1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

離婚したら年金、どうなる?「厚生年金の年金分割」

LIMO / 2021年6月21日 6時45分

写真

離婚したら年金、どうなる?「厚生年金の年金分割」

6月といえば、”ジューンブライド”が主役となる結婚シーズンです。しかし、何らかの縁で夫婦となっても、のちにそれぞれの事情で別々の道を選ぶことは、あります。

とりわけ一定の年数連れ添ったカップルの場合、離婚時の「お金」にまつわる問題を避けて通ることができないケースも多いはずです。

夫は会社員、妻は専業主婦だった夫婦(その逆もあり)が離婚した場合、老後にもらえる年金を考えてみます。一方は厚生年金(国民年金+厚生年金)、もう一方は国民年金だけというのは不公平といえるでしょう。

そうした不公平を解消するためにできた制度が年金分割制度です。しかし、この制度によって、夫がもらう厚生年金の半分を妻がもらえるようになるわけではありません。

いざという時に対策を取れるように、離婚時の年金分割について正しく知っておきましょう。

年金分割制度とは

まず最初に、婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有財産という考えがあります。

会社員と専業主婦(主夫)の夫婦の場合を考えてみましょう。

厚生年金は国民年金に上乗せされて給付される年金であり、所得に応じて支払った保険料に基づいて年金額が決まります。つまり、保険料は共有財産から支払っていたのに、離婚したら一方だけその分の年金がもらえるというのは不公平です。

そこでできたのが、離婚時の年金分割制度です。厚生年金の報酬比例部分(※)を分割し、少ない方の年金額に反映させます。(※報酬および加入期間に基づいて計算される部分。基礎年金を含まない厚生年金のこと)

ここで気を付けたいのが、一方の厚生年金の報酬比例部分の半分を受け取れると勘違いしてしまうことです。対象となるのは婚姻期間中に支払った保険料分の年金です。婚姻前の期間は除外されます。

一方が厚生年金に加入、もう一方が国民年金のみの夫婦の場合、分割の対象となる厚生年金の額は次の式で大まかに知ることができます。

(厚生年金の受給額※)×(婚姻期間)÷(勤続期間)=分割の対象となる年金額

※基礎年金を含まない厚生年金の報酬比例部分。加入期間中の月収が一定と想定。

例えば、厚生年金の受給額が80万円(平均給与30万円くらい) 、婚姻期間が25年、勤続期間が40年だった場合は、80万円×25年÷40年=50万円が分割の対象となります。

次に分割の方法を見ていきましょう。分割の方法には「合意分割」と「3号分割」があります。

【合意分割】

合意分割は、婚姻期間中に夫婦共に厚生年金の加入期間がある場合に、厚生年金の受給額が少ない方が多い方に分割を請求します。話し合い(決裂した場合は裁判)で割合を決めますが1/2が上限となります。

【3号分割】

3号分割は、2008年4月1日以降に国民年金第3号被保険者(専業主婦など)であった場合に、夫婦間の合意がなくとも、分割対象の年金額の1/2を受け取ることができる制度です。

2008年4月以前の第3号被保険者だった期間、または、厚生年金に加入していた期間については合意分割となります。

どちらも離婚成立から2年以内に請求する必要があるので、期限に気を付けましょう。

離婚した場合、しなかった場合の年金額

【離婚した場合】

先ほどの例(厚生年金の受給額:80万円(平均給与30万円くらい)、婚姻期間:25年、勤続期間:40年)で3号分割をした場合、厚生年金から25万円が受け取れます。基礎年金を満額の78万円受給できるとすると、合計で103万円の年金額となります。月額約8万6000円です。

【離婚しなかった場合】

厚生年金の受給額が80万円の場合、これに夫婦二人の基礎年金(満額78万円)を加えると、世帯の合計は236万円となります。月額約20万円です。

一人分と二人分なので単純な比較はできませんが、生活費を考えると、夫婦で20万円の年金で暮らす方がゆとりがあります。

さらに条件が合えば、厚生年金の扶養手当にあたる加給年金の支給があります。

【加給年金】

加給年金とは、厚生年金に加算される扶養手当のようなものです。支給には次に示す要件があります。要件を満たせば、厚生年金に上乗せされて支給されます。「加給年金の支給要件」の表をごらんください。

(/mwimgs/2/b/-/img_2b8f9a5edb549c51818bb53147f0348b58924.jpg)

拡大する(/mwimgs/2/b/-/img_2b8f9a5edb549c51818bb53147f0348b58924.jpg)

出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」を参考に筆者作成

※対象となる配偶者が加入20年以上などの条件に該当する厚生年金受給者、または障害年金受給者の場合は支給されません。

扶養されている配偶者が65歳になった時点で支給は停止されますが、要件を満たした65歳と60歳の夫婦であれば、5年間で約195万円の加入年金を受け取ることができます。

上記の夫婦が加給年金を受給できると月額約23万円の年金額になります。

離婚とお金の問題

年金額だけを見ると、離婚しない方が得のように思えますが、離婚は損得で是非が決まるような簡単な問題ではないでしょう。要は分割できることを知っておくことで、損をしないことが大事です。

分割は年金だけではありません。退職金も給与の後払いという性質があることから、離婚時の財産分与の対象となります。

退職金の分割

年金分割と同様に、以下の式で計算します。

(退職金額)×(婚姻期間)÷(勤続期間)=分割の対象となる退職金額

分割割合は話し合いで決める場合は自由に設定できますが、調停や裁判になった場合は原則として1/2で分割します。

また、退職金が財産分与の対象になるかどうかは、すでに支払われている場合、これから支払われる場合、不確定な場合など、それぞれの事情によって異なります。詳しく知りたい場合は弁護士などに相談してみるとよいでしょう。

婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有財産という考えを知っておけば、専業主婦(主夫)でいた期間の労働が無償の労働ではなかったことに気づくことができます。老後の生活を守るためにも、こうした知識をきちんと知っておくことが大事です。

参考資料

日本年金機構「離婚時の年金分割」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-04.html)

日本年金機構「加給年金額と振替加算」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html#PTOP)

厚生労働省「年金の支給要件と年金額」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/pdf/seido-h25-point_004.pdf)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください