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老後の不足額は2000万円じゃなかった!? 忘れると危ない「特別支出」とは

LIMO / 2021年6月24日 19時35分

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老後の不足額は2000万円じゃなかった!? 忘れると危ない「特別支出」とは

総務省が行っている家計調査は、全国の9,000世帯を対象に収入や支出、貯蓄や負債などを調査しています。調査結果は国の政策をはじめ様々な用途に利用されており、2019年に金融庁が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」も、2017年の家計調査の結果を基に試算。

この報告書では「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている」、そして「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」と述べられています。

この「老後資金2,000万円」という言葉は多くの人が耳にしたことでしょう。ただ、家計調査の結果は毎年変わります。つまり、2019年に金融庁が試算した不足額も、実際には毎年変わっていくことになるわけです。そこで、2017年の家計調査とその後3年の家計調査のデータを基に、改めて老後資金について見てみましょう。

不足分は2,000万円から55万円に大幅ダウン!?

金融庁のレポートにある高齢者の前提条件は、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で、2017年家計調査の1カ月の収入と支出のデータを使用しています。2019年、2020年の家計調査からも同条件のデータを取り出して、30年間で不足する金額を試算したところ、以下の通りになりました。

2017年家計調査では約1,960万円が不足

実収入 209,198円

実支出 263,718円

不足分 54,520円

毎月の不足分54,520円 × 12カ月 × 30年 = 約1,960万円。

2018年家計調査では約1,500万円が不足

実収入 222,834円

実支出 264,707円

不足分 41,873円

毎月の不足分41,873円 × 12カ月 × 30年 = 約1,500万円。

2019年家計調査では約1,200万円が不足

実収入 237,659円

実支出 270,929円

不足分 33,270円

毎月の不足分33,270円 × 12カ月 × 30年 = 約1,200万円。

2020年家計調査では約55万円が不足

実収入 257,763円

実支出 259,304円

不足分 1,541円

毎月の不足分は1,541円 × 12カ月 × 30年 = 約55万円。

「平均的な」収支で自分の将来を考えるのは無理がある

上記のように、年によって毎月の不足分が異なり、その結果30年間の不足額は2,000万円から大きくダウンしています。

2020年はコロナ禍で、収入面では特別定額給付金が1人当たり10万円支給されました。支出面では緊急事態宣言などで外食や旅行などの費用がかなり減少するなど、例年とは大きな環境の違いがありました。そして、こうした特殊要因は今後も起こりうるわけです。

家計調査は統計ですから、年金生活者の「平均的な」収支から、受け取る年金だけでは足りないことはわかります。ただ、上記のように4年間で老後30年の不足額が2,000万円から55万円と大きくぶれる結果をもとに自分の老後に必要なお金を考えるのは無理があるといわざるをえません。

それより、年金だけでは足りないことを前提に、自分の受け取る見込みの年金額※から自分自身が準備すべき老後資金を試算する方が、面倒なようで実は近道だといえます。

※日本年金機構の「ねんきん定期便」に記載、「ねんきんネット」でも確認できる。

老後は生活費以外の「特別支出」が負担に

実は、金融庁の報告書の「約2,000万円の取崩しが必要になる」には続きがあり、「支出については、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である」と記載があります。

家計調査から試算された不足額の算出に使われている支出は毎月の生活費。ところが、60歳以降の約30年を老後としたとき、定年退職後の支出は、生活費以外にも住宅の修繕費や車の乗り換え、医療費や介護費用などがあります。

たとえば、住宅ローンを完済時点で住宅はすでに30年以上経過しているのが一般的です。終の棲家として暮らすには、水回りなどのリフォームは考えておくべき費用だといえるでしょう。

また、公共交通が発達した都会に住んでいるのでなければ、車の乗り換えも1、2回は必要になるでしょう。車を所有していれば、セットで車検や自動車保険の費用も発生します。

なかなか予測できないのが介護費用

介護費用については、どの施設・サービスを選ぶかによって費用は大きく変わってきます。公的な介護保険施設の場合、費用が安いのが魅力ではありますが、その分入居希望者も多く、人気のある施設ではたくさんの人が順番待ちをしていて、なかなか入所できないという現状もあります。

一方で、民間の介護保険施設の場合、まとまった一時金の支払いがあったり、毎月の利用料も比較的高いこともあり、金銭面で入所が難しいケースもあるでしょう。

今の現役世代が高齢者になる頃には、今よりさらに平均寿命が延びている可能性もあることを考えると、介護費用は老後資金の一部として準備しておかなければならないと心に留めておく必要があるでしょう。

おわりに

金融庁のレポートでは、2017年の家計調査の数字を基に毎月の生活費の不足分が30年間で2,000万円と試算したものであって、実際には受給する年金額によって、かなり個人差が生じると考えられます。

そして、老後のお金で忘れてはならないのが、生活費以外の費用です。この金額によって、必要な老後資金は大きく変わってきます。まずは、ねんきん定期便や日本年金機構のねんきんネットから、将来もらえる年金額を調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)(金融庁)

家計調査(家計収支編)調査結果(https://www.stat.go.jp/data/kakei/2.html)(総務省統計局)

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