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コロナ外出自粛の弊害、本当に怖いのは遅れてやってくる少子化の打撃

LIMO / 2021年6月27日 19時15分

コロナ外出自粛の弊害、本当に怖いのは遅れてやってくる少子化の打撃

コロナ外出自粛の弊害、本当に怖いのは遅れてやってくる少子化の打撃

新型コロナの流行を抑え込むためにステイホームが推奨されていますが、その弊害は大きいので、感染症対策と弊害抑制のバランスが大事だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

ステイホームのメリットとデメリットを比較すべき

新型コロナを抑え込むには人と人の接触を減らすことが大事だ、ということでステイホームが推奨されています。東京等の緊急事態宣言は延長されませんでしたが、それでも様々な自粛が要請されているわけです。

新型コロナを抑え込む努力が必要なことは当然ですが、その際には努力をすることのメリットとデメリットを冷静に比較する必要があります。ところが、その比較が容易ではないので、人により判断が大きく異なるわけです。

感染症の専門家は、感染症を抑え込む必要性を強調するでしょうが、経済の専門家はステイホームが景気を悪化させて失業や倒産や自殺を増やしかねないとして反対するかもしれません。

どれくらい自粛すると感染がどれくらい減るのか、倒産や自殺がどれくらい増えるのか、という予測が可能ならば、判断も容易なのでしょうが、どちらも予測が難しいので、限られた情報の中で最適と思われる選択肢を政治家に選んでもらうしかない、というわけですね。

もうひとつ、各自が自分の利益だけを考えて発言するならば、収拾がつかなくなります。たとえば高齢者が「経済が死んでも自分が死ななければ良い」などと発言し、それが一定の支持を集めるようなことがあったとしても、そこを政治がうまく調整する必要があるわけです。

感染ゼロを目指す必要はない

一部の人は、感染ゼロを目指すべきだと考えているようですが、筆者はそうは思いません。日本国内で感染ゼロを達成しても、海外から再度感染するリスクがあるとすれば、ゼロに大きな意味はないからです。

そこで想起すべきなのは、我々は新型コロナ以外のリスクとは、折り合いをつけているということです。

「自動車事故死をゼロにするために、時速20キロ以上で走れないように自動車を改造しろ」という話は聞かれませんし、「インフルエンザで亡くなる高齢者は少なくないのだから、冬の間はステイホームしよう」という話も聞かれないわけですから。

その意味では、新型コロナは新しい感染症なので人々が過度にリスクを気にしている、ということなのかもしれませんね。そのあたりは感染症の専門家ではないので、筆者には断言はできませんが。

ただ、ステイホームの弊害を過小評価すべきでない、ということは強調しておきたいと思います。

出会いが減ると少子化に

ステイホームの負の影響としては、消費が減って景気が悪化する、といった経済面での影響のほかに、孤独に悩む人が増えるとか高齢者の認知症が進むとかDVの被害が増えるとか、色々言われています。

数値化できない弊害ですが、これも自粛要請の可否を考える際には考慮していただきたい要因です。

あまり言われていないのですが、筆者が大きく懸念しているのは、少子化です。昨年の出生数が大きく減少したと報じられていますが、婚姻数の減少の影響も深刻でしょう。タイムラグを伴って出生数がさらに減ることが懸念されます。

ステイホームによって出会いが減っているので、これが将来の婚姻数、出生数を大幅に減らすのではないか、という懸念は、さらに深刻かもしれません。

昭和の時代には、「出会いがなければ見合いをすれば良い」ということも言えたのかもしれませんが、今では出会いがないと生涯未婚となる可能性が高いでしょうから。

少子化は経済面でも深刻な影響

少子化は国難です。何といっても、日本人が将来的にはゼロになってしまうかもしれないわけですから。しかし、それを言う前に、経済への深刻な影響についても大いに懸念する必要があるでしょう。

2020年代の出生数が大きく落ち込むと、2040年代に就職する人数が激減します。その頃に定年退職する人数は別に減らないでしょうから、現役世代の数が激減するわけです。一方で、高齢化は進むので、介護や医療といった労働集約的な需要が増えて、労働力不足が深刻化することが懸念されます。

まあ、労働力は余っているより足りない方が良いわけで、その意味では過度な懸念は不要なのかもしれませんが、それにしても急激な変化は望ましくないでしょう。

少子化がずっと続くのは困りますが、新型コロナが収束し、出会いも婚姻も出産も元に戻るとすると、人口ピラミッドに窪みができることになります。ある世代だけが人数が少ない、歪な形となるわけで、これも困ったことかもしれません。

団塊世代が小学校不足、中学校不足を招いたのと反対に、小学校や中学校が一時的に大量に余るかもしれません。

悪くすると、保育園が大量に倒産し、その後に子供の数が戻った時に待機児童が大量に発生する、といったことが起きるかもしれませんね。その十数年後には大学で同じことが起きるかもしれません。

新型コロナの感染を抑え込むためにステイホームすべきだ、という主張は理解できますが、一方で、こうしたステイホームの弊害についても十分に考慮した上で政策判断がなされることを期待しましょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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