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品質不正や粉飾決算が起きる日本的風土と防止が困難な理由

LIMO / 2021年7月11日 19時35分

品質不正や粉飾決算が起きる日本的風土と防止が困難な理由

品質不正や粉飾決算が起きる日本的風土と防止が困難な理由

品質不正がなぜ行われるのか、当事者の思考回路を想像してみると、思い止まらせるのは容易ではなさそうだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

防止策を考えるには当事者の思考回路を知るべき

泥棒を減らすには、なぜ泥棒が盗みをはたらいたのか、という思考回路を知る必要があります。「金がなくて腹が減ったから」と言われた時に、「悪人は言い訳をするな」と叱る選択肢もありますが、「それなら生活保護を充実させれば泥棒は減るはずだ」と考える方が生産的でしょう。

本稿は、品質不正(および粉飾決算等の不正、以下同様)を行った人の思考回路を考えることによって、防止策を考えてみよう、というものです。決して悪人の言い訳を擁護したり正当化したりするわけではなく、怒っているが故に真剣に防止策を考えているので、誤解のないようにお願いします。筆者は元銀行員なので、品質不正はともかくとして、粉飾決算は絶対に許したくないのです。

バレないことが悪事をはたらくインセンティブに

時として不正行為がバレて話題となりますが、実際にはバレていない不正行為が非常に多いのだろう、と筆者は考えています。そう考える根拠は、「バレた不正行為が何十年も前から行われていた」というニュースを耳にするからです。

つまり、不正行為は、何十年もバレない可能性があるわけで、現在行われている多くの不正行為が今後数十年の間にバレて話題になっていくのだろう、と考えるのが自然だからです。

不正行為がバレにくいということは、悪事を働く人にとって非常に重要なインセンティブとなるわけです。悪事がすぐにバレるとわかっていれば、不正をはたらく人はいませんから。

悪事がバレにくい一因は、日本企業が従業員の共同体だからでしょう。会社のために品質不正を行なっている人がいるとして、共同体の一員がそれを密告するのは勇気が要りますし、そもそも密告しようと思わない人がほとんどでしょう。

最近は非正規労働者が増えていて、彼らの多くは共同体意識が薄いでしょうから、密告の可能性は以前よりは高まっていると思いますが、正社員としては非正規労働者には機密情報は知られないように気をつけるでしょうから、変化は限定的でしょう。

刑罰が軽いことも抑止力を弱めている

バレにくい上に、バレても制裁が厳しくない、ということも悪事を抑止する力が働きにくい理由でしょう。

日本の刑罰は罪に比べて軽いのが普通です。殺人でも死刑や無期懲役になる事例は多くありませんから。これは、犯罪者が「前科者」として冷たい扱いを受ける等々の社会的な制裁を受けることを考えてのことなのでしょう。

しかし、品質不正を行なった当人は、社会的な制裁をあまり受けないかもしれません。「会社のためにやったことだから」というわけですね。バレにくい上に、仮にバレても刑罰も社会的制裁も軽いのであれば、思いとどまるインセンティブは弱いはずですね。

そればかりではありません。もしかすると、本人は会社を助けたヒーローの気分かもしれません。「品質不正が何十年もバレなかったということは、基準が高すぎるのであって、多少の品質不正をしても誰にも迷惑をかけていないのだ」などと考えているのかもしれません。

粉飾決算についても、「一時的な赤字を隠している間に収益が回復すれば何の問題も起きないはずだ。正直に赤字決算を発表して銀行団に融資を引き揚げられて倒産して、従業員を路頭に迷わせるより遥かに良い結果をもたらすだろう」などと考えているのかもしれません。

損害賠償の時効を止められれば・・・

バレにくく、バレても刑法の罪も社会的制裁も軽いのであれば、不正を思いとどまらせることは容易ではありません。考えられるのは、株主代表訴訟で巨額の賠償を請求することが抑止力となるかもしれない、ということですが、それも容易ではないかもしれません。最初に不正をした人が一番悪いのに、その人は時効で何も追求されない可能性があるからです。

後任者は、前任者の不正を公表するか自分も引き継ぐかの選択を迫られるわけですが、公表すれば批判の矢面に立つのは自分であって、しかも社内的には前任者を裏切ったといった評価を受けかねないわけです。そんな後任者に巨額の損害賠償を請求しても、抑止力としては今ひとつでしょう。

最初に不正を始めた人に対する損害賠償請求については時効制度を適用しない、といったことができれば良いのでしょうが、難しいでしょうね。

せいぜい、後任者が巨額の賠償請求を恐れて前任者を告発することを期待し、前任者が告発されることを恐れて悪事を思いとどまる、といったことを期待するしかなさそうです。

あとは、人々の正義感に期待するということでしょうか。共同体意識にはメリットも大きいので、これが崩れることは期待しませんが、共同体意識を上回るような正義感を当事者が持つようになれば良いですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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