人気FPからFIREをめざす女性たちへ「RE」より「FI」に重点を
LIMO / 2021年6月27日 6時45分
人気FPからFIREをめざす女性たちへ「RE」より「FI」に重点を
~女性が経済的基盤をつくる方法とは~
最近、ネットや書籍などで話題の「FIRE」。経済的自立を果たし、早期リタイアを夢見る人が世界中にいることのあらわれでしょう。しかし、特に女性がFIREを目指すには、やや高いハードルがあります。
今回は、FIREの考え方と、女性が経済的基盤をつくる方法を一緒に考えて行きたいと思います。
そもそもFIREっていったいなに?
FIREは、「Financial Independence, Retire Early」という言葉の頭文字から生まれた言葉です。FIが「経済的自立」、REが「早期リタイア」を表します。
FIREの「経済的自立」を実現するカギは「日々の節約&投資」にあります。
FIREでは、日々節約を行い、浮いたお金をできるだけ投資に回していき、投資で得られた収入で生活することを目指し、経済的自立を果たそうというわけです。
【FIREの具体的プロセス】
支出を減らす → 投資を増やす → 不労所得を得る
この手順でFIREを目指します。
この手順の前に、まずリタイア後の年間の生活費がいくら必要なのかを考えます。そして、その年間の生活費を年間の資産運用収入でまかなうために、いくらの資産(FIRE資産)を用意すればいいのかを考えます。
FIRE資産がわかったら、支出削減に取り組みます。FIREの早期リタイアは、億万長者が豪華な暮らしをするものとは違います。FIRE後の生活は比較的質素です。FIRE実践者の中には豊かな暮らしをしている人もいますが、多くは最低限の生活費を投資資産から得られる収入でまかなうというスタイルです。
最終的に、「不労所得>生活費」となればFIRE達成です。不労所得が生活費を上回っていれば、計算上、資産を減らさずに生活ができます。
必要なFIRE資産の目安は「年間支出の25倍」。これは、米国のトリニティ大学の論文をもとにした「4%ルール」の考え方によるものです。米国の株式市場は毎年インフレ控除後で実質4%の成長をしているので、「投資元本(100%)÷年間支出(4%)」、つまり年間支出の25倍の資産があれば、FIREが実現できるということです。
たとえば、年間支出が200万円だとすると、200万円の25倍、5000万円がFIRE資産として必要になるという計算です。
FIRE後の年間の支出を抑えるのであれば、FIRE資産はもっと少なくできます。
また、勤労収入+資産運用収入を組み合わせる「サイドFIRE」という考え方もあります。例えば、年間支出が250万円だとすると、資産運用の収入は100万円を目指し、残りの150万円は勤労収入で得るという場合であれば、100万円の25倍、2500万円をFIREを資産として用意すれば良いでしょう。
子供がいるとFIREは厳しい・・・
メディアには、FIREを目指している、あるいはFIREを実現したという方がたびたび登場します。しかし、その多くは独身だったり、DINKS(共働きで子供がいない世帯)だったりします。その理由は、やはり子供がいるとFIREが難しいからではないかと考えます。
ジェンダーフリーが大切にされる時代とはいえ、子供を産むのは女性です。妊娠、出産、産後にいたるまで、どうしても体力的・精神的に働けない期間が出てきます。その間、夫婦でサポートしあって、育児をがんばったりするとはいえ、収入が少なくなる期間があると、FIRE資産を貯めにくくなってしまいます。
また、FIREを目指す間も、教育費はかかります。文部科学省の「子供の学習費調査」など、教育費に関するデータをひもといてみると、幼稚園から大学までオール公立の場合には約1000万円、オール私立の場合には約2500万円。これが子供の人数分かかります。
普段の教育費は毎月の収入の中からまかないつつ、もっともお金のかかる大学の費用として300万円〜500万円をコツコツ準備していくとなると、FIRE資産への投資にお金を回す余裕がなくなってしまいます。そもそもFIRE資産どころか、老後資金すら準備に手が付かない可能性もあります。
いくらFIRE資産を貯めるためとはいえ、生活費を切り詰めるのも限界があります。それに、FIRE資産を貯めるために子供を進学させないというのは本末転倒です。つまり、不労所得を作るよりも教育資金を先に用意しなくてはならないため、FIRE資産を用意しにくくなってしまうのです。
FIREの「FI(経済的自立)」をめざす
もっとも、筆者は女性こそFIREのFIの部分、経済的自立を目指すべきだと考えます。なぜなら、女性は男性より長生きだからです。
厚生労働省「令和元年簡易生命表」によると、2019年の日本人の平均寿命は、男性81.41歳、女性は87.45歳。男女で6歳ほどの差があります。しかも、平均寿命は伸び続けています。ですから、単身者はもとより、結婚している場合でも、女性の方が最期を1人で過ごす可能性が高いのです。
また、離婚する場合にも経済的自立が欠かせません。厚生労働省「人口動態統計」(2019年)によると、2019年の婚姻数は約59.9万件、離婚数は約20.8万件となっています。離婚したいといっても、その後のお金や仕事にメドが立っていないと、離婚に踏み切ることすらできません。万が一に備える意味でも、経済的自立は大切なのです。
ですから、女性は結婚の有無に関わらず、将来おひとりさまになることも考えて、FIREの「FI」を作ることを目指しましょう。
まずはiDeCoやつみたてNISAといった、税金を安くできる仕組みを活用して投資信託の積み立てを始めましょう。
どちらも、運用で得られた利益を非課税にできるうえ、iDeCoでは自分のために掛金を支払うことで毎年の所得税や住民税を安くすることができます。20年・30年と長く続けることで、税金を安くしながら、複利効果で着実にお金を増やせます。
また、FIREで人気の高い投資資産として「高い配当金が得られる」として注目されている米国株や、銀行からお金を借りて効率よく投資できる不動産投資があります。子供がいない方に比べて投資できる額が少ないという場合でも、長く続けるほど、堅実にお金を増やせるでしょう。
FIREの「RE(早期リタイア)」を目指す必要はない
確かに経済的自由が手に入れば自由な時間を手にできます。
「自由な時間を手に入れて、海外旅行をしたい」「趣味を謳歌したい」など、自分が好きなことをするために時間ができることは嬉しいですね。
でも、立ち止まって考えて欲しいのですが、早期リタイアした後にしたいことって今はできないのでしょうか?
筆者としては、「今」を楽しむことは大事だと思っています。というのも、20代〜40代と若いうちにしかできないこともあるからです。それを捨ててまで早期リタイアすることに価値はあるのでしょうか。
また、早期リタイア後にしばらくして働きたくなっても、それまで築いてきたキャリアをいったん止めてしまっているので、簡単に働くことができない可能性があります。
そうした将来の選択肢(オプション)を増やすためにも、若いうちからコツコツ、お金と時間をかけて自己投資(スキルアップ、人脈形成、健康増進)することは大切です。投資する先は金融資産だけでなく、自分自身にも合わせて行うべきなのです。
経済的自立である「FI」を目指すことは良いですが、「RE」を行う必要はないということ。そして「FI」も短期間の達成を目指すのではなく、時間と複利効果を味方につけて目指していただければと思います。
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