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中小企業でも進行する“まだらテレワーク”。実はとってもキケン!?

LIMO / 2021年7月10日 18時55分

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中小企業でも進行する“まだらテレワーク”。実はとってもキケン!?

日本では、どうも定着しそうもない予感がしてきたテレワーク。正確に言うと積極的な企業と消極的な企業に二極化するのかもしれません。また最近、出社組とテレワーク組が混在する「まだらテレワーク」という現象も注目を集めています。

今回は中小企業のテレワークの現状と、「まだらテレワーク」の問題点を考えてみます。

東京の中小企業ではテレワーク実施率が低下傾向

今年(2021年)6月16日に、東京商工会議所が「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」結果を発表しています。調査対象は東京23区の中小企業2,090社(回答数:662社)で、5月17日~27日に調査が行われました。

主な調査結果は下記となります。

2021年5月の緊急事態宣言下における東京23区内の中小企業のテレワークの実施率は38.4%(前回緊急事態宣言時(2021年1月~3月)に比べ、27.8ポイント減少)

企業規模(従業員数)別では、従業員301人以上が最も高く64.5% となり、50人以下が最も少なく29.8%と、企業規模が小さい(従業員数が少ない)企業ほど実施率が低い

業種別では、前回緊急事態宣言時と比較し、すべての業種で実施率が低下。卸売業は32.1ポイント減少し、最大の下げ幅となった

やはり確実にテレワーク実施率は低下傾向のようです。以下、テレワークを実施できない理由です。

「テレワークが可能な業務がない」が64.7%で最多。これは、仕方ないですよね。他の理由としては「生産性の低下」が24.0%、「PCや通信環境の整備状況」が19.6%、「取引先とのコミュニケーション」が18.9%、「社内コミュニケーション」が15.4%でした。

まだらテレワークの問題点

テレワークを実施できない理由の「PCや通信環境の整備状況」は19.6%でしたが、これは前回緊急事態宣言時と比べ14.6ポイント減となっています。つまりハードの障壁は徐々に低下しており、それ以外のビジネス構造等に由来するものが増えだしています。

企業の声として、こんな例がありました。「2020年4月の緊急事態宣言発令後、すぐにテレワークを導入したが、最近は売上が回復し業務量が増大、出社した社員に業務が集中し残業が増えていた。2021年5月の緊急事態宣言が延長されたタイミングで、テレワークの実施をやめた。【製造業/51人以上100人以下】」

出社組とテレワーク組が混在する「まだらテレワーク」において、出社組に業務集中が生じた、ということです。たしかに、まだらテレワークの弊害ですよね。

業種によっては、テレワークに向かない業種はたしかに存在します。ただ、上記の例があてはまるかは分かりませんが、一般論として言えることは、前提として残業時間の一部社員への偏在が、テレワーク開始以前に存在しなかったのかは要チェックだと考えます。

ネットなどでよく書かれている、“テレワークは、できない社員を見える化"するという現象が影響している可能性もあります。この問題と、まだらテレワークという制度が引き起こす問題は、実はかなり渾然一体としていて、ムズカシイところだと思います。

まだらテレワークでストレス増加?

まだらテレワークは急増しています。ある民間企業の昨年の調査では、まだらテレワークの実施率は約44%でした。この調査では、全社員出勤が49.9%、全社員テレワークが6.4%、残りがまだらテレワークです。ハダ感覚としてうなずける数値だと思います。

総務省のホームページにも『「まだらテレワーク」時代の企業と組織』というレポートがあります。さまざまな内容が取り上げられていますが、興味深いのはテレワーカーの感じる「不安・孤独感」と、まだらテレワークの相関関係の存在です。

調査結果としては、“テレワーク率/2~3割"で「不安・孤独感」を感じる指数がピークに達しています。テレワーク率が増加するとともに指数は低下し、“テレワーク率/6~10割"で指数は最低値となります。

総務省のレポートでは、「相対剥奪」という概念から、テレワーカーの不安・孤独感を分析しています。この考え方は、問題は個人の『テレワークの状態ではなく、その人の「職場内でのポジション」』が心理に影響しているということです。

たとえば、テレワーカーの「自分は情報・一体感・雑談等を得られていない」という気持ち。それに対して出社者は得られているのではないかという心理。これが“テレワーク率/2~3割"の状況下で不安を最大化するとしています。

結局テレワークの成功はビジネス構造次第か

さらに総務省レポートを見ていきます。レポート後半では、日本型ビジネスの特徴分析になり「強い水平的コーディネーション」や「コーディネーション能力重視の評価」などの話がでてきます。

また、“雑談"不足解消のためのバーチャルオフィスの事例なども紹介しています。よくある流れですが、個人的には微妙な感じもします。

興味深いのは、レポート冒頭で日本のテレワークの歴史が紹介されており、「2008 新型インフルエンザ」「2011 東日本大震災」「2013 世界最先端IT国家創造宣言」時に、テレワークは“一瞬流行って、その後廃れる"を繰り返しているそうです。

もしかすると、日本のビネス構造・スタイルとテレワークは根本的に相性が悪いのかもしれません。ただ、今回のコロナ禍におけるテレワークは、ちょっと事情が違う気もするのです。

その理由としては、大企業を中心に加速する「ジョブ型雇用」の浸透があります。このカタチとテレワークは相性が良い。つまり“テレワークのやり方"をカイゼンするのも大切だとは思いますが、“ビジネスのカタチ"が根本的に変わらないと、その効果はでてこない気も、ちょっとしますね。

たとえば、“まだらテレワーク"におけるテレワークする/しないの基準が明確化されず、部署ごとの現場判断で曖昧運用され、それが社員のストレスにつながったり、業務効率低下になっているケースもあるのではないでしょうか。

結局、日本人の働き方が大きく変わらないと、テレワークは定着しない気がします。日本がテレワーク先進国になるのは、まだ相当、時間がかかるのではないでしょうか。

参考資料

中小企業のテレワーク実施状況に関する調査(https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1025071)(2021年6月16日、東京商工会議所)

「まだらテレワーク」時代の企業と組織(https://www.soumu.go.jp/main_content/000750182.pdf)(総務省)
 

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