コロナ禍とVUCA(ブーカ)時代の転職。「人に聞くなよ、自分で考えろ」
LIMO / 2021年5月31日 18時55分
コロナ禍とVUCA(ブーカ)時代の転職。「人に聞くなよ、自分で考えろ」
コロナ禍の収束も、まだ当分、時間がかかりそうです。日本では、やっとワクチン接種が始まったばかりですからね。
コロナ禍では、いままで見えていなかったモノが見えてきたという側面があると思います。たとえば、日本の社会や政治の弱点。これは自分が働いている会社も同じではないでしょうか。そして弱点が見えたことで、転職を考えるようになったというケースもありそうです。
今回は、コロナ禍と転職の関連データや、注目のキーワードを見ていきます。
コロナで「転職に積極的になった」は約4割
まず、気になるのはコロナ禍で転職志向がどのくらい高まっているのか、ということですよね。孫子の兵法でも「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」とありますから。
今年(2021年)3月にマイナビが「転職動向調査2021年版」の結果を発表しました。この調査は1月26日~2月1日、昨年転職した20代〜50代の正社員男女1,500名(男性982名、女性518名)を対象にインターネットで行われたものです。
新型コロナウイルスによる転職活動への影響では、36.9%が「転職に積極的になった(「やや」も含む)」と回答。特に、20代男性では51.2%と高い割合を示しました。
異業種への転職率は48.8%で、前年から微増。業種別にみると、前職の業種が「医療・福祉・介護」「IT・通信・インターネット」だった人は引き続き同業への転職が多い一方、前職の業種が「フードサービス」だった人の異業種への転職率は82.4%と、前年(56.9%)から25.5ポイントも増加しました。
リファラル採用の広がりにも注目
もう少し「転職動向調査2021年版」のデータを見ていきましょう。まずベースとなる正社員全体の転職率。同調査では昨年の転職率は前年比2.1ポイント減の4.9%。2016年から2019年までは増加傾向にあったが、2020年は減少に転じ、2018年と同水準になったと分析しています。
次に転職のタイミングですが、昨年転職した人のうち、67.5%が在職中に転職しています。3分の2強の数値ですね。やはり、就業しながら転職活動をおこなうスタイルが一般的のようです。
個人的に興味があったのは、リファラル採用の動向です。ご存じの方も多いと思いますが、リファラル採用とは最近注目されているキーワードで、ひとことで言うと社員に人材を紹介してもらう採用手法のことです。
自分の会社をよく理解した社員の紹介であるため、その会社にマッチした人材を募集でき定着率も高いと言われています。そのため、欧米では採用の重要な方法とされています。
同調査では、“知人・友人に自社を紹介したことがあるか"に対し、32.2%が「紹介したことがある」と回答。特に20~30代男性や営業職では4割前後と、高い割合を示しています。
紹介した理由としては、「会社から知人・友人を紹介してほしいと頼まれたから」(35.8%)が最も多く、次いで「自分が勤める会社の環境が良く、友人に勧めたいと思ったから」(35.6%)、「知人・友人から紹介してほしいと頼まれたから」(35.0%)と続いています。
日本の企業もリファラル採用を重視し始めているようです。友人・知人とのネットワークはやはり貴重な財産ということだと思います。
コロナ禍で転職できないという不安
コロナ禍と転職に関するデータを見てきましたが、やはり“コロナ禍での転職"に不安を感じる人も多数います。「いまは時期が悪いな」と思っている方も実は多い。
これは第一義的には的を得ていて、まず挙げられるのが求人数の減少です。ここ数年の求人数は2015年から増加トレンドが続き、2019年11月がピークでした。しかし、一度目の緊急事態宣言が出た昨年4月より大きく減少し、8月は2017年1月以降、最も少ない値となりました。これは前述の転職率の低下とも連動していると考えられます。
このような状況下で、どのような人が転職に成功しているのでしょうか。やはり、現在の企業の中途採用ニーズは、即戦力を求めていると思います。業界・職種ともに完全な未経験採用というのは減少傾向なのが現実ではないでしょうか。
ここでいう、即戦力・経験者という定義が、実は微妙なところですよね。ただ、あまり“狭義"に考えすぎないことが大切な気もします。たとえば、メーカーの法人営業から、IT業界の法人営業に転職する場合を考えた場合、商材は異なっても、法人営業というスキームは共通しています。
個人的には、上記のようなケースは転職先に魅力を感じるならば、どんどんチャレンジすべきだと考えます。自分のいままでの仕事を棚卸して、どのような課題を解決してきたか、そのプロセス等をしっかりアピールできれば、成功する可能性はかなり高いと思います。
「VUCA(ブーカ)」時代の職業選択
現在の日本では、ご存じの通り、業界ごとに明暗がはっきり分かれています。コロナ禍の影響でレジャーや運輸業界の業績が悪化する一方、経済活動がオンラインに移行し、ネットサービスや食品・日用品業界の回復は比較的進んでいます。
前述の「フードサービス」市場から異業種への転職増加なども、まさに、その表れだと思います。どうも、完全に先の読めない時代になってきた気がします。最近は、転職のキーワードとして「VUCA(ブーカ)の時代」という言葉も使われだしています。
これは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、ザックリ言えば“将来の予測が難しい"という意味です。
そんな時代ですから、あまり有名企業にこだわっても意味がないのかもしれません。本屋だったアマゾンがクラウド事業カンパニーになってしまうのですから。確かなモノなど何もないのだと思います。
クラウド市場で言えば、出遅れたマイクロソフトがアマゾンを猛追しているわけですが、その裏では大胆な組織改革を進めています。つまり企業にとっても、必要な人材は、どんどん変わっていくわけです。
そんな時代の転職ですから、“自分のできること"を明確化していく方法しかなさそうですね。「どの業界が有望ですか」という質問は愚問なのかもしれません。誰にもわからないのですから。
自分にも「人に聞くなよ、まず自分で考えろ」と言い聞かせている今日この頃です。
参考資料
コロナ禍で「転職に積極的になった」が36.9% - 異業種転職が多い業種は?(https://news.mynavi.jp/article/20210319-1815238/)(マイナビ)
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