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老後の地方移住、生活費は減らせるか

LIMO / 2021年5月16日 18時45分

老後の地方移住、生活費は減らせるか

老後の地方移住、生活費は減らせるか

~アンケート結果にみる「3つの対策の必要性」~

定年を機に設立した合同会社フィンウェル研究所も3年目を迎えました。フィンウェル研究所の活動は、下記の数式で表すことができ、退職後はこの3つの収入が主なものになります。

退職後の生活費=年金収入+勤労収入+資産収入

これらのバランスをどうとって向き合っていくか。退職世代である60代はもとより、これから退職を迎える50代にとっても大切なポイントになります。

本日は、皆様に向けて、老後の生活費を減らすポイントとして、先日行ったアンケートの調査結果に基づき、資産運用の必要性についてお伝えしていきます。

老後は3つの対策のポートフォリオを作る

年金収入は、退職してしまうと繰り下げ受給をするくらいしか増やす方法はありません。

そのため、自分でコントロールできるのは下記の3つです。

①長く働く
②持っている資産を上手に活用していく
③生活費を抑制する

退職世代には、これらを自分の状況に合わせて、どのように取り入れるかを考えながら、この「3つの対策」のポートフォリオを作ることをおすすめしています。

ポートフォリオの作り方(例)

①が難しい人(長く働きたくない人)

⇒ ②と③の組み合わせ「生活費を抑制しながら、持っている資産を上手に活用する」

 

②が難しい人(資産が十分ではない人)

⇒ ①と③の組み合わせ:「生活費を抑制しながら、できるだけ長く働く

 

③が難しい人(生活を質素にしたくない人)

⇒ ①と②の組み合わせ:「できるだけ長く働いて、持っている資産を上手に活用する」

 

現役時代の生活水準に規定される退職後の生活費

「退職後の生活費はどれくらい必要か」とよく聞かれます。

答えは人それぞれなので、一律の回答はありませんが、ある程度の見込みはもっていた方がいいでしょう。

その際に大切なのは、「現役時代の生活費が退職後の生活も規定する」ということです。

退職しても生活水準を簡単に引き下げることはなかなかできません。したがって、生活費も簡単に減ることはありません。

米国の会計検査院の調査によると、退職後の生活費は税込みで現役世代の70~85%とのことです。

思った以上に高いのは、米国ならではの「退職すると医療費が全額自費になる」といった事情がありそうです。

それを考慮して、国民皆保険制度がある日本ではそのレンジの下限70%だとしましょう。

そうすると、現役時代に年収600万円だった人の場合、退職しても年間420万円もの生活費が必要になります。

地方移住で生活費を減らすことができる

退職後の生活費で大きな金額を占めるものとして指摘されるのが、医療・介護費、税金・社会保険料、食費です。

しかし、どれも簡単に削減できるものではなく、どちらかといえば、加齢に伴って医療・介護費は増える傾向にあります。

超高齢社会では、高齢者も税金や社会保険料の負担は増える方向にあるからです。

とはいえ、食費を減らすのも、何だか悲しい対策ですよね。

よって、ほかの生活費で下げられるものはないか、包括的に下げられる方法を探す必要があります。

その方法の一つが地方都市への移住です。

ちなみに東京を基準にすると、地方の県庁所在地の消費者物価は3~4%低いですし、家賃などは6割近くも安くなります。

フィンウェル研究所では、2021年3月に地方都市移住のアンケート調査(第2回目)を行いました。

東京、大阪、名古屋に住んでいる、またはそこから10年以内に地方都市に移住した60代を対象に行い、2305名の方から回答をいただきました。

アンケート調査のテーマは、「地方都市移住で生活費は引き下げられるか」です。次章でさっそく見ていきましょう。

アンケートで分かった!「資産はいくらあればいいか」

2305人を対象におこなったアンケートでは、そのうち金融資産を保有していると回答した1825人を対象に、「持っている資産で退職後の生活はカバーできるか」を聞いてみました。

移住を検討している人、検討したがあきらめた人、そもそも移住を考えていない人、そして実際に移住をした人ごとに、それぞれ持っている資産で退職後の生活が「十分カバーできる」、「何とかカバーできる」、「まったく足りない」の3つの選択肢を選んでいただきました。

【表1】は、そのセグメントの平均保有資産額と中央値のレンジを示したものです。

移住を検討していようと、あきらめようと、まったく検討していなかろうと、各セグメントの金額にほとんど違いはありませんでした。

この3つのカテゴリーの人は現在、東京、大阪、名古屋に住んでいるからだと思います。

しかし、3大都市から地方都市に移住をした人は「何とかギリギリできる」という人の平均保有資産額が、他と比べて低いことがわかります。

すなわち、保有資産が少なくても「移住によって退職後の生活が何とかカバーできるようになる」ことを示唆しています。

つまり、移住をした人は、移住のための必要金額がかなり少ないということです。

ただ、ちょっとおもしろいなと思ったのは、「十分できる」と回答した人の平均保有資産額は、移住をしているかどうかに関係ないという点です。

このセグメント(平均額6375.0万円~8042.9万円)は、どこに住んでいてもかなり余裕を持った生活ができるということなのでしょうか。

(/mwimgs/1/0/-/img_10b04996ebaa0a8f797f69bf94ed0d1b64896.jpg)

拡大する(/mwimgs/1/0/-/img_10b04996ebaa0a8f797f69bf94ed0d1b64896.jpg)

 

 

バランスよい対策ができているのは「地方移住を検討している人」

地方都市移住の意向と資産運用の関係も調べてみました。

【表2】を見てみると、地方都市移住を検討している人、検討したがあきらめた人の特徴は、持っている資産の延命策を「特に考えていない」との回答が少ないことです。

すなわち、生活費削減、勤労継続、資産運用の3つの対策のどれかを選ぼうとする比率が高いことを示しています。

逆に、移住を考えていない人は資産運用も視野に入っていないようです。

また、移住した人は長く働くことのウエイトが低くなって、その分何も対策はないという比率が高くなっているのが特徴です。

(/mwimgs/2/9/-/img_2997f12ebea3a0cf6b66a4091431890247047.jpg)

拡大する(/mwimgs/2/9/-/img_2997f12ebea3a0cf6b66a4091431890247047.jpg)

アンケート調査の結果から、地方都市移住の持っている意味の一端を見てきましたが、地方都市移住を検討している人は、3つの対策にバランスが取れていること、そして実際に移住すると、もう資産の延命は図らなくてよくなり、その分、長く働く必要もなくなっているように窺えます。

地方都市移住が退職後の生活に大きな意味を持っていることがわかります。

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