ウーバーイーツの配達員 労災の特例加入対象に 9月から自己負担で ITエンジニアも
LIMO / 2021年6月29日 6時0分
ウーバーイーツの配達員 労災の特例加入対象に 9月から自己負担で ITエンジニアも
厚生労働省は2021年6月18日、「ウーバーイーツ」の自転車配達員などを労災保険の特別加入制度の対象とすることを決定しました。自転車配達員のほか、ITエンジニアなどのフリーランスの働き手も新たに対象となります。9月1日から施行されます。
そこで今回は労災保険の特別加入制度について解説していきます。
労災保険は「万が一」の備え
労災保険とは、業務中や通勤で病気やケガなどをした場合、労働者やその遺族のために給付金を支援する制度です。労働者の社会復帰の支援や、遺族の生活を支援する労働福祉事業も実施されています。
つまり、労災保険が万が一のときの備えになっているのです。
では、労災保険に加入条件はあるのでしょうか。
会社員は加入義務がある
労災保険は、パート・アルバイトを含めた労働者を1日・1人でも雇っていれば、事業主は必ず加入手続きをする必要があります。
会社員の場合は、労災保険の加入が義務付けられていると言えるでしょう。
また、保険料は全額「事業主」が負担することになります。
個人事業主は「原則」加入できない
一方、個人事業主は、基本的に労災保険に加入できません。労災保険はあくまで雇われている人が勤務中の事故や失業などで労働が難しくなったときを想定しているからです。
したがって、万が一のときは自分で対応することが求められています。
ただ、実は個人事業主でも労災保険に加入できる「特例加入制度」が存在します。
特例加入制度でも保険料は自己負担
特別加入制度とは、一定の要件を満たせば個人事業主でも労災保険に加入を認める制度です。具体的には、下記の4通りです。
中小事業主等
特定作業従事者
海外派遣者
一人親方等
たとえば建設業などの自営業者は、いわゆる一人親方として、労働者を雇わずに自分自身で働くことも多く、業務の実態は労働者と変わりません。このため、労働者と同じく保護されるべきということから、特例加入が認められています。
ただ特例加入制度の場合、保険料は労働者が負担することになります。
労災保険のキホンを抑えたところで、あらためて今回決まった内容を見ていきます。
保険料の負担先は「個人」
先述した通り、ウーバーイーツの配達員について、この特例加入制度が適用されることが決まりました。
ただ、保険料は自己負担となり、また加入は任意なため、どれだけ普及するかはわかりません。
これに対し、労働組合「ウーバーイーツユニオン」は2021年5月24日、保険料は企業側が負担する制度にするように政府に要望していました。つまり、特例加入制度ではなく、本来の労災保険を適用するよう求めたのですが、実現されない格好に落ち着きました。
フリーランスの労災保険は今後どうなる?
ここまで、労災保険の特例加入制度について解説してきました。厚生労働省の審議会では、さまざまな意見が出ています。
自転車配達員について、保険料負担は請負契約の中で安全経費として上乗せして、配達員が実質的に負担しなくてもよい仕組みにする考え方もあるのではないか。
本来雇用契約を結べる者が、安易に個人事業主になることはあってはならない。行政にはしっかりと労働者性を確認してほしい。その上で、パンフレット等により企業にも労働者にも周知をしてほしい。
2021年6月18日に決定した骨太の方針では、「労災保険の特別加入の拡大を着実に推進する」と明記されています。今後の動向もチェックしていきましょう。
参考資料
厚生労働省「第98回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19337.html)
東京労働局「労災保険とは」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/rousai.html)
広島労働局労働保険徴収課「労働保険適用促進パンフレット」(https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/library/2017tekiyousokusin.pdf)
厚生労働省「特別加入制度とは何ですか。」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei15.html)
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針 2021」(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf)
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