ホンダジェットの現状と宇宙への可能性。ホンダの挑戦を振り返る
LIMO / 2021年5月30日 20時15分
![ホンダジェットの現状と宇宙への可能性。ホンダの挑戦を振り返る](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_23606_0-small.jpg)
ホンダジェットの現状と宇宙への可能性。ホンダの挑戦を振り返る
2021年4月23日に、ホンダ(本田技研工業株式会社)の新社長である三部敏宏氏が社長就任会見を行いました。そのスピーチの中で「更に次の夢として、モビリティを三次元、四次元に拡大していくべく、空、海洋、宇宙、そしてロボットなどの研究を進めています。」と、宇宙事業への進出の可能性を感じさせます。
今回は、小型ジェット機HondaJet(ホンダジェット)の現在の姿および、航空宇宙業界への展開について、ホンダの公開情報も併せて振り返っていきます。
ホンダジェットの現在の状況
ホンダの航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)の発表によると、「HondaJet」の2020年暦年(1月~12月)のデリバリー(引き渡し済)数が31機となり、小型ジェット機カテゴリーにおいて4年連続で世界第1位(※General Aviation Manufacturers Association(GAMA)調べ)の実績と、好調な推移でした。
General Aviation Manufacturers Association “General Aviation Aircraft Shipment Report (2020 Year-End)”によると、HondaJet(HA-420)の四半期別のデリバリー数推移は、下記の通りです。
2020年1~3月:7機
2020年4~6月:2機
2020年7~9月:8機
2020年10~12月:14機
通期計:31機
特に2020年下期(7月以降)のデリバリー数の伸びが著しいことがわかります。
ホンダの航空宇宙領域で求める人材像とは
さて、「空」や「宇宙」を狙うホンダはどのような人材を求めているのでしょうか。同社の採用情報で目立つのは「空の次世代モビリティ研究開発」職で、下記の領域について募集がかけられています。
システムズエンジニアリング・MBSE業務
安全領域
空力領域
艤装・メカニカルデザイン領域
制御・システム領域
eDrive(モーター、インバータ等)領域
テスト領域
上記の全職種の「応募資格」欄では「航空宇宙工学」に関する知識または「宇宙関連製品」の設計経験について言及があります。航空宇宙工学・宇宙関連製品の知見を持った人材を多方面で集めたいという意図が見受けられる状態です。
技術的に難しいと考えられていた小型ジェット機も製品化・販売に成功した実績があります。今後、宇宙領域においても事業として進んでいくことになれば、国内では明るいニュースとして受け止められるでしょう。
ホンダの今後の見通しとは
最後に、ホンダの直近の連結業績について触れます。
「2020年度 連結決算の概況」によると、以下の通りです。
売上収益:13 兆1705億円(前年度比▲11.8%減収)
営業利益:6602億円(前年度比+4.2%増益)
税引前利益:9140億円(前年度比+15.7%増益)
親会社の所有者に帰属する当期利益:6574億円(前年度比+44.3%増益)
となり、「減収増益」という結果でした。
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けてすべての事業において減収となったものの、販売費・一般管理費の抑制やコストダウン効果により増益を達成しています。
2021年度の業績見通しについては、通期営業利益を6600億円と計画しており、前年度と同程度の着地を想定している状況です。
なお、航空機・航空機エンジンは「その他の事業」に含まれるのですが、「2020年度連結決算の概況」で気になる記載があったので最後にその点について触れます。
同資料内「2020年度第4四半期決算(3ヵ月間)の連結業績概況および各事業の状況」の項目において、「ライフクリエーション事業およびその他の事業」は下記のような状況でした。
営業損失:30億円(前年同期比133億円の改善)
なお、その他の事業に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失は78億円
航空機・航空機エンジンの営業損失について特に注釈がある点に着目しました。
先述の通り、販売実績で明るいニュースが出ていることは良いことですが、最終的に事業単体で収益化できるかが重要です。直近の経営実績で足元の体制を固めつつ、宇宙領域などの新しい事業領域で成果を出すことでホンダが「存在を期待される企業」であり続けられるか、期待を込めて注視していきたいと思います。
参考資料
本田技研工業株式会社「社長就任会見 代表取締役社長 三部 敏宏スピーチ概要」(https://www.honda.co.jp/news/2021/c210423.html)
本田技研工業株式会社「『HondaJet』が4年連続でカテゴリートップのデリバリー数を達成」(https://www.honda.co.jp/news/2021/c210225b.html)
General Aviation Manufacturers Association “General Aviation Aircraft Shipment Report (2020 Year-End)”(https://gama.aero/wp-content/uploads/2020ShipmentReport-02242021.pdf)
本田技研工業株式会社「募集職種一覧」(https://www.honda-jobs.com/job/category/)
本田技研工業株式会社「2020 年度決算 及び 2021 年度通期業績見通しを発表」(https://www.honda.co.jp/content/dam/site/www/investors/cq_img/library/financialresult/FY202103_4Q_financial_release_j.pdf)
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