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「みんなの貯金は、いくら?」70代世帯のお金事情

LIMO / 2021年6月28日 5時45分

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「みんなの貯金は、いくら?」70代世帯のお金事情

今春、改正高年齢者雇用安定法の施行によって、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になりました。法整備、そして働き方の多様化などもあいまって、還暦を過ぎても仕事を続ける人が増えていますね。

70代になると、年金暮らしに入って落ち着いている人、まだまだ元気に働いている人、さまざまな人がいると思いますが、やはり気になるのは「お金のこと」ではないでしょうか。

みんなどのくらい貯金をしているのか、70代の生活費はいくらかかるのか、年金はどのくらいもらえるのか、これらの疑問にお答えします。

70代の貯蓄額はいくら?

金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」から、70歳以上の貯蓄額の平均値と中央値を見てみましょう。【表1】をごらんください。

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※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」をもとに筆者作成

金融資産を保有している世帯に限った調査では、平均値は2208万円、中央値は1394万円となり、金融資産を保有していない世帯を含んだ調査では、平均値は1786万円、中央値は1000万円でした。

平均値は一部の富裕層の貯蓄額の多さによって引き上げられる傾向があるため、貯蓄額が低い世帯から順に並べた時にちょうど真ん中にくる世帯の貯蓄額を表した「中央値」がより実態に近いとされます。

しかし、今回の調査では金融資産を保有していない世帯の割合が18.6%と非常に多く、また貯蓄額が3000万円以上と答えた人も19.0%と高い数値になっており、両極端の結果となっています。

70歳以上の貯蓄額分布をグラフにまとめました。

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※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」をもとに筆者作成

このような二極化した状況では、平均値も中央値も実態を表しているとはいえないでしょう。格差が広がっていることが強く印象付けられる結果となりました。

老後の生活の実態は?

次に老後の家計収支を見てみましょう。

70代になると、収入は公的年金のみになる人が多いと思います。

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和元年度末)」によると、公的年金の月額平均は、厚生年金保険(第1号)が14万6000円、国民年金が5万6000円となっています。

この平均額の年金を受け取る夫婦二人世帯を想定すると、二人とも厚生年金保険であれば29万2000円、夫(妻)が厚生年金保険で妻(夫)が国民年金であれば、20万2000円、二人とも国民年金であれば、11万2000円となります。

生活費はいくらかかるでしょうか。

総務省の「家計調査/家計収支編 二人以上の世帯 世帯主の年齢階級別(2020年)」をもとに、70代の無職世帯の収入と支出をまとめました。【表2】をごらんください。

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※総務省「家計調査/家計収支編 二人以上の世帯 世帯主の年齢階級別(2020年)」をもとに筆者作成

収入が公的年金のみになると、70代前半では毎月3万円以上の赤字になっています。年齢が上がるに従って、生活費は減っていく傾向がありますが、それとは逆に、病気やケガなどのリスクは高まります。

介護が必要になってくると、介護費用に加えて、住まいの改修費、場合によっては介護施設の入居費など、高額な費用がかかってきます。

70代は、まだまだ元気に働いている人も多い年齢ですが、いずれ働けなくなった時に、貯蓄に頼る生活になることは想定しておかなければなりません。現在の貯蓄額で足りるのか、不足分を貯蓄から出す場合に何年分になるのか計算してみるとよいでしょう。

たとえば、年金だけでは毎月3万円不足すると想定した場合、30年間で1080万円必要となります。

年金額を増やす方法

70代は、元気であればまだ働くことができる年齢です。現役並みの収入でなくても、年金に頼らず生活できる程度の収入を得られれば、後にもらう年金額を増やすことができます。

年金の繰下げ受給

本来65歳から受給できる年金の受取を先延ばしにすることで年金額が増額される制度です。

現在、66歳以降70歳までの間で受給開始時期を繰下げることができます。1ヵ月の繰り下げで0.7%分増額され、最大で42%年金額が増額されます。増額された年金額は一生続きます。

この制度が2020年の年金制度改正によって最長75歳まで繰下げられるようになります。(2022年4月以降に70歳に到達する人から適用)。75歳まで繰下げた場合の増額率は84%になります。

たとえば、本来の年金額が15万円だった場合は、75歳まで繰下げると27万6000円となり、この年金額が一生続きます。

75歳まで年金に頼らずに生活できると見込めるならば、年金の繰下げ受給は年金額を増やすための有効な方法となるでしょう。

しかし、年金の繰下げ受給にはデメリットもあります。長生きすればするほど得な制度であることは、裏を返せば、早くに亡くなってしまうと、本来受け取れたはずの年金ももらえずに損をすることになります。

75歳に繰り下げた場合に65歳で受給開始した場合と比べて何歳まで生きれば得をするかを表す損益分岐点は86歳です。86歳まで生きないと損をすると思うと75歳までの繰下げは人によってはハードルが高いかもしれません。

もう一つ、繰下げ受給をすると、加給年金が受け取れないケースがある点に注意が必要です。

加給年金とは厚生年金に加算される扶養手当にあたるもので、原則65歳になった時点で65歳未満の配偶者を養っている場合、配偶者が65歳になるまで支払われます。

加給年金は厚生年金とセットで支給されるため、繰下げによって、配偶者が65歳になってしまえば支給がなくなってしまいます。加給年金が受給できる場合は、受給額と繰下げによる増額を比較して検討しましょう。

安心できる老後のために

70代の貯蓄額は持っている人と持っていない人で二極化していることが、世論調査からわかりました。

また、70代の家計収支の平均をみてみると、公的年金だけでは不足することもわかりました。不足分は貯蓄に頼ることになるので、早いうちから老後資金をコツコツと準備していくことが大切です。

一方で元気に働けるうちは年金以外の収入を持つことで、老後の生活が楽になります。その際、年金の受給を後ろ倒しにして年金額を増やす方法も検討してみるとよいでしょう。

老後を安心して過ごすために、お金の問題は重要です。どのくらい貯蓄があれば安心か、この機会にぜひシミュレーションしてみてください。

参考資料

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/tanshin/2020/)

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報結果の概要(令和元年度)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_r01.pdf)

総務省「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表(年次 2020年)」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005&stat_infid=000032048822&result_back=1&tclass4val=0)

年金の繰下げ受給|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html)

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html)

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