまったことの表れでもあります。
子どもたちの学びも急速に変わりつつあります。昨年の臨時休校時には、多くの保護者から「家にいても学習機会の確保を」と、オンライン授業のようなICT機器を駆使した学びを求める声があがりました。
それを機に、文部科学省はICT教育の環境整備を加速。2021年度は「GIGAスクール元年」と位置づけられ、国公私立の小学校・中学校・特別支援学校における教育現場でPCやタブレット端末の利用が開始されています。
急激に進んだGIGAスクール構想の実施
文部科学省から、先端技術を使った新しい学びとして「GIGAスクール構想」が打ち出されたのが2019年12月。その公表から間もなく新型コロナウイルスの感染拡大が起き、昨年2月末には全国一斉臨時休校が行われました。
突然決まった臨時休校中、大問題となったのが子どもたちの学習機会の確保。これを受け、GIGAスクール構想実現の動きは急激に進みます。
具体的には、2020年度中に公立学校に通う子どもに対してICT機器の「1人1台配布」を目指すとされ、筆者の子どもたちが通う学校でも2020年度中の2月に児童全員にChromebook(クロームブック)が配布されました。
年度末ということもあり、本格的な利用は新年度(2021年度)からということでしたが、先生からChromebookを渡された子どもたちは大いに盛り上がっていたようです。
ちなみに、文部科学省が推奨するICT機器は、先述のChromebook、iPadそしてWindows PCの3種類で、どれを選ぶかは各自治体が判断しています。
iPadはスマートフォンと同じように直感的に操作できるため低学年の児童でも簡単に扱いやすい面があります。しかし、早い時期からキーボードを打つ方が子どものためになるという考え方もあります。
パスワード設定の重要性も説明
こうして始まったGIGAスクール元年ですが、機器が配布されたからすぐにプログラミング教育に入るというわけではありません。筆者の子どもたちは、配布される前に担任の先生から「パスワード決め」が宿題として出されました。その際、以下のような決まり事をいわれたそうです。
個人情報と直結する誕生日や住所を使わない
数字だけの組み合わせにしない
アルファベットの大文字と小文字と数字を取り入れる
保護者にパスワードを書いた紙を保管してもらう
学校では、安易なパスワードだと外部からの攻撃を受けた際にすぐに漏洩する危険性があるなど、数字を使って分かりやすく説明されたとのこと。現実的な問題を教え、セキュリティに対する意識を啓蒙する狙いを感じました。
生徒が家で作ってきたパスワードは先生が目を通し、「安全性に問題あり」という判定を受けた場合は、もう一度考え直す作業をした子もいたようです。
子どもの理解度に合わせた学習はまだこれから
スマートフォンやタブレット端末が普及してきたこともあり、タッチパネルの扱いは子どもでも経験済みです。その一方、ノートパソコンのようにキーボード操作を必要とする機器は個人差が出やすく、プログラミング教室に通っている子が、経験のない子に「ここはこれを打つ」と教える場面も頻繁にあるようです。
今日の公教育ではアクティブラーニングが積極的に導入されていますが、一方的な講義ではなく「教え合う」「学び合う」ことが推奨されています。しかし、上記のようにキーボード操作などを扱いになれている子が分からない子に教える状況になりやすい、というのはアクティブラーニングの考え方とは離れてしまう懸念があります。
ただし、全員が「Yahoo!きっず」で調べたいものを検索をしてみるなど、楽しみながらICT機器と向き合っていると筆者の子どもたちは教えてくれました。
では、本格的にICT機器を使った学習が行われているのかといえば、まだまだこれから。現状では昔ながらの黒板を使った授業が主流です。昨年の臨時休校のような有事の時に備えて、生徒児童にICT機器を配布・設定できるまでになった、というのが実情と言えます。
つまり、残念ながら、全国津々浦々の公立小中学校で通信教材会社が行っているような「タブレット端末で子どもの理解度に合わせた学習」がすぐできる状況ではありません。
しかし、全国でGIGAスクール環境が整えば、都市と地方の子どもの教育機会格差が是正されるという期待も高まってきます。もちろん、公教育という観点から私立学校並みとはいかないでしょう。しかし、これまで懸念されていた地域格差が縮小へと向かう可能性は大いにあります。
多くの親が待ち望んできた「子どもに合わせた学習システムの構築」「休校時でも学校にいる時と変わらず勉強時間を確保できる」ことが実現可能になりつつあり、日本の公教育の変革期を迎えようとしています。
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