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年金受給開始が70歳になっても大丈夫か? 少子高齢化の二面性

LIMO / 2021年4月25日 19時35分

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年金受給開始が70歳になっても大丈夫か? 少子高齢化の二面性

少子高齢化が続くと年金支給額は減額されざるを得ませんが、長く働くことで老後を短くすることができれば老後資金の不安は大幅に和らぐはずだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

日本の公的年金は賦課方式

日本の公的年金制度は、現役世代が高齢者を支える仕組みとなっています。これを「賦課方式」と呼びます。自分たちが支払った年金保険料を運用して自分たちの老後に年金として受け取る「積立方式」と比べ、一長一短と言えるでしょう。

賦課方式が優れているのは、インフレに強いことです。インフレになると必要な老後資金が増えてしまいますが、年金支給額も概ねその分だけ増やすことができるのです。それは、現役世代の給料もインフレに伴って上がるため、現役世代から徴収する年金保険料を値上げすることができるからです。

日本ではインフレ率が低いため、このメリットが実感しにくいですが、将来インフレ率が高まった場合に備えた「保険」だと考えれば、決して小さくない長所だと言えるでしょう。

一方、賦課方式の短所は少子高齢化に弱いことです。少子化で年金保険料を支払う現役世代の人数が減っていき、高齢者が長生きするので年金を受け取る人は増えていきます。したがって、1人あたりの高齢者が受け取れる年金が減っていくのです。

毎月の受取額が減っていくのか、年金受給開始年齢が引き上げられていくのか、といった判断はあり得ますが、いずれにしても年金受け取り総額が減ることは避けられません。

野党やマスコミが「政府による年金制度改悪だ」と批判するかもしれませんが、それは的外れです。誰が総理大臣をやっても、少子高齢化が止められない限りは同じことをせざるを得ないからです。余談ながら、年金問題については与野党の政争の具とせず、知恵を出し合ってより良い制度の構築を目指すべきだと思います。

もっとも、年金受取額が減ることはあっても、受け取れなくなることはありません。「若い人は老後は年金がもらえないのだから、年金保険料を支払うのは無駄だ」などという人がいますが、そんなことはないので、自営業者等々はしっかり年金保険料を払いましょう。この点については重要なので、別の機会に詳述することとしましょう。

健康寿命が伸びているから長く働こう

国民全体として高齢化が進んでいるということは、高齢者が長生きをするようになっているということです。その際には、単に長生きをするというだけではなく、健康寿命も伸びているはずです。

実際、今の高齢者は高度成長期の高齢者より遥かに元気です。サザエさんの登場人物である波平氏は54歳という設定ですが、波平氏より元気な高齢者は大勢います。

当時の定年が55歳だったのは、「バリバリ働くのが難しいからお引き取りいただく」ということだったとすれば、波平氏より元気な現在の高齢者は大いに働けば良いわけです。ちなみに筆者もあと1年で高齢者ですが、今のところ波平氏より元気なので、しばらくは仕事を続けるつもりでいます。

高度成長期の労働者は、15歳から55歳まで働いて、しばらく余生を楽しんで他界しました。人生の半分以上を働いていたわけです。農業従事者はもっと長く働いていたはずです。それを考えれば、人生100年時代の若者は、20歳から70歳まで働くのは当然のことでしょう。20歳から60歳まで40年間働いて、残りの60年間を他人に食べさせてもらおうと考えるのは虫が良すぎます。

もちろん、健康上等々の事情があって70歳まで働けない人もいるでしょうから、そうした人は生活保護等々の支援を受ければ良いわけで、働ける人は働こう、ということですね。

70歳まで働けば老後の生活は大丈夫

自営業者については、本当に人それぞれですから何とも言えませんが、定年がないので元気な間は現役として大いに稼ぐことができるわけで、70歳まで働けば老後の生活は何とかなる人が多いでしょう。

サラリーマンは、定年後に働いたとしても現役時代ほど稼ぐことは難しいでしょうが、「60歳から70歳までの10年間は定年後再雇用等々によって生活費を稼ぐ」くらいは可能でしょう。

70歳まで生活費を稼いで退職金に手をつけずに年金も受け取らずに生活すれば、それ以後の老後資金については比較的余裕があるはずです。

公的年金は、65歳から受け取るのが原則ですが、70歳まで待ってから受け取ることも可能で、その場合には毎回の受取額が42%増額されます。標準的なサラリーマンと専業主婦の夫婦が老後に受け取れる公的年金は約22万円ですから、その1.42倍の年金を受け取れるならば、70歳以降の生活はまず安泰でしょう。

少子高齢化により年金額が1割か2割減るとしても、減った金額の1.42倍を受け取れるならば、何とか暮らせるはずですし、退職金等を少しずつ取り崩してささやかな贅沢を楽しむこともできるでしょう。

政府の方針として、年金額を減らすのではなく、支給開始年齢を遅らせるという決定がなされるかもしれませんが、仮に70歳からの受け取りが原則となったとしても、70歳まで働いて稼げば大丈夫でしょう。

老後資金の不安は多くの人が持っていますが、60歳で定年を迎えて以降は働かないという前提で計算するから不安になるのです。上記のように、人生の半分働くという発想で70歳まで働くことを前提に計算すれば、それほど不安を感じる必要はないはずです。

物事には二面性があります。少子高齢化には「公的年金の受取額が減る」という側面と、「従来の定年である60歳を過ぎても元気なので70歳までは働ける」という側面があるわけです。前者だけを取り上げて不安におののく必要はありません。後者も併せて考えれば、何とかなるはずです。

「年金が期待できないから投資で稼がなければ」などという脅し文句で投資商品を売りつけようとする輩や、不安を煽って顧客の関心を惹こうとする評論家等々の影響で無用な不安に怯える必要はありません。冷静に考えれば、普通のサラリーマンは何とかなるわけですから。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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