夫が独立・起業した!「保険と税金」負担増はどのくらいか
LIMO / 2021年4月30日 18時30分
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夫が独立・起業した!「保険と税金」負担増はどのくらいか
働き方の多様化が進むこんにち。
「場所や時間にとらわれずに仕事をしたい」「スキルやアイデアを生かし、自分でビジネスを立ち上げたい」
コロナ禍で働き方を見直す人が増える今、柔軟な就労環境を求めて独立・起業を考える人が増えていくかもしれませんね。
さて、会社を辞めて起業、あるいはフリーランスになると、厚生年金から国民年金、会社の健康保険から国民健康保険へと切り替わることになります。
妻が専業主婦だった場合は、それまで、第3号被保険者として社会保険料の支払いはありませんでしたが、夫が会社員でなくなると、妻は第1号被保険者となり社会保険料の支払いが発生します。
これによって、家計の負担がどのくらい増えるのかを検証してみましょう。
会社員→起業で社会保険はこう変わる
会社員の場合、会社の健康保険と厚生年金に加入します。
各保険料は労使折半(会社が半分負担)となり、自己負担は1/2となります。また、配偶者が会社員の扶養(専業主婦など)となっている場合は、その配偶者はそれぞれの保険料を負担する必要がありません。
これは、会社の健康保険が扶養している家族分もカバーしているからであり、年金については、会社員(第2号被保険者)に扶養されている配偶者(第3号被保険者)となるからです。
会社員でなくなると、国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。これらは扶養という概念がないために、その配偶者も個別に保険料を支払う必要があります。
例として夫:会社員、妻:専業主婦家庭を想定して、夫が会社を辞めて起業し、妻は専業主婦のままだった場合に、社会保険がどう変わるのかを、表で見てみましょう。
筆者作成
拡大する(/mwimgs/a/d/-/img_ad57da69d0e3be3e4b01a44ba96e0dd746262.jpg)
保険料全額というのは、会社員であれば労使折半であったものが、国民健康保険、国民年金は全額自己負担という意味です。
国民健康保険は市町村ごとに所得や家族の人数によって算出され、世帯単位で徴収されます。国民年金の保険料は一律で毎年改定が行われ、個別に徴収されます。
次では、これらの社会保険の負担がどのくらい増えるのかを検証していきます。
どのくらい負担が増えるのか検証
次のケースを想定し、社会保険の負担がどのくらい増えるのか具体的な金額を出してみましょう。
会社を辞めて起業したAさん一家
Aさん:会社員→起業(35歳)
妻:専業主婦(35歳)
子:2人(5歳と2歳)
※東京都江戸川区在住、会社員時代と起業後の年収は500万円で変わらないものとします。
会社員時代
全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入
厚生年金の保険料率9.15%※
健康保険の保険料率4.92%※
雇用保険の保険料率0.3%
※それぞれ1/2にした数値(令和3年度、東京都)
すべての保険料率を合計すると14.37%となるので、年収500万円の場合、社会保険料は71万8500円。約72万円となります。妻の社会保険料はないので、世帯合計でも約72万円となります。
起業後
国民健康保険料(世帯合計)
58万2570円
※江戸川区国民健康保険料シミュレーションを使って計算
※経費を20%として所得を計算
国民健康保険料の求め方
所得割額(※1)+均等割額(※2)=年間保険料(上限あり)
※1 加入者の所得に応じて負担
※2 加入者一人ひとりが均等に負担
国民年金保険料
1ヵ月あたりの保険料1万6610円(2021年度)
年間19万9320円×2人=39万8640円
国民健康保険料と国民年金保険料の世帯の合計は98万1210円となりました。
以上を踏まえると、この世帯のケースでは、会社を辞めて起業した場合、社会保険料の負担がおよそ26万円増えることになります。
年金額への影響は?
年金が厚生年金から国民年金に切り替わったことで、将来もらえる年金額も変わってきます。厚生年金は2階建てといわれるように、国民年金の上乗せとして受け取れる金額が多くなります。
国民年金の満額は78万900円(2021年度)となっており、厚生年金の受給者の平均年金額は175万2000円となっています。※
※厚生労働省年金局「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000706195.pdf)」より
厚生年金の受給額は給与の額に応じて支払った保険料によって異なりますが、それでも加入者は国民年金だけを受給する場合よりも多く受けとれるわけです。しかも、支払う保険料は労使折半のため半分で済みます。
さらに、扶養されている配偶者の立場に立つと、もらえる年金額は同じなのに、配偶者が会社員であれば保険料は徴収されず、起業家やフリーランス、自営業者の場合は保険料を支払わなければなりません。
このあたりを不公平に感じる人も多いと思います。それだけ、会社員は優遇されているといえるのかもしれません。
フリーランスの備えとは
起業やフリーランスによって、会社員から自営業者になった場合に、社会保険の負担増以外にも懸念されることが二つあります。
一つは健康保険の傷病手当金や出産手当金がなくなることです。
傷病手当金であれば、病気やケガで会社を休んだ場合に、休んだ日から4日目以降、それまでもらっていた給与の「およそ3分の2」が、休んだ日数分支給されます。同一の傷病で最長1年半支給できます。
国民健康保険にはこれらの制度がありません。そのため、病気やケガで働けなくなった場合は、貯金を切り崩したり、民間の保険に加入して備えたりする必要があります。
こうしたケースに対応するの民間保険として「就業不能保険」や「所得補償保険」があります。充分な貯蓄ができていないフリーランスや自営業者は、これらの保険を検討してみるといいでしょう。
もう一つは、退職金がなくなることです。これは仕方のないことですが、自助努力が必要となります。
国民年金の付加年金やiDeCoなどで備えることを検討するとよいでしょう。
付加年金とは国民年金の保険料に400円上乗せすることで、将来もらえる年金に、200円×納付した月数分が付加されるというものです。
iDeCoは自営業者であれば、掛金の上限が月額6万8000円(※)となり、全額所得控除となるので、節税効果を期待しながら、「自分で作る退職金」を準備していくことができます。
※付加保険料、または国民年金基金の掛金との合算
「人生100年」時代を見据えた働き方
ここまでの内容では、会社員のメリットばかりが浮き彫りになりましたが、起業やフリーランスとして仕事をすることにも大きなメリットがあります。一番のメリットは定年がないことです。
人生100年時代、働ける年齢まで働き続けることは今後さらに重要になってくるでしょう。
年金が少なくても他に収入があれば、豊かな老後を過ごすこともできるのです。
これからますます働き方が多様化してくる時代、会社員と起業家の二足のわらじも可能かもしれませんね。
参考資料
全国健康保険協会(協会けんぽ)「 令和3年度保険料額表(令和3年3月分から) 」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r03/r3ryougakuhyou3gatukara/)
江戸川区ホームページ「国民健康保険料の計算方法」(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e053/kurashi/iryohoken/kokuho/hokenryou/keisan/hokenryo_kimarikata.html)
江戸川区国民健康保険料シミュレーション 江戸川区公式ホームページ(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/edg/simulation/keisan_kokuho_2021.html)
日本年金機構「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」(https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150331-02.html)
厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/000706195.pdf)
厚生労働省「雇用保険料率について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html)
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