心が折れる職場の「リアリティショック」とメンタルの保ち方
LIMO / 2021年5月10日 20時15分

心が折れる職場の「リアリティショック」とメンタルの保ち方
新年度が始まって約1カ月。入社式や研修が終わり、”思っていたのと違う”というモヤモヤした気分に陥る新入社員が出てくる時期でもあります。この理想と現実の違いに脱力感や喪失感を抱く心理状態は、「リアリティショック」と言われ、新入社員や転職者が短期間で辞めてしまう原因にもなるようです。
接客改善業務に携わる筆者は、しばしばこうした事例を見聞きすることがあります。そこで本記事では、心が折れそうな状態を乗り越えて「よかった」と感じている会社員の人たちに聞いた、メンタルのバランスを保てた理由を紹介します。
「リアリティショック」とは
新卒や転職で入社する前には、「新しい職場は、こんな感じかな?」「こういう仕事を任されるんだろうな」と、期待と想像を膨らませることでしょう。しかし、入社してみたら「仕事を任せてもらえない」「手取り足取り教えてくれると思っていたのに…」といった現実に直面する人は少なくありません。
このように、想像や期待と現実のギャップを実感し、衝撃を受けることを「リアリティショック」と言います。
パーソル総合研究所とパーソルキャリアが一昨年実施した調査によると、「リアリティショック」は入社後1か月ぐらいまでに感じることが多く、入社3年目には80%近くにまで達し、その後の会社への満足度にも大きく影響するようです。そして、こうした「リアリティショック」からネガティブな思考に陥り、早期退職につながるケースもあります。
「リアリティショック」から立ち直った経験
会社の同期やプライベートの友人のアドバイスなどで、「リアリティショック」から立ち直れることがあります。以下、実際に「リアリティショック」に直面した経験と、その負の感情をやわらげることになった出来事について見ていきましょう。
新卒入社・Aさん(男性)のケース
SNSを見てたら、みんなヤル気がある感じでキラキラしてて、虚しくなりました。そんなときに地元での飲み会があり、先輩たちに会社のことをグチったら、「お前、今まで理想通りや期待以上だったこと、どんだけある?」と聞かれ、ハッとしたんです。
そして、先輩たちにも同じような時期があったんだと安心しました。仕事を辞めようかと思っていたのを踏みとどまることができ、いまは充実した日々を送っています。
新卒入社・Bさん(女性)のケース
社内研修後に同級生で飲み会をしたら、みんな楽しくやってるみたいでヘコみました。でも、そのなかの1人が、「何が不満なのか」「解決方法はないか」を書き出すことをアドバイスしてくれたんです。
実行してみると、不満や解決方法がクリアになり、解決できないことは我慢する方法を考えるようになりました。そうするうちに、落ち込んでいた気分が少しずつ消えていったんです。
新卒入社・Cさん(女性)のケース
同期で集まって、よく会社の悪口やグチを言ってました。そのうち3人が、3か月も経たないうちに会社を辞めてしまったんです。
でも、その後が最悪だったみたいで、「面接で前の会社を短期間で辞めた理由をしつこく聞かれるし、それが原因なのか次が決まらない」と…。仕方なくバイトでつなぐ子もいるのを見て、理想ばかり追いかけていた自分に気づきました。
「リアリティショック」時にメンタルを保った工夫
こうした自然な流れで「リアリティショック」をやわらげてくれるような出来事があればありがたいですが、なかなかそうもいかないのが人生です。次は、自分自身でメンタルを保った人たちの対処方法について見ていきましょう。
新卒入社・Dさん(女性)のケース
「近いうちに絶対に会社を辞めてやる!」と思って付け始めた会社への「グチメモ」が、メンタルを保つことにつながりました。内容は、ムカつく上司のこと、自分が怒られて納得できなかったことなど。
ある日ふと見返したら、「なんだ、こんなことにムカついてたのか」と感じることも多く、読み終わると気分もスッキリしていました。ムカつくことや納得できない気持ちの多くは、時間とともに落ち着くことが実感できるので、不満を抱えている人は試してみるといいかもしれません。
新卒入社・Eさん(女性)のケース
想像以上に人間関係が殺伐としていて、仕事も見よう見まねで覚える感じが嫌で、仕事を辞めたいと友達に相談。すると、「我慢するときは、キャラを作ってなりきる」とアドバイスしてくれたんです。
そこで、嫉妬されて孤立している美人キャリアウーマンを演じることにしたんです。それが結構面白くて、今では現実逃避したいときにいろいろなキャラクターになりきって頑張っています。給料は悪くないので、一時の感情で辞めなくてよかったと思っています。
転職・Fさん(男性)のケース
せっかく転職したのに、仕事を任せてくれず嫌気がさしていました。でも、家賃や生活のこともあり、辞めることもできず…。こんなハズじゃなかったという思いを、「自分ならこんな仕事ができる」「改善点は、ここ」などという具体的な内容で、日記に書くようになりました。
書くとモヤモヤが吐き出せたし、社内会議で発言するのにも役立ち、次第に仕事も任せてもらえるようになりました。だから日記は今も続けています。
乗り越える方法を試してみることが大切
「リアリティショック」を受けたときには、仕事が楽しいと感じられず、会社を辞めることまで考えたという人もいましたが、数年以上経った現在は、仕事を続けてよかったという人がほとんどです。
こうしたことから「リアリティショック」を受けても、すぐに仕事を辞めることは得策ではないと言えるでしょう。今、心が折れそうになっている人は、今回紹介したメンタルを保つ方法なども試しながら冷静に対処してみてくださいね。
参考資料
就職活動と入社後の実態が独自調査で明らかに(https://rc.persol-group.co.jp/news/201905220001.html)(株式会社パーソル総合研究所、パーソルキャリア株式会社)
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