強烈な「教育パパ」が悲劇を招くワケ。進路を強要する毒親に子どもは委縮
LIMO / 2021年6月11日 19時35分
強烈な「教育パパ」が悲劇を招くワケ。進路を強要する毒親に子どもは委縮
近年、何かと話題になる毒親問題。関連本も多数出版されるなど、世間の関心の高さをうかがわせます。
これまで問題のある保護者というと、真っ先に虐待や育児放棄が挙げられてきました。悲惨な事件は後を絶たず、早期発見や初期対応の大切さが論議されています。しかし、裕福で習い事も十分にさせているため、端からは「子ども思いの良き親」「教育熱心な親」とみられる中に毒親がひそんでいることも…。
そして、毒親家庭の中でも特に子どもの逃げ場がないのが「両親ともに教育熱心」や「常識外れなほどの教育パパ」というケースです。極端な例では、2016年に名古屋で父親が中学受験生の息子の胸を刺して死亡させるという、痛ましい「教育虐待殺人事件」も起きています。
関心が強すぎることの弊害
現在、小学生から高校生の子を持つ保護者は、短大や専門学校、大学進学者が増加しつつあった世代で、「自分よりよい学歴を」「学歴はないよりはあった方が良い」という考え方が珍しくありません。また、学歴コンプレックスで子どもに自分の夢を叶えさせることを強要する親はどの時代にも存在します。
勉強は子どもの可能性を広げる大切なものですが、子どもの気持ちを考えない行き過ぎた指導は逆効果になることがほとんどです。母親だけではなく父親からも厳しく勉強面のことをアレコレ言われたり、成績管理に細かい父親から毎回のようにお説教をされると、家庭で子どもの心休まる場が失われてしまいます。
もちろん、成績のアップダウンに目を光らせ、”こういう勉強をすべき”などと子どもに自分の考えを押し付けたり、目標を達成するまでゲームや友人との交際を制限する母親もいます。この場合、父親がそこまで教育熱心でなければ、子どもにとって「父親=逃げ場」となり、家庭内の緊張感を和らげる存在となります。
けれども、両親揃って、もしくは父親が行き過ぎた教育パパだと、子どもには逃げ場がなくなり、ずっと勉強をさせられたり監視されたりする状態が続きます。「誰のおかげで塾に行かせてもらっているんだ」「お金をかけているんだから結果を出せ」など心ない言葉まで浴びせられては、子どもは委縮し勉強に集中することはできません。
理想を押し付けることの虚しさ
筆者も、自分の学生時代や塾の仕事をしていた時に「教育パパ」を持つ子に遭遇したことがあります。
中学時代のクラスメイトや塾の生徒は、年齢も住んでいる場所も全く異なりますが、「お父さんの職場の同僚の子が進学校にばかり進んでいるので、自分も不合格が目に見えているのに受けさせられる」「成績が上がらないとお母さん以上に怒るから嫌だ」と同じようなことを口にしていたものです。
どのケースも「自分の進路を決めるのは父親」と、非常に冷めた口調で言い放っていたのが印象的でした。本人の学力や意思を無視し、無理難題を押し付けるような言動に反旗を翻したら父親からどんなことをされるのか。15歳にして人生を諦めるような姿を目の当たりにし、考えさせられるものがありました。
こうした子どもの視点を排除し、親の考えばかりをゴリ押ししても良い結果にたどり着くことは稀でしょう。そして、子どもの主体性を育てる機会を奪い、心に大きな傷跡を残す恐れがあることを忘れてはいけません。
度を越した熱心さは悲劇と隣り合わせ
父親の教育熱心さが度を越したものになると、手に負えないほど深刻な状況になる場合もあります。
共働き世帯でも父親の方が高収入なことが多いため、教育に口出しをし始めると「自分の方にものを言う権利がある」とばかりに威圧的な態度で子どもの成績に文句を言ったり、成績不振を母親である奥さんの責任にするなど、家庭内を不穏なムードにするだけで良いことは一つもありません。
教育問題はビジネス雑誌でも定期的に取り上げられます。それは今の子育て世代、そして父親の関心が高い表れでもあるでしょう。子どもの教育に関心を寄せ、将来を一緒に考えること自体は悪いことではありませんが、親が前のめりになると子どもの気持ちが置き去りになります。
過去にも、冒頭に記したような教育パパによる悲劇的な事件が起きています。「これが正しい進路だ」と親の願望を一方的に押し付け、決めつける言動は子どもの人生に暗い影を落とし、幸せを遠ざけることにつながりかねません。
同じように教育熱心な家庭でも「子どもの気持ち」「勉強しやすい環境」を尊重している家庭は、子どもが前向きな気持ちで勉強に取り組むことができます。子の幸せを願うのであれば、子どもとよく話し合い、その考えを尊重し、時には人生の先輩としてアドバイスを送るなどサポート役に徹することが理想的なのではないでしょうか。
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