「筋が通らない」話が多発する国、ニッポン。コロナ禍で一層あらわに
LIMO / 2021年5月23日 19時55分
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「筋が通らない」話が多発する国、ニッポン。コロナ禍で一層あらわに
働いていると、日々「筋が通らない」話ばかりですよね。たとえば合同プロジェクトに参加して、トップ2人のニュアンスが微妙に違う。質問すると「調整は現場でヤレ」。これ、意味が分からないですよね。
この日本の「筋が通らない」現象が最近のコロナ禍で、ますます増えている気もします。今回は、日本で「筋が通らない」現象が多発する原因を考察してみます。
日本の禁煙政策は特殊!?
まず身近な例から。筆者は絶滅危惧種の喫煙者です。あの毒ガス室のような喫煙室は、コロナ禍で利用しないように心がけていますが、不必要に長時間の打ち合わせ後などは、自暴自棄になり毒ガス室に駆け込んでしまいます。
昨年(2020年)春の改正健康増進法(飲食店禁煙)時に、加熱タバコのお試し会場でメーカーの人と雑談したのですが、こんなことを言ってました。「日本の禁煙政策は世界的に見て特殊なんですよ」。
さて、どこが特殊なのでしょうか。日本の禁煙政策は、かなり以前の路上喫煙禁止から始まり、“屋外から屋内へ"という過程をたどっています。これが特殊らしい。そんな国はないそうです。
たしかに、よく考えれば、喫煙者の自分が言うのもアレですが、受動喫煙等のことを考えると、まず屋内から喫煙規制を始めるべきですよね。「いやぁ、屋内から始めると、飲食の関連団体等との調整とかが大変だからさぁ」誰かが、どこかで言ってそうです。邪推ですが。
■日本で「筋が通らない」が発生する理由①
『まずカンタンな、できることから始める。筋とかは考えない』
禁煙政策で追記すると、多分、日本では「公共(パブリック)」の概念が海外とは微妙に違うのかもしれません。日本では「公共スペース(例:公道や公園)」→「みんなもの」→「誰のものでもない」→「つまり役所のもの」という構造なのかもしれませんね。
「筋が通らない」五輪開催
さて、この「筋が通らない」現象がコロナ禍で頻発しています。たとえば、5月12日の東京都他の緊急事態宣言延長にともない、当初、東京都所在の国立博物館や美術館は国の方針に基づき、営業再開予定でした。それが東京都の猛烈な抗議で、前日に休業延長となるドタバタ劇となりました。
こういう事例は他にもたくさんあります。たとえば自分は東京多摩エリア在住ですが、近所の都立公園の駐車場が閉鎖の間も、そのすくそばの市立公園の駐車場は開いていました。広域来場者の抑制などが理由らしいですが、やはり、分かりずらい。
■日本で「筋が通らない」が発生する理由②
『司令塔が複数あってハッキリしない。筋がバラバラで一杯ある』
次に五輪開催について。「感染対策をキチンとすれば五輪開催は可能」と「感染対策をキチンとしても飲食店は休業」。果たして筋が通っていますかね。これは自分の意見というよりは、テレビで橋下徹氏の言っていた受け売りです。よく考えれば、なるほど感一杯のコメントですよね。
■日本で「筋が通らない」が発生する理由③
『全体の整合性は考えないし興味もナシ。目先の利害関連事項が優先』
なぜ「筋が通らなくなるのか」
思いつくままに、日本で筋が通らなくなる理由を挙げてみました。ここからは、その背景に何があるかの雑感です。月並みに言えば、日本人は論理的思考が不得意という話になるのかもしれませんね。
ただ、これも昨年発売された『日本人は論理的でなくていい』という本が話題になっていました。まだ読んでいませんが、本の帯には「ノーベル受賞者たちは日本的感覚の持ち主だ」と書かれています。
あくまで本の帯の感想ですが、“それが、どうした。別に日本人全員がノーベル賞を目指すわけではなかろう"と突っ込みたくなるのですが。「筋が通らない」が発生する理由・番外編に“すぐ屁理屈で正当化する"もエントリーしたくなります。
次に“同調圧力"問題を考えてみます。これも「筋が通らなくなる」を加速させる要因ですよね。そして、日本の同調圧力を考えるうえで、日本の農耕社会に由来するムラ社会にルーツを求める識者が多い。ただ、これは個人的にはマユツバだと思っています。
話が脱線しますが、日本史の話をすると自分は中世史家の網野善彦氏ファンなんですよね。同氏は「公界(くがい)」の概念で有名ですが、ザックリ言うと日本史の源流には非・農耕社会由来のモノもあるということです。
もちろん農耕社会の影響はきわめて強いと思いますが、それを全てとするのは、ちょっとザツすぎる気がします。余談ですが。
なぜ同調圧力だけが強固に残っているのか
たしかに、日本人のルーツであるムラ社会の影響は強いと思います。しかし、日本人の「家族観」や「幸福の尺度」は戦後、大きく変わったと思います。ここでメンドくさいのは、“いや、変わったように見えるが、根底は不変だ"と主張する人たちです。
その意見に自分も概ね賛成しますが、表面的といいますか、日々の生活を送る上では、それほど影響下にあるとは思えません。しかし“同調圧力"だけは事情が少し違って、現在も現役バリバリで、その影響が強固に残っている。これが、なぜかということです。
「それは、同調圧力が一番強固だから」という考え方もあると思いますが、自分の説は、ちょっと違います。つまり、日本の過去の栄光「モノづくり社会/ソサエティ3.0」を支えるベースとして、たまたま同調圧力が、ガチでジャストフィットしてしまった。その成功体験、言い換えれば“呪い"に縛られているのではないか。そんな気がします。
日本の過去の栄光を支えたひとつが「終身雇用&年功序列」ですが、世界中の頭の良い人たちがそのことを分かっていても、どこの国もマネできなかったのは、なにか日本人の特殊性が、そのシステムを支えていたとも思えるのです。
冒頭の話に戻ると、トップが筋の通らない話をしていると、結局、そのツケは現場が払うことになります。ただ自分も含めて、日本人はどこかで、“随分ムダもあったが、これも仕事のウチか"と思っている印象があります。もしかすると日本の生産性は、当分、上がらないのかもしれませんね。
「いや、それをムダというのは馬鹿な意見だ」とあなたは思うかもしれません。しかし、自分の独断と偏見では、日本のお家芸だった“すり合わせ/カイゼン”といったプロセス自体が“ムダ”になりつつあるという気も、ちょっと、するのでした。
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