株価暴落のメカニズム〜投資初心者が悔しい思いをする理由
LIMO / 2021年5月16日 19時35分
株価暴落のメカニズム〜投資初心者が悔しい思いをする理由
株価が暴落すると、暴落がさらなる暴落を呼ぶメカニズムが働くことがあります。それを見て投資初心者は狼狽売りをしてしまう場合も多いので、要注意です。
投資する際にあらかじめメカニズムを理解しておくこと、暴落した際にメカニズムを理解した上で正しい判断をすることがいずれも重要だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
株価が下がると売り注文が増える?
このところ、株価が下落しています。理由は明確ではありませんが、市場参加者の高値警戒感による不安心理が背景にあり、小さな出来事に株価が大きく反応したのでしょう。
株価の短期的な推移を予測することは極めて困難で、筆者には全く不可能ですが、株価が下がると売り注文が増えていっそう株価を押し下げるメカニズムが働きかねないということは投資初心者に知っておいていただきたいですね。
今後も株価の下落が続くと狼狽売りをする初心者が増えると思いますが、本稿がそれを防いでくれれば幸いです。
「売りたくない売り」が出て来る
まず、借金で株を買っている投資家のところに、不安になった銀行から融資返済の要請が来るので、投資家は保有株を売って借金を返済することになります。「株価が暴落した今こそ、買い増しのチャンスなのに」と思いながら、泣く泣く売り注文を出すのです。
個人投資家でも、「信用取引」を行なっている場合には、株価が一定以上暴落すると「追加証拠金」を請求される場合があります。これが払えないと、泣く泣く保有株を売却することになるはずです。
次に、機関投資家の多くは、「損切り」というルールを設けています。これは、担当者の損が一定水準に達すると、自動的に持っている株を全て売って休暇を取らせる、という制度です。
損を取り返そうとして損失が無限に膨らんでしまう担当者が出ることを防ぐという目的でしょうが、「損が膨らんだ担当者は頭に血が上って冷静な判断ができなくなるから、休暇を取らせて頭を冷やさせる」という目的もあるのでしょう。
このように、借金で株を買っている人や機関投資家の担当者は、相場観からは買いたくてしかたない時に強制的に売らされるわけです。そうなると、「誰が見ても株価は下がりすぎているのに、なおいっそう下がっていく」ということが起こりかねません。
投資初心者が狼狽売りをする
そうなると、投資初心者は不安になります。「自分の知らないところで何か重大なことが起きつつあり、この世の終わりが近づいているのではないか」と考えるわけです。そこで、狼狽売りの注文が出されるわけです。
加えて、株価の暴落を経験したことのない初心者は、自分の取れるリスクをしっかり把握せずに、過大な投資を行っている場合もあるでしょう。そんな投資家は「これ以上株価が下がったら破産だから、今のうちに売り逃げるしかない」と考えるかもしれません。
くれぐれも、株式投資は余裕を持って、ある程度株価が暴落しても耐えられる程度の金額にとどめておくべきですね。
投機家たちが先回りして売る
上記のようなメカニズムにより、株価が暴落すると、売り注文が増えてさらに株価が下落する場合が少なくありません。
それを知っている投機家たちは、株価が暴落すると素早く株の売り注文を出し、株価がさらに下落してから買い戻そうとします。それによって株価はさらに下落することになるわけです。
本稿の中では4番目に記してありますが、時間的な順番としてはこれが最初であり、初心者の狼狽売りが最後になることが多いでしょう。
初心者が狼狽売りの注文を出し終えると、市場には売り注文を出す主体が残っていないので、売り注文は止まります。そこで、投機家たちが先に売っておいた株式を買い戻し始めるわけです。
すると、株価は音もなく急速に値を戻していきます。売り注文がないからです。それを見て、狼狽売りをした投資初心者が悔しがる、というわけですね。
もちろん、すべての暴落が上記のように、いっそうの暴落を招くわけではありません。むしろ、上記のようなメカニズムを上回る「押し目買い(値下がりしたから買いのチャンスだと考えて出て来る買い注文)」が出て来て、株価がすぐ戻る場合の方が多いでしょう。したがって、株価が暴落した直後の短期売買は極めて難しいのです。
本当に悪いことが起きるのか、見極める必要あり
もちろん、株価の暴落が本格的な暴落の序章である場合もあります。市場の心理的な振れで株価が暴落した場合には遠からず戻るでしょうが、実際に問題が生じている場合には株価が下落を続けて大幅安となりかねません。
マクロ経済に重要な問題が発生しつつある場合やバブルが崩壊し始めた場合などは、全ての持ち株を直ちに売るべきでしょう。これは狼狽売りとは全く異なるものですから、当然のことです。
重要なことは、暴落がどちらなのかを見極めることなのです。簡単なことではありませんが、焦って狼狽売りをする前に、本当に悪いことが起きているのか否かを考えてみることは、ぜひとも心がけたいものです。
本稿は以上です。本稿は狼狽売りを戒める内容となっていますが、当然のことながら投資は自己責任でお願いします。
なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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