「ウーバーイーツ」組合が求めた労災保険の特例加入とは?
LIMO / 2021年5月29日 20時35分
![「ウーバーイーツ」組合が求めた労災保険の特例加入とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_23583_0-small.jpg)
「ウーバーイーツ」組合が求めた労災保険の特例加入とは?
労働組合「ウーバーイーツユニオン」は5月24日会見を開き、配達員が怪我をした場合など、企業負担による通常の労災保険が配達員にも適用されるよう、検討を求めました。
これは、保険料を配達員が負担する「特別加入制度」の導入を厚生労働省が検討していることに、組合側が異議を表明したことになります。
多くの人にとって労災保険は身近なもので、本来労働者を守ってくれる制度ですが、この議論は多様化した労働環境の問題を浮き彫りにしたものといえるでしょう。
そこで今回は労災保険とはどういう制度なのか、会社員と個人事業主でどのように違うのかについて、チェックしていきます。
労災保険は病気やケガの備え
労災保険とは、業務中や通勤途中でケガをしたり、病気、死亡などの事由が発生した場合、労働者やその遺族のために保険給付を行う制度です。
また、病気やケガをした労働者の社会復帰の支援、遺族の生活を支援する労働福祉事業も実施されています。
このように、労災保険は万が一のときのセーフティネットとなっていることがわかりますが、では労災保険に加入する際、条件はあるのでしょうか。
会社員は加入義務がある
労災保険は、パート・アルバイトを含めた労働者を1日1人でも雇っていれば、その事業主は必ず加入手続きをしなければなりません。※一部の事業を除く
つまり、会社員の場合は労災保険に加入することが義務付けられていると言えます。
また、保険料は全額「事業主」が負担することになります。労働者ではないことがポイントです。
個人事業主は「原則」加入できない
労災保険はあくまで、雇われている人(労働者)の勤務中の事故、失業などで労働が難しくなったとき、生活を補償する保険制度です。
よって、個人事業主は、基本的に労災保険に加入できません。
個人事業主は読んで字のごとく、自身が事業主であるため、万が一のときは自分で対応することが求められているのです。
「それはあまりにも個人事業主に冷たくないか」と感じられた人もいるでしょう。
実は、個人事業主でも労災保険に加入できる「特例加入制度」が存在します。
特例加入制度の保険料は「自己負担」
「特別加入制度」とは、業務の実態などを考慮して、一定の要件下で、個人事業主の方でも労災保険に特別加入を認める制度です。
特別加入できる方は下記の4通りです。
中小事業主等
一人親方等
特定作業従事者
海外派遣者
たとえば中小事業の場合、事業主は労働者と同じ仕事をする場合が多いですよね。
また、建設業などの自営業者は、いわゆる一人親方として、労働者を雇わずに自分自身で業務に従事するため、業務の実態は労働者と変わりません。
このため、労働者と同様に保護されるべきということで、特例的に加入が認められています。
ただし、特例加入制度の場合、保険料は労働者が負担することになります。ここがポイントです。
労災保険のキホンを抑えたところで、あらためて労働組合の今回の要望を見ていきます。
保険料の負担先が争点に
先述した通り、現在厚生労働省は、ウーバーイーツの配達員についても、この特例加入制度を導入できるように検討をすすめています。
これに対し、ウーバーイーツの労働組合は特例加入制度ではなく、本来の労災保険を適用するよう求めているのです。
つまり、保険料を配達員ではなく、事業主に負担をしてほしいと訴えています。
一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会の資料によると、フリーランスの自転車利用配達員の数は約9万人と推計されています。
資料の中で、自転車利用時の怪我に関しては、合計27件の回答(4社)がありました。
主な事例として、配達員が交差点を曲がろうとした際、直進してきた自転車と接触。転倒し腰を強打というケースも。
「こうした事故の責任をすべて配達員が負うのはいかがなものか」というのが組合の主張です。
労働関連の制度は今後も要チェック
みなさんは、この主張を聞いてどう感じたでしょうか。
インターネット上でSNSなどのコメントを見ると、さまざまな声が溢れています。
「事業主であるウーバーイーツが労災保険の保険料を負担すべき。個人事業主扱いで労働者本人に保険料負担を求めるのは間違っている。」
「Uberの個人事業主が労災に入れるなら他の個人事業主も同様に入れるようにして欲しい。」
「大きな事故にならないうちに、現行法の解釈で対処するのではなく、しっかりした法整備をして規制すべき。」
副業が推進されるなど、雇用・労働環境が大きな転換点を迎えるこんにち。
「労働者」と「個人事業主」という2つの枠組みで分けること自体が、もはや時代遅れなのかもしれません。
働き方自体が多様化していることで、遠くない将来に制度が変わる可能性も高そうです。
労働関連の問題は、働く人すべてに関わる大切なことです。今後もしっかりチェックしていきましょう。
参考資料
東京労働局「労災保険とは」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/rousai.html)
広島労働局労働保険徴収課「労働保険適用促進パンフレット」(https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/library/2017tekiyousokusin.pdf)
厚生労働省「特別加入制度とは何ですか。」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei15.html)
一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会「フードデリバリー配達員への労災保険特別加入適用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000779065.pdf)
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